技術用語解説 29『油糧種子(Oil seed)』

技術用語解説29『油糧種子(Oil seed)』

1. 油糧種子とは

 植物油脂原料として油脂を多量に含んでいる種子を油糧種子と呼ぶ。しかし、厳密な定義はない。多くの場合、油脂等の採取を目的として栽培、収穫されたものであるが野生のものが収穫され利用される例もある。また、必らずしも油脂の採取を主目的として栽培されているものばかりではなく、例えば、綿実では綿花から綿繊維を得ることが主目的であり、種子から採取された油脂は副産物のような例もある。多量の油脂を含んでいるといっても油分に対する規格がある訳ではない。現在、約20数種が油糧種子として利用されている。
 世界における油糧種子としての生産量は大豆が圧倒的に多く、順に、ひまわり、菜種、綿実、落花生等が続いている。
 採油は原料種子から溶媒を用いて、あるいは圧搾により行われ食油用(天ぷら油、サラダ油、マーガリン、ショートニング、マヨネーズの原料、製菓製パン原料、油漬用油脂等)、工業用(石けん、樹脂塗料、ペイント、印刷インキ、潤滑油、油紙等)、医薬用、化粧用として利用される。採油後の脱脂粕にはタンパク質が多く含まれているものが多く、これらは食品原料として、あるいは飼料、肥料として利用されている。

2. 食油用油糧種子

 食油用途の油糧種子としては、大豆、ひまわり、菜種、綿実、落花生、やし、サフラワー、ごま、からし、カカオ、アボガド、ニガー、Butyro-spermumparkii種子(シャー脂原料)、Shoresstenoptera種子(ボルネオ脂の原料)等がある。全油糧種子中生産量の多い大豆はアメリカ、ブラジル、中国、アルゼンチンを主たる生産地にし、なかでもアメリカは世界の大豆総生産量の50%以上を生産している。
 種子には約16~22%の油脂が含まれ、その主要脂肪酸は、C18:2 (50.2%)、 C18:1 (34.6%), C16:0 (11.2%)、C18:3 (8 .6%)である。大豆油はリノレン酸(C18:3)が比較的多いことからリノレン酸型油脂とも呼ばれる。
補足説明:脂肪酸の名称は、炭素の数と二重結合の数により決められている。例えば、リノレン酸(C18:3)とは、炭素数が18で、二重結合が3か所であることを示している)
 精製大豆油は主に食用(天ぷら油、サラダ油、マーガリン等)として利用されているが、工業用としてもいろいろな分野で利用されている。大豆油の精製(脱ガム)工程で得られる副産物であるレシチンには多くの機能(血栓溶解作用、界面活性作用等)がありいろいろな分野で利用されている。
 大豆の生産量に次いで多いひまわりに対する日本人の認識は観賞用としての花、あるいは動物の餌程度のものでしかないが、東欧、特にロシアそして西欧ではフランスが、生産量が多くサラダ油、調理用油脂として広く使用されている。種子には28~47%の油脂が含まれ、その主要脂肪酸はC18:2 (71.1%)、C18:1 (16.9%)、C16:0 (6.7%)で、際立ってリノール酸(C18:2)が多い点を特徴としている。
しかし、ひまわり油の脂肪酸組成は種子登熟期の温度の影響をみごとなまでに受ける。登熟期温度1℃の低下はリノール酸を約3%増加させる。種子中に占める殻の割合は22~28%と高く、且つ、殻中の60%が難消化性の繊維であることからこの繊維を多く含むミールは反芻動物用飼料としては問題がないが単胃動物に対しては問題である。脱殻ミール中のタンパク質含量は高く、また有害物質も含まれていないことから食品原料としての期待が大きいが、フェノール物質、特にクロロゲン酸が多く、このものはアルカリ域で黄緑色を呈する原因となり、タンパク質と結合し消化性を低下させること等が指摘され今後の課題となっている。

3. 工業用、その他用途の油糧種子

 工業用、その他用途の油糧種子としてあまに、ひまし、カポック、桐、椿(食用可)、Orbygnia martiana種子(ババス油原料)、Simmondsia californiea(ホホバ油原料)等がある。
工業用油糧種子の代表、あまにはカナダ、インド、アルゼンチンで主として生産され、これら3ケ国の合計は世界のあまに総生産量の65~70%を占める。油分は33~40% 。
 あまに油の主要脂肪酸はC18:3 (40~50%)、C18:2 (15~25%)、C18:1 (25~26%)。リノレン酸型油脂に属す、二重結合3か所のリノレン酸の多いあまに油は酸化し易く、容易に皮膜を作ることからアルキド樹脂塗料、ペイント、印刷インキ等に利用されている。脱脂粕には36.6%のタンパク質が含まれ乳牛、肉牛、羊等の飼料として用いられている。

【参考引用先】
1. 一般社団法人 日本植物油協会 H.P 植物油の基礎知識
① 植物油の道:https://www.oil.or.jp/kiso/seisan/seisan01_03.html
② 植物油と栄養:https://www.oil.or.jp/kiso/eiyou/eiyou02_02.html

以上