技術用語解説3 『セントラルキッチン/カミサリー・システムの衛生規範』

技術用語解説3
『セントラルキッチン/カミサリー・システムの衛生規範』

衛生規範

 厚生省では、食品の安全性確保の推進及び全体的な衛生水準の積極的な向上を図るため、先に「弁当及び惣菜の衛生規範」1979年(昭和54年6月)、「漬物の衛生規範」1981年(昭和56年9月)及び「洋生菓子の衛生規範」1983年(昭和58年3月)を定めた。近年外食産業の発展と共に、数多くのチェーン店、中には数百から千を超す店舗を有する大規模なレストランが出現するようになった。これら施設はセントラルキッチン/カミサリーと呼ばれる大規模な集中調理加工から喫食又は販売まで一貫した過程を有する業態であって、これらを総称してセントラルキッチン/カミサリー・システムという。

 もし、このような大規模施設で、食中毒事故が発生すれば多くの犠牲者がでる恐れがあるところから、厚生労働省では1986年(昭和61年1月)に「セントラルキッチン/カミサリー・システムの衛生規範」を策定し,都道県等の衛生主管部(局)長に通知した。

1. 衛生規範の内容の骨子

 表記衛生規範の内容は、 1.セントラルキッチン/カミサリー(施設)、2.調理・喫食施設、 3.販売施設、4.その他4つに分けられている。セントラルキッチン/カミサリーとは、複数の飲食施設、給食施設,販売施設への調理加工等を施した製品、麺類、飯物等の調理済品およびその半製品並に食材を供給する集中調理加工施設と定義されている。なお、その施設は、調理加工施設、付帯施設及び製品の運搬・保管施設から構成されている。

 調理・喫食施設とは、セントラルキッチン/カミサリーにおいて調理、加工又は処理された食品を、加温、加熱、調理等を施して客に喫食させる施設をいう。 販売施設とは、セントラルキッチン/カミサリーにおいて調理、加工又は処理された食品をそのまま又は処理して販売する施設をいう。衛生規範では上記3施設について、それぞれ, A.施設・設備、B.管理、C.食品等の取扱い、D.検査、E.管理システム5項目に分けてかなり具体的に施設、設備の構造やその衛生管理の方法について規定している。

 なお,セントラルキッチン/カミサリー・システムの施設内各場所の区分についても規定されていて、これを図⒈ に示した。

作業区域は、汚染作業区域(検収場、原材料の保管場、前処理場)、と非汚染区域に大別されていて、後者は作業内容により、準清潔作業区域と、清潔作業区域に分けている。

セントラルキッチン/カミサリー化することによる規模のメリットは、以下のようなものがあげられる。
・調理手順による作業の空き時間の減少による人員の効率的配置
・厨房機器類の使用頻度上昇による効率化
・大量調理用の厨房機器・自動化ラインによる効率化
・大量購入による購買力の向上
・完成品の品質安定化

また、レストランなど繁華街に出店する必要がある業種では、高いテナント料を払って厨房施設にスペースを割くよりも、厨房を外に置くことにより、デッドスペースを少なくすることができ、または厨房スペースに割かれる敷地面積を客席に割り振ることによって、増客=収入の増加が見込める。

この施設では、大量の食品を扱うため、その全貌はむしろ工場の様相を呈するが、食品加工工場であるため、食中毒が起きないよう衛生面での管理は厳重である。出荷状態で既に盛り付け寸前にまで調理が済んでいる食品や、既に盛付まで終わっている料理がある。

ファミリーレストランやハンバーガーチェーン等の外食産業におけるメリットは、上に挙げたような各店舗の省力化であり、また品質の安定化=サービスの一律化が図りやすい点や、一律化されたサービスにより価格設定の一元化が可能で、また調理に携わる者を減らすことで衛生管理が行いやすい面があげられる。

学校給食の場合は昼食のみの調製のために調理施設と人員を保有するよりも、外注化することでそれらの設備維持を配慮しなくても済む点が導入のメリットとして挙げられる。病院給食の場合でも、やはり外部に委託することによる施設投資・人員確保を考えなくて済むメリットがあり、ベッド数の少ない病院でも安定した品質で各症状に対応した病院食を提供できる一方、大病院でも食事の提供に時間を掛けずに済む上に、やはり品質的に安定した病院食を提供できるなどのメリットを生む。

大手チェーン店では、自社独自のセントラルキッチン/カミサリーを用意しているが、学校給食の場合は自治体単位で業者に委託するなど、公営の給食センターを設置する事もある。学校側では、大型の容器に入れられて配達された料理を受け取り、児童や生徒が主体となって配膳・消費する。病院食におけるセントラルキッチン/カミサリーでは、複数の病院が地元業者に委託する方式が取られ、病院内の配膳室で患者の状況に合わせて配膳する形態が多い。

日本の学校給食におけるセントラルキッチン/カミサリーは、1980年代より徐々に地方自治体の公立学校コスト低減の一環で受け入れられるようになってきた。
病院給食の場合では、厚生労働省が「院外調理ガイドライン」を制定しており、その中で衛生の面から以下のような要件があげられている。
・クックチルまたはクックフリーズ製法を採用すること
・HACCPを導入すること
 新調理システムとも呼ばれているクックチルは加熱調理後に急速冷却を行い、約摂氏3度での製造工程と流通を行い、クックフリーズは文字通り調理後の冷凍である。このガイドラインにより1996年に院外での調理が認められ、2005年度には外部委託率が50%を超えるまでに成長している。この急成長の理由には、病院側にて調理していた場合の人件費率が平均で45%程度を示していたのに対し、セントラルキッチン/カミサリーとして病院給食に参入した業者の人件費率は30%程度に押さえられている点があげられる。

 昨今では、学校給食や病院給食ごとというのではなく、それらを同一施設で集中調理できる総合型のセントラルキッチン/カミサリーが出現している。それらが実現するには、クックチル料理法が一般化してきたためである。

以上