『脱プラスチック新法施行から考える取り組みについて』

『脱プラスチック新法施行から考える取り組みについて』
About efforts to think from the enforcement of the new plastic removal law

 食品、飲料あるいは医薬品、化粧品、日用品、工業製品などの多くに用いられている包装形態は、プラスチック包材である。食品製造業の工場では充填・包装機械を製造ラインに組み込んでいることから首記、環境関連について、近年の「脱プラ」の動きが加速しているように感じたので、今回技術レポートとして取上げるにする。

現在、特に包装業界が抱えている諸問題は次のようなものになる。
「生産性の向上」「地球環境の問題」「食糧問題」「安全安心の実現」「市場の拡大」などである。これらは包装機械や包装資材にも影響するものとなってきている。

食品製造業界全体の主な柱となる取り組みは、次の4つがあげられる。
① AI(人工知能)を駆使した自動化機械
② ロボットを組み込んだ省人化・無人化技術
③ 環境負荷低減に向けたモノマテリアル包材・紙製化包材に対応した包装機械
④ 省資源に対応した包装材料・包装形態
など生産性向上や地球環境の課題解決につながる製品・技術が求められている。

【補足】

 モノマテリアルとは、単一素材(モノマテリアル)から作ることで、リサイクルしやすくなった環境に配慮したパッケージ。

充填・包装機械、包装資材産業界においても「近年、プラスチック悪者として取り上げられることが多い。「脱プラ」の動きも活発になっている。しかし現在でも身の回りを見渡せば、まだまだプラスチックが多く用いられていることに気づく。惣菜のラップやトレー、飲料のPETボトル、シャンプやリンスなどの容器、コロナワクチンを打つ注射器(シリンジ)、水族館の巨大水槽、不織布のマスク等々、プラスチックなしでは生活が成り立たないのも事実である。包装だけを見て、プラスチックを悪者扱いするのは違うのではないかと考えるが、こと食品や飲料などに用いられている包装容器、包装資材に関しては脱プラの動きが今後さらに加速していくのではないかと感じる。

2022年4月からプラスチック資源循環促進法(プラスチック新法)が施行されることになっている。包装機械の新機種開発の方向性としても、モノマテリアル包装や紙包装仕様の包装機械や設備が多くなると考えられる。
「プラスチックのメリットの部分を残しながら、環境にやさしい包装資材を開発し、それにマッチした商品や包装機械をつくり上げなければならない。さらにデメリットの部分については、回収・リサイクルなどの技術開発を促進していくことが重要になってくる。

「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック新法)」の政省令で4月から施行されるプラスチック新法では、スプーンやフォーク、ストロー、ハンガーなど、無料で提供されるプラ製品12品目が削減義務の対象になっている。こうした品目を年間5トン以上提供している小売店や宿泊施設、飲食店などには削減に向けた取り組みが義務化される。主なところを見てみると代替素材への転換や受け取らない客へのポイント還元、プラ製品の提供の有料化などが求められることなどが骨子となっている。
世界規模での環境問題として取り組む内容としては、いささか心もとないと感じる。

世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)ら「減プラスチック社会を実現するNGOネットワーク」のメンバーと賛同NGO27団体はこのほど、1月14日に閣議決定された「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック新法)」の政省令等について共同提言を発表している。その「提言の骨子」を以下に示すことにする。

【提言の骨子】

① 追加的なプラ汚染を根絶する目標の2030年への前倒し
② マイルストーン(目標)の明確化と、バイオマスプラ導入以外の目標の引き上げや期限の前倒し
③ 循環基本法における優先順位に沿ったリユースの推進と各優先順位の定義の明確化
④ 事業者への努力要請に一定の強制力をもたせ、特定プラ使用製品のみならず、容器包装リサイクル法が適用される容器包装についても品目を特定し、有料化を義務づけること
⑤ バイオプラを含めた代替素材の使用につき、やみくもに推進することなく、必要不可欠な製品や部品についてのみ持続可能性が担保できるものを使用するように義務付けること
⑥ 主務大臣による設計認定制度について、国や地方公共団体、事業者に対し、認定プラ使用製品の使用に努めるよう単に要請するのではなく、一定程度の認定製品の使用を義務付けたうえで、認定されていないプラ使用製品の使用を制限していくこと
⑦ 主に家庭から排出されるプラ使用製品について、分別収集、再商品化その他のプラにかかわる資源循環の促進等に必要な措置を講じるために、製造事業者や使用事業者に、必要なコストの負担を求めること
⑧ 特に自然環境への流出の可能性が高い、漁具・農業用資材に使用されるプラについても、明確な対象とすること。そして、製造事業者や使用事業者への環境配慮設計や流出防止措置の導入、適切な漁具管理や流出時の報告・回収を義務付け、必要な基盤整備等を行うこと
⑨ 特に製造・流通・使用過程で生ずる1次マイクロプラの環境への流出の防止のために、意図的に使用されるマイクロプラの製造・利用を早期に禁止し、予防原則の観点から、1次マイクロプラ発生抑制対策を早期に導入すること
⑩ プラ使用製品に含まれる有害化学物質に関する影響について調査研究を進めるだけでなく、プラに含まれる化学物質の成分表示を義務付けること
⑪ 別途、明確な発生抑制目標を有し、プラ汚染問題全体を包括した基本理念となるような「基本法」を早急に制定すること
⑫ 地球規模のプラ汚染を包括的に解決するために、各国がすべきことを明確に規定し、世界各国からの幅広いい参加を促進できる、法的拘束力のある国際協定の早期発足に向けて、日本政府として最大限貢献すること
と提言している。

4月から施行の「プラスチック新法」だけではプラ汚染の解決につながらないし、有料化や提供禁止の対象を、食品トレー等が含まれていない点も提言の骨子にあるように問題がある。これらに限らず大量生産・大量消費を前提とした社会の枠組みを変えていくことが食品製造業や他の製造業においても大切である。特に包装機械や包装資材を扱う企業については脱プラに向けての技術変革が迫られることになる。
さらに、海洋プラスチック問題の発端となったマイクロプラや漁具、農業用資材などを含め、プラ汚染問題全体を包括した基本理念となる「基本法」を新たに制定することも必要と感じる。今後は、それに基づいた法規制を整備し、環境流出と気候変動問題の双方を確実に改善していくことが求められるであろう。

【参考資料】

1. パッケージ&マシン通信(2022.01 Vol.65 1月31日号)一部転載引用
2. 環境省HP 「プラスチック資源循環法関連」環境再生・資源循環:
https://www.env.go.jp/recycle/plastic/circulation.html
報道発表資料:
https://www.env.go.jp/press/109195.html
「プラスチック使用製品設計指針」
https://www.env.go.jp/recycle/plastic/pdf/kokuji_002.pdf