『製糖の製造プロセス』

『製糖の製造プロセス』
Sugar manufacturing process

1. 甘味料(砂糖)概説

 天然甘味料の代表的物質である砂糖について製造技術を取り上げる。天然甘味料には糖質系(単糖類、二糖類、少糖類)および非糖質系(糖アルコール、アミノ酸、タンパク質、配糖体など)がある。砂糖(ショ糖、シュクロース)は、化学的にはグルコースとフルクトースからなる二糖類である。砂糖の原料は甘蔗(さとうきび)またはさとうだいこん(甜菜、シュガービート)であるが、世界的には約65%が甘蔗からつくられている。甘蔗糖は主として北米、中米、南米およびアジアで生産され、甜菜糖は北ヨーロッパで生産されている。国内では沖縄県などで甘蔗が栽培されている。また北海道では甜菜がつくられ、一部は現地で製糖されている。しかし国内の砂糖の原料はほとんどが海外から原糖(粗糖)を輸入し、これを精製することにより製品化されている。

2. 原料糖(粗糖)の製造

甘蔗からの原料糖の製造工程を図⒈に示す。刈り取られた原料甘蔗には約15%のショ糖が含まれている。これを切断・細砕し、ロールで圧搾して搾汁を集める。搾り滓はバカスと呼ばれ、家畜用飼料や発酵製品原料となる。次に石灰乳を添加してpHを7.0~7.5とし、100℃以上の過熱水蒸気で加熱する。この操作の目的は搾汁中の有機酸を中和し、タンパク質やペクチンを凝固させ、同時に色素、ガム質などの不純物を凝固物に吸着させて除去するためである。次に沈殿槽に移して静置し、透明な上澄液を集める。沈殿部分はフィルタプレスでろ過し、ろ液を上澄液に加える。
 次に連続式真空減圧濃縮機(多重効用缶)を用いて上澄液を濃縮する。ある程度まで濃縮した液(シロップ)を結晶缶と呼ばれるタンクに移し、さらに真空下で濃縮を続けるとショ糖の結晶が析出する。この操作を煎糖という。ショ糖の結晶とシロップが混ざっているものを白下(マスキット)という。これを遠心分離するとショ糖の結晶とシロップが分離できる。結晶を分離したシロップは糖蜜と呼ばれ、再び煎糖工程にかけられる。最初に得られた結晶を一番糖、この時のシロップを一番蜜と呼び、以下、二番白下、二番糖、二番蜜というように、煎糖を繰り返す。三番糖は最初の煎糖に戻して種結晶(種マグマ)とし、三番蜜は廃糖蜜になる。このように結晶化を繰り返してつくる製法を分蜜法という。分蜜法でつくられた原料糖は精製糖工場に送られ精製されるが、現地で精製糖をつくる場合はできた製品を耕地白糖という。
 甜菜を原料とする場合、10月頃に収穫した甜菜の根を洗浄後、厚さ2~3mm、幅4~7mmに切断する。これをコセットという。コセットを向流式進出機に入れ、温水(70~75℃)で連続的に進出し粗汁を得る。最後にコセットを圧搾して、圧搾液を浸出用の温水として使用する。以下の操作は甘蔗糖の場合とほぼ同様であるが、甜菜にはラフィノース(三糖類)が含まれるので、これをあらかじめ酵素(メリビアーゼ)処理して、ショ糖とガラクトースに分解する操作が加わる(メリビーゼ法という)。

『製糖の製造プロセス』
図1.原料糖と精製糖の製造工程

3. 精製糖の製造

 現地で製造された原料糖は黄色や赤色に着色している。これを精製して製品化(図⒈参照)する。最初に原料糖を水洗して遠心分離する。沈殿を溶解タンクに入れ、温水を加えて濃厚な溶液をつくる。これに石灰乳を加えてショ糖の石灰塩をつくる。次に過剰な石灰を中和するために炭酸ガスを吹き込む。この操作によって過剰な石灰は炭酸カルシウムとなり沈殿する。沈殿した炭酸カルシウムをろ過して透明な液部分を、活性炭を詰めた塔に通し、さらにイオン交換樹脂塔を通す。これらの操作で色素とミネラルが除かれる。これを真空減圧濃縮して、濃縮液を分蜜タンク内で結晶化させる。析出した結晶を集め、乾燥・冷却して製品とする。

4. 砂糖の分類(原料)

 原料の違いによって分類すれば、甘蔗糖(cane sugar)と甜菜糖(beet sugar)がある。どちらも十分精製して不純物を除去すれば、全く同じ砂糖になる。海外ではサトウヤシから取ったヤシ糖(pine sugar)や楓の樹液から取った楓糖(maple sugar)などがあるが、国内ではあまり利用されていない。

5. 砂糖の分類(製法)

 原料糖は輸入された後、再溶解して精製される。これを濃縮し結晶化したショ糖を分離する方法が一般的であるが、このように糖液(蜜)から結晶を分離する方法でつくられたものを分蜜糖という。一方、さとうきびやその他の原料から搾った糖液をそのまま煮詰めてつくる製法もあり、これを含蜜糖という。

6. 砂糖の分類(純度、結晶の大きさ)

 分蜜糖は結晶の大きさによって双目糖と車糖に大別される。双目糖は結晶が比較的大きく(0.2~3mm)、ざらざらした硬い感じの砂糖である。双目糖はハードシュガーとも呼ばれるが、この中で最も上質なものは白双と呼ばれる。純度はほとんど100%に近い。双目の内で最も結晶の小さいものがグラニュウ糖である。これに対して結晶が小さくてはっきり見えないものを、車糖またはファインシュガーという。車糖は結晶が微細でしっとりとした感じの砂糖である。通常、一般家庭でよく使用されている上白糖は、純度が97.8%程度の車糖である。車糖には転化糖(ショ糖がぶどう糖と果糖に分解したものの混合物)が約3%程度含まれている。さらに車糖の製造の最終工程で、転化糖を振りかけることによって、しっとりとしたやや強い甘味を持つ砂糖になる。
 国内の分蜜糖として、和菓子の製造に使用される和三盆糖と呼ばれる砂糖がある。製造には熟練技術が必須とされる。収穫したさとうきびを圧搾し、搾汁を煮詰めてあくを抜く。その後、砂や泥を沈殿分離させ(澄まし作業)、中釜、上げ釜と順次煮詰めていく。煮詰めた後は素焼きのかめに移して放置し、ゆっくり冷却する。この工程で砂糖が徐々に結晶化してくる。これを白下糖という。
白下糖を搾り袋に入れて丸一日圧力をかけて水分(蜜)を抜くが、ふくまれている糖蜜のために色は白くない。そのためさらに白下糖に水を少しずつ加えながら練っていく。この工程を「研ぎ」という。水分を含んで柔らかくなった砂糖は再び麻の包み袋に入れられ、押し槽に移されて圧力をかけて絞られる。この過程で水と糖蜜があくとして一緒に搾られ、砂糖はさらに白くなる。この工程を数回繰り返すことによって、より白い和三盆糖ができあがる。これらの砂糖をさらに加工したものが加工糖と呼ばれる。グラニュ糖に砂糖液をふりかけて押し固めた角砂糖や、純度の高い液糖をゆっくりと時間をかけて大きな結晶に仕上げた氷砂糖などがある。また、精製糖をすりつぶして微粉状にした粉糖は、製菓用に使用される。粉糖には固結を防止するため、コーンスターチや炭酸マグネシウムが加えられている。顆粒糖は微粉にした糖に湿気を与え、造粒機にかけて多孔質状に粒子同士を結着させ乾燥し、冷却したものである。

最後に、
 原料糖の製造工程については、近年、国内で製造を行っているのは、沖縄、鹿児島などの一部を残すのみとなっている。国内の製糖メーカーのほとんどが現在、大型船による海外(オーストラリアやタイ)からの原料糖輸入が主流となっている。

【参考文献・引用先】
1.「砂糖」精糖工業会 (2021.03発行)
2. 三井製糖(株)H.P:https://www.mitsui-sugar.co.jp/
3. 日本甜菜製糖(株)H.P:https://www.nitten.co.jp/
4. 日新製糖(株)H.P:https://www.nissin-sugar.co.jp/
5. 塩水港精糖(株)H.P:https://www.ensuiko.co.jp/
6. 伊藤忠製糖(株)H.P:https://www.itochu-sugar.com/