【食品製造現場における洗浄効果の確認】

【食品製造現場における洗浄効果の確認】
Confirmation of cleaning effect at food manufacturing site

 洗浄作業の確認は、適切な方法で確認しなければならない。食品衛生の5S(整理・整頓・整頓・清潔・躾)+2S(洗浄・殺菌)の7つを「食品衛生7S」としての取り組みが食品工場では必須である。それによって、食品衛生7Sの清潔を目標とする洗浄作業の効果が判定できる。効果の確認はどのような汚染があったか、どのような方法で洗浄したかなどを考慮して行わなければならない。

1. 洗浄効果の確認方法

 安全な食品を製造し、消費者に提供するためには、原材料や製造工程中の管理だけではなく施設設備、機械器具などの周辺の衛生管理が不可欠であることは、過去の食品事故から見ても明らかである。食品の製造現場では、カッタ、ミキサなどの加工機械から包丁、まな板などの器具類、作業台や台車などの備品まで多くのツールを使用しており、これらを適切に洗浄することは、食品微生物汚染を防止するために、原材料や製造工程の管理と同等以上に重要である。また作業者の手指においても微生物汚染への影響が大きく、洗浄することは非常に重要である。

 表⒈に病原菌別の食中毒発生要因を示す。表に示すとおり、手指においては最大51.3%、調理施設・器具においては最大18.4%と、どちらも食中毒菌の汚染原因として大きな割合をしめており、洗浄が食中毒の防止にいかに影響するか改めて理解できる。これらの食中毒による消費者へのハザードを防止するためには、見た目だけの洗浄ではなく、微生物を除去するための方法として、それぞれの対象物(機械・器具類や作業者の手指)に対して、科学的な管理手法を確立した上で洗浄を実施しなければならない。

表1 食中毒の発生要因(汚染要因)
食中毒菌名 1位 2位 3位 4位 5位
サルモネラ菌(Salmonella) 原材料(27.5%) 手指(19.7%) 調理施設・器具(16.2%) 二次汚染(10.1%) 鼠族・昆虫(1.6%)
腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus) 原材料(30.6%) 二次汚染(20.0%) 調理施設・器具(18.4%) 手指(4.5%) 使用水(0.1%)
病原大腸菌(Pathogenic Escherichia coli) 使用水(18.5%) 調理施設・器具(15.3%) 手指(12.9%) 原材料(12.9%) 二次汚染(7.3%)
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus) 手指(51.3%) 調理施設・器具(6.5%) 二次汚染(3.6%) 原材料(3.3%) 使用水(0.1%)
カンピロバクタ(Campylobacter jejuni/coli) 原材料(34.5%) 調理施設・器具(17.6%) 使用水(9.6%) 二次汚染(7.9%) 手指(3.2%)

【出典】動物性食品のHACCP研究班編:『HACCP一般管理計画の作成と実践 データ編』中央法規出版1997より引用

表2 主な表面付着微生物の検査法
検査方法 主な使用器具 特徴
拭き取り法 綿棒
寒天培地
恒温器
① 培地を選定することにより微生物の種類を区別できる
② 簡便な培地が市販されている
③ 培養するため判定に48時間要する
④ 培地の準備が面倒
⑤ 拭取り操作が面倒
スタンプ法 スタンプ用培地恒温器 ① 培地を選定することにより微生物の種類を区別できる
② 被測定物に接触させるだけなので操作は簡単
③ 専用の培地が市販されている
④ 培養するため判定に48時間要する
⑤ 凹凸のある器具の測定には不向き
ATP測定法 ATP測定器専用試薬 ① 結果の判定は10秒程度(測定機により差がある)
② 数値は微生物の数ではない(食品残渣も同様に測定してしまう)
③ 測定経費が高価
表3 主な表面付着微生物の検査法実施例
実施例と器具
拭取り法
スタンプ法
A
T
P
測定法
〔出典〕ニッタ株式会社H.P

2.各種検査方法

主な検査方法について解説する。

① 拭取り法

 拭取り法は、スワブ法とも呼ばれ、物体の表面に付着した微生物を綿棒やガーゼなどで拭取って補足する方法である。拭取り後は滅菌希釈水で溶出し、寒天培地で培養することで微生物の数を算出する。この方法の場合、利点として次の2つがあげられる。
・凹凸のある物体でも検査できる
・使用する培地により各種の細菌や真菌も区別して検出できる
などである。逆に欠点としては、3つがあげられる。
・拭取った時の条件を一定にすることが困難で、結果にバラツキが発生しやすい
・拭取った後は希釈し、培地に塗抹したり混釈したりする必要がある
・微生物の培養に2日程度要し、結果の判定に時間がかかる
などの問題もあり、他の方法と比較して手間と時間が必要である。なお、上述の問題点を緩和するツールとして、滅菌した綿棒と希釈水が一体になった製品、またはフィルム上の培地などが市販されている。

② スタンプ法

 スタンプ法は、物体の表面に付着した微生物を、培地に直接接触させることにより補足して測定する方法で、この方法の利点は、次の2つである。
・一般に市販されているスタンプ法専用の培地を使用するため、拭取り法に比べて操作が簡単
・拭取り法と同様に細菌、真菌の種類も区別して検出することが可能である
などである。逆に欠点は、次の2つである。
・凹凸のある物体や狭い場所、傷等に侵入した微生物の検出は難しい
・接触させた表面には培地の成分が残るため、洗浄・殺菌などの処理が必要
などの点に注意を要する。結果判定に要する時間も拭取り法と同様に微生物を培養するため2日程度必要となる。

③ ATP測定法

 ATP法は生物の細胞中に含まれるATP(アデノシン3リン酸)を測定する方法である。最大の特徴であり、利点としては、結果の判定に要する時間が前述の2つの方法に比べて極めて短時間で確認できることにある。近年技術が進歩し当初は操作も煩雑で高価であった測定機や試薬が安価で入手できるようになった。そのため、製造現場での利用方法も簡易的に手軽にできるようになったことから利用が増している。ただし、ATPは検出したい微生物だけでなく食品残渣にも存在していることから、被測定物の微生物数ではなく汚れを測定していることになり、このことを十分理解した上で利用することが必要である。

以上