技術用語解説28『代替肉 / 大豆ミート( Meat substitutes / soy meat )』

技術用語解説 28
『代替肉 / 大豆ミート( Meat substitutes / soy meat )』

 農林水産政策研究所の「2029年における世界の食料需要見通し」の発表では、アジア地域の2029年の牛肉の純輸入量は約480万トンとなり、2016~18年の約270万トンからおよそ1.8倍に拡大すると予測されている。その中で注目を集めているのが代替肉として注目されている大豆ミートである。

1. 代替肉 / 大豆ミートとは

 代替肉は一般に「大豆など植物由来の肉」と、「培養技術を用いた培養肉」に分けられ、培養肉は米国では細胞を培養して製造され商品として扱われているが、国内ではまだ研究開発中で、市場に出ているものはごく少数である。植物由来の肉の原材料としては、小麦、エンドウマメ、ソラマメなどもありますが量は少なく、大豆が多く占めている。代替肉は「大豆ミート」「大豆肉」「ソイミート」「ベジミート」などと呼ばれていて、最近では「フェイクミート」「プラントベースミート」「オルタナティブミート」などとも呼ばれ名称もさまざまであるが大豆ミートとして解説する。

2. 大豆ミートの海外市場と国内市場動向と現状

 動物性タンパク質は植物性タンパク質よりもアミノ酸が豊富で、体内への利用率が良いなどの絶対的な長所はあるものの、コルステロールや中性脂肪の観点から動物性脂肪の取り方を見直す「脱ミート」が世界的な潮流となっている。
 大豆ミート市場は、2019年に肉食文化の代表である米国のビヨンド・ミートとインポッシブル・フーズという大豆ミートのベンチャー企業の成功からブームが始まり、ブームの背景には食味の向上や健康志向、持続可能な食糧生産への配慮などがある。農林水産省調査の2019年報告によると、米国の金融機関(JPMorgan Chase)は世界の植物肉の市場規模は15年以内に1千億ドル(約11兆円)を超えると推計、英国の銀行のバークレイズ(Barclays)は10年以内に肉全体の約10%(15兆円)相当になると推計し、いずれも市場の拡大を予測している。さらに矢野経済研究所の代替肉(植物由来肉・培養肉)世界市場に関する調査を実施(2020年)で、世界市場規模は2,572億6,300万円と報告(1)がされている。

 国内に目を向けると不二製油や昭和産業などは業務用として古くから大豆ミートを製造していたが、不二製油は、大豆ミートの需要増加に対応して新工場を設立し、昭和産業は、家庭用に参入するなど市場動向が活発になっている。
 世界の動きの中で、2019年から2020年にかけて大手食肉企業の参入が相次ぎ、植物由来の大豆ミートを使用した新商品が次々と上市されメディアに多く取り上げられるようになった。
 大豆ミートはこれまでスーパーなどでは入手が困難であったため、一般家庭での普及も遅れているが、最近ではインターネットでの購入も可能になり、次第に認知度も上がり簡単に入手できるようになってきている。

大豆ミートを現在商品化しているメーカーと商品例をあげると以下のようなものがある。

  • オーサワジャパン(株) 商品名:オーサワの国産大豆ミート(バラ肉風)
  • (株)かるなぁ 商品名:大豆まるごとミート ミンチタイプ(国産)
  • 三育フーズ(株) 商品名:デミグラソース風野菜大豆ボール
  • (株)マイセン 商品名:大豆と玄米のベジフェレ
  • マルコメ(株) 商品名:ダイズラボ・シリーズ
  • (株)SEE THE SUN 商品名:ZEN MEAT ミンチタイプ
  • 大塚食品(株) 商品名:ゼロミート デミグラスタイプハンバーグ
  • ケンコーマヨネーズ(株) 商品名:やさいと大豆ミートのキーマカレー
  • (株)ヤヨイサンフーズ 商品名:イートベジ 大豆ミートの肉団子
  • 不二製油(株) 商品名:ニューフジニック
  • 伊藤ハム(株) 商品名:「まるでお肉!」シリーズ
  • 日本ハム(株) 商品名:ナチュミート お肉を使用しないハムタイプ
  • DAIZ(ダイズ)(株)  商品名:ミラクルミート
  • 良品計画((株)無印良品)  商品名:大豆ミート ひき肉タイプ

などが数多くの企業が商品化して流通している。

 大豆ミートは栄養価の面でも大変優れている食材である。ベジタリアン(vegetarian:採食主義者)やヴィーガン(vegan:完全採食主義者)は、動物の肉は食べない。ベジタリアンは、卵や牛乳を食べるのに対して、ヴィーガンは、それらを含めた動物性の食品を一切食べないのに加え、皮製品なども使用しない人々のことをいう。これらの人々は、大豆などの豆類からタンパク質を摂取する。豆腐ハンバーグや大豆タンパク質を使った食品はベジミート市場として拡大が期待されている。

 近い将来、現在研究開発中の培養肉もバイオテクノロジーの発展に伴い霜降りの培養肉がスーパーなどで手軽に手に入るようになるかも知れない。

【参考記事】
1. 株式会社矢野経済研究所プレスリリース「代替肉(植物由来肉・培養肉)世界市場に関する調査を実施(2020年)」https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2430
2. H.Pライブラリー【ブログ・コラム】2020.02.22「お肉もどき“ベジミート”思ったよりもおいしい!」https://www.kimoto-proeng.com/column/667