『スナック菓子類の基礎知識』

『スナック菓子類の基礎知識』
Basic knowledge of snacks

1.はじめに

 スナック菓子は、甘くないあっさりとした風味を持った、子供のおやつから大人の手軽なおつまみとして食べられている。一般消費者向きの嗜好性を持った菓子である。国内ではスナック菓子を原材料別に分類すると表1.のように大別されている。

表1. スナック菓子類の原材料別分類

1.代表的なスナック菓子

 分類別の各スナック菓子について詳述する。

写真1. スナック菓子類の例

(1)ポテトチップス
 スナック菓子類の代表的な製品で、馬鈴薯を水洗、剥皮後約1.5mmに薄切りし、約180℃のフライ温度で約2分間油揚げし、軽く食塩で味付けした単純な行程で仕上げられる製品である。

図1. ポテトチップスの製造工程 例1.

製造上の重要なポイントは、次の4つである。
①収量
②着色程度
③含油量
④風味
などである。
これらのポイントは、使用原料の馬鈴薯の品質そのものに影響されることが極めて大きく、製造工場では、温度、時間のフライ条件、スライス厚、味付け、ふり塩量など限られたわずかの範囲で調整されている。

(2) 成形ポテトチップス
 主原料が、乾燥マッシュポテトであるから、生の馬鈴薯のような制約された原料事情がなく、年間を通じ均質な製品を製造することが可能である。また、原料配合により風味に変化を付けたり、吸湿・光源の影響を遮断する密閉容器に包装し、商品寿命を長くして広範囲の地域に販売することも可能であることなどから、大規模に製造されるのが特徴である。成形ポテトチップス菓子は、製造方法から次の4つに大別される。

①乾燥生地からの製法
 ポテトフラワー、乾燥マッシュポテト、でんぷん類、調味料などで糊化したでんぷん生地をつくり、冷却、固化して所定の形状に切断し、所定の水分まで乾燥した半製品とする。これはある程度保存ができるが、最終的には油揚げまたは焙焼する。この方法による製品は膨脹型スナックで、ポテトチップスとは異なった組織のものである。

②スクリュー押出し法
 乾燥ポテトと水の混合物を糊化し、単式スクリュープレスで練り出した生地を、ペレット状に切断し、ローラで平板状に圧搾成形し、部分的乾燥して油揚げする。直接、押出、押出しパフするとコーンカールのような内部構造を持った組織になる。方形の断面を持った長方形のフレンチフライ型のものが一般に市販されている。

③押出しスライス製法
 糊化した生地をエクストルーダで押出して、スライサで切断・成形し直接フライングするポテトスナック製品である。

④成形ポテトチップス法
 軟らかい成形ポテト生地をローラで薄いシート状に圧延し、所定の形状に切断してフライする方法である。一般に穀粉や粘弾性に富む添加物を使用し、圧延しやすい物性に調製している。

(3)コーンチップス
 ポテトチップスに比べコーンチップスの組織は硬いのが特徴である。主原料はデント種の全粉コーンで黄色種と白色種の単用、または混用で混合比は製品の好みの色によって変えられる。製法の特徴は、アルカリ液処理と煮熟により全粉のコーンの角質タンパク部など硬い部分を軟化し、石臼で水挽きして、適当な粘弾性の生地をつくることである。アルカリ液は石灰水を使用する。このアルカリ液処理の効用は、次の3つになる。
①コーンの硬質部位を軟化する
②コーン外皮部の剥皮と糊化を容易にする
③コーンの風味を補強する
などがあげられる。
 押出し機に入れピストンで押出し小片とし、ローラで薄いシート状にして所定の形状に切断し成形する。直接フライヤに投入し、190℃で水分2~3%まで脱水されるようにフライする。塩掛け・冷却後包装される。トルチーラチップスの場合はガスオーブンで315℃、30~32秒で焼き上げる。

(4) 膨脹型コーン製品
 主原料は、脱穀・脱胚芽したコーングリッツ、コーンミール、コーンフラワーである。副原料として小麦粉、米粉、大豆粉、乾燥ポテト、各種でんぷん、その他が使用される。製造方法は、押出し機によるものが多く、押出し製品とも言われている。低圧押出し機でクッキングと成形を行い半製品にして製造する方法と、高圧押出し機でクッキングし直接パフさせる方法に大別される。コーンカールは高圧押出し機の方法で製造され、各種の製品が市販されている。

①低圧押出し法
 低圧クッキング成形法とも、また、半製品による製法とも言える。乾燥原料を水と混合し押出し機に供給する。押出し機にはスチームジャケットがついており、外部から加熱される。原料は内部加熱と外部加熱ででんぷん糊化温度以上になり糊状生地となる。出口側のダイは普通冷却されており常圧で押出されるので、出たときの膨脹はほとんどしていない。生地中の水分は蒸発しないので水蒸気の気泡となって遊離し、泡のような状態になって分散している。
 水分15%程度まで乾燥した半製品とし、大部分のでんぷんは糊化しているが、糊化程度は、押出し温度・時間によって調節され、最終製品の膨張性・組織と密接な関係を持っていると言われている。半製品のコーン生地は、適時フライまたは焙焼・味付け・冷却・包装により製品となる。

②高圧押出し法
 加圧クッキング押出し法、あるいは高温・短時間押出しクッカー法とも言える直接パフする製法である。加圧チャンバから糊化生地が大気圧下に出た瞬間に十数倍に膨脹(パフ)する。パフした小片はまだ余分な水分を含んでいるので、乾燥機に入れて水分2%程度まで脱水する。
 ジャケット加熱と内部摩擦熱で生地温度は100℃以上の高温で処理され、生地水分は圧力下にあって蒸発しないで自由水となって生地の状態は非常に粘弾性の高いドロドロのものになっている。この状態の生地が出口のオリフィスを通過するとき、高圧から急に解除され瞬間的に内蔵されていた多量の自由水が蒸発し、生地膨脹の圧力となっている。
 工程を各セクションに分けると、次のようになる。
①加湿と混合
②押出し第1段(湿潤混合物のドウ生成、生地温度は82~104℃)
③押出し第2段(ドウ温度は115~177℃に上昇、10~20秒、高温短時間処理)
④オリフィスダイ、カッタによるパフと成形(成形はダイオリィフィスの型、大きさ、カッタのスピードによって変えられる)。
 製品の外観、組織は、押出し温度・圧縮比・圧力、水分含量、生地の成分組織などによって変わる。パフしたピースは乾燥機で水分2%程度に脱水し、回転ドラム型の味付け機(ミキサ)でチーズやカレーなどを植物性油と混合してスプレして味付けする。製品は防湿性プラスチックフィルムに自動包装される。

以上

【参考文献・引用先】

  1. 食品知識ミニブックスシリーズ「改訂2版 菓子入門」早川幸男 著 日本食糧新聞社