食品包装・容器

【食品包装】
food packaging

食品を安全に流通させて消費者に届けるためには食品包装・容器が欠かせない。食品を長期間保存し流通させるためには、高度な「食品包装の機能性」「包装技法」が要求される。この両方がそろって初めて、安全で安心できる加工食品の提供が可能となる。食品包装は食品と同等の衛生管理が必要となる。
食品包装の機能として求められるは、包装材料に起因する保護性(バリア性)、衛生性、包装作業性、利便性、商品性、経済性、社会環境性となる。もう一方の技法について防湿、ガス充填、鮮度保持封入、真空、クリーン(無菌化)、殺菌、無菌、固定、緩衝などがある。それぞれの役割によりおいしく長期に渡って保存が可能となる。

【包装・容器の衛生管理】
sanitation control of container and packaging

包装容器材料は、食品と直接接触する。そのため衛生的には食品の一部と認知され、食品衛生法に自主規格基準があり、遵守が必須の条件である。原則として殺菌された容器を使用することになるが、高温で加工されたフィルム、容器などは殺菌されたのと同等として扱われ、そのままでの使用が認められている。このようにクリーンで無菌性をもった包装容器を製造するためには、軟包装衛生協議会が定めた規格基準があり、適合した工場は認定工場として認定される。この自主規格基準の管理項目には、ソフトの衛生管理事項、ハードの設備事項など厳しい基準が設けられている。
詳細の規格基準については、軟包装衛生協議会H.P:http://www.naneikyo.com/22.htmlを参考にするとよい。

【無菌包装】
aseptic packaging

殺菌した食品を殺菌された包装材料で無菌の雰囲気下で包装することによって、包装内の微生物の生菌数を限りなくゼロに近づけ、常温下での長期間の保存と流通を可能とした食品包装のことである。
通常の無菌包装は、包装材料を包装機械内で過酸化水素水や過酢酸などで殺菌し、無菌状態で充填、封緘する食品包装である。包装容器自身を無菌状態で包装機に装填し、無菌状態で開口、充填、封緘する食品包装があり、前殺菌法である。
後殺菌法の代表例としてレトルト食品包装がある。レトルト食品は、未殺菌状態で包装容器に充填され、高温の120℃で30分程度、包装品を加圧加熱する

【無菌化包装】
semi-aseptic packaging

微生物生菌数が少なくなるように制御して製造した食品を、クリーンルーム内などの微生物の少ない雰囲気において、適正規格のクリーン度(米国NASA規格)を持った食品包装材料で包装し、包装内の微生物生菌数を可能な限り少なくする包装である。「完全無菌」とはいえないが、通常の包装に比べ低温下での保存可能期間を延長できる。
例えば、惣菜、カット野菜、チーズ、ハム、生パン粉、米飯等の包装に用いる。
食品包装に用いるクリーンルームは清浄室であり、初発菌数を少なくするために高性能なフィルターを用いて喚起回数を高めることでクリーン度を高めている。通常、食品包装作業を行う清浄室はクラス100,000レベルである。

【真空包装】
vacuum packaging

真空包装とは、0.60~1.33kPaまで包装袋内を減圧してから、ヒートシールをして密封包装でするもので、残量酸素が極めて少なくすることによって保存状態を保つ効果がある。
食品は酸素によって酸敗、劣化しやすい。特に油性、ナッツ類などが顕著で、これらの食品類を保存するには、真空にして無酸素状態に保持することが求められる。
真空包装に使用する包装袋類には、ピンホールが発生しない柔らかく厚めでガスバリア性の高いフィルムが用いられる。

【ガス置換包装】
gas-exchange packaging

酸素による食品の酸敗を防ぐため、包装袋内の酸素を抜いて炭酸ガス、窒素ガスなどの不活性ガスで置換する包装方法である。
ガス置換包装方式には、次の二つがある。

1.真空減圧後に不活性ガスを置換する技法
2.不活性ガスを連続的に吹き付けて入れ替える「ガスフラッシュ技法」

がある。
前者⒈は残量酸素が少なく効果があるが、真空にしてから置換するので時間を要する。
高速に行うには、真空バケットを持ったロータリー式となるため、コスト高な機械が必要になる。
後者⒉は給袋式包装機で連続的に不活性ガスを吹き込むため、機械のスピードにより置換率が決まるが、一般的に置換率はよくない。不活性ガスは、窒素が一般的で、一部炭酸ガスが制菌の目的で使用される。
ただし、前提条件として包装材料はガスバリア性に優れたものを使用しなければならない点に留意する。

真空包装とガス置換包装の比較
比較項目 真空包装 ガス置換包装
真空後ガス置換 ガスフラッシュ包装
原理 減圧空気排除 不活性ガス置換 不活性ガス置換
流通対象 冷凍、冷蔵、常温など範囲は広い 冷蔵、常温 常温
残量酸素 0.1%以下で極めて少ない 0.10% 0.2~5%
酸素量経時 大気差があるため徐々に酸素が増加することがある要注意 やや増加 やや増加
微生物抑制効果 好気性菌の抑制有、ただし、嫌気性菌が繁殖するため要注意 好気性菌の抑制有 好気性菌の抑制有
CO2ガス制菌効果 CO2ガス制菌効果
設備 包装機+減圧ポンプ 真空包装機+ガスボンベ 給袋包装機+ガスボンベ
ランニングコスト 小さい やや大きい やや大きい
包装外観 密着包装で開封しにくいので、業務用が多い 変化なく開封が容易 変化なく開封が容易
包装不適品 柔軟な多水分系食品 柔軟な多水分系食品 液体食品

【バリア包装】
barrier packaging

バリア性とは遮断性のことで、水蒸気やガスの透過を遮断することである。
一般的にはガスバリア性のことで、包装材料に要求される機能である。ガスバリア包装は、目的とする気体の透過を抑制する機能を持たせた包装で、通常は食品の変質に関係する酸素ガスを遮断するフィルムで、種類も多く要求品質、価格などによりランクされている。

【鮮度保持包装】
freshness-keeping packaging

食品の鮮度を維持し腐敗を軽減させる機能を持たせた食品包装のことである。
鮮度を保持する保持剤には、次のような5つが挙げられる。

➢ 乾燥剤(シリカゲル、アルミナゲル、塩化カルシウム)
➢ 脱酸素剤(無機質化された還元鉄)
➢ アルコール製剤(エチルアルコール)
➢ 鮮度保持剤(脱酸素+不活性ガス発生剤)
➢ エチレン吸収剤(活性炭)

などがある。
これらの各種製剤は食品と一緒に包装されるため、衛生管理上の注意が必要である。
また、人への配慮として、子どもが誤食しないように製剤袋についても簡単に開封できないような強靭な材質で作られている必要がある。

【蒸着フィルム包装】
evaporation film packaging

蒸着とは金属、セラミックスなどを真空中で加熱またはプラズマ処理して蒸発させ、素材上に付着させて薄膜を形成することである。この方法を用いてフィルム表面に施したものを蒸着フィルムという。蒸着材にはアルミ、シリカ、アルミナなどが使用され、物理蒸着法(PVD:Physical Vapor Deposition)と化学蒸着法(CVD:Chemical Vapor Deposition)がある。
蒸着フィルムの用途は、レトルト殺菌包装に適用するものから紙パック飲料容器やお菓子袋など多岐に渡って使用されていることから安価な蒸着包装が広く用いられている。
セラミック蒸着の包装品は金属探知機でも使用が可能で電子レンジにも利用かできる包装である。

【封緘】
sealing

食品などを容器に入れたり、包んだりした状態の開口部分を封じ、内容物を外気から保護することをいう。これを密封といったりもする。
手法は、機械的に密封する、結束する、テープラベルで貼る、接着、封印、ヒートシールなど多くの封緘がある。
これらの技法の中で、食品の保存性・保護性を高めるためには密封封緘が必要とされ、食品衛生法において密封は、ヒートシール、缶詰の二重巻き締め、瓶の密栓の3種類とすることを規定している。
密封性が損なわれると各種バリア性もなくなると同時に、外部から細菌や微生物などによる二次汚染を起こす原因となるので留意しなければならない。

【欠陥シール】
Seal defect

食品包装は、容器、包装の内部と外部との環境(雰囲気)が異なり、食品を長期間保存することが求められている。酸素のある外部に対して容器、包装内は無酸素状態が要求され、そのため密封封緘が必要となり、シールの完全密封性が要求される。
では密封シールにおける欠陥シールとはどのようなものか。欠陥シールとは包装機械で包装作業中に起こる問題で、さまざまな要因が絡んで発生し、欠陥原因を特定することはかなり難しい。
包装機械のヒートシール条件には、温度、時間、圧力があり、包装材料の種類や厚さによって条件が異なってくる。シールの適正条件は、次の3つとされている。

➢ 温度は低めにする
➢ 時間は長めにかける
➢ 圧力は強めに設定する

である。
次に欠陥シールの現象は、次の5つが挙げられる。

➢ シール部のしわ
➢ エッジの切れ
➢ ピンホール
➢ 内容物のかみ込み
➢ シール強度不足

などの不完全シールのことをいう。
これらの検査には非接触検査法、加圧や減圧を利用した強度検査、欠陥シール検査機などが用いられる。

欠陥シールの現象と対策
現象 対策
しわ フィルムの収縮など温度の上げ過ぎが原因。低温にするか、シール後に水冷するとよい。
ピンホール
エッジ切れ
高温でシールするとフィルムが薄くなり、エッジ切れやピンホールがおこるため、包装材料に合わせた適切なシール条件(温度、時間、圧力)を設定する。また、シール板のエッジを丸くし、応力の分散を図るとよい。
かみ込みシール 内容製品の液垂れがシール部に付着して起こる現象。そのため液切れのよい充填機(充填バルブ)を使用する。また、熱流動性がよく、低温でシールしやすいフィルムを選定する。
シール強度不足 シール条件が不適切だとシール強度が弱くなるため、適正条件の設定が必要。多層の包装材は、低温シール性を持ったフィルムを使用し、適正な条件を設定する。
包装機械不備 包装機械の平衡、ヒートシール板の左右の平衡、均一な圧力、清掃などのインフラ、メンテナンスが必要。

【非接触検査法】
Non-contact inspection method

食品および食品包装品の検査をする場合、直接接触して実施する方法と破損することなく検査する方法とがある。
検査には生産ラインで行う非接触検査のインライン検査と定期的にサンプリングして製品を取出し行う直接検査とがある。検査精度から見た場合直接検査がよいが、全数検査するわけにはいかないため、全数検査が可能な非接触検査が実用的といえる。
非接触検査には次の5つの検査項目が挙げられる。

➢ 外観検査
➢ 異物検査
➢ 欠陥検査(ピンホール検査)
➢ 耐圧検査
➢ 真空度検査

となるが、どのような検査も決して完全ではないので注意する必要がある。
包装品の形状、厚み、検査方向、比重、かさなどによりバラツキが、異なった結果になる可能性にも留意していなければならない。そのため生産開始前の始業時と終了時、品種替えを実施したときなど検査機の感度チェックを実施する。
特に注意すべきは、包装品のピンホール検査である。ピンホール検査機による検出には限界があり、精度アップのために荷電圧をあげると逆にピンホールができてしまうこともある。
生産ラインにおいては、検査工程の全自動化による検品作業の省人化が広がり始めている。
今後インライン検査工程は自動化に向けて最重要な工程になる。

【バッグインボックス】
BIB:Bag In Box

飲料や液体食品などの搬送に使われる。外側は段ボールで、その内側に抽出口を持つプラスチック袋または成形品を装着した二重構造の容器である。外側に板紙のカートンを使用したバッグインカートンやドラムを使用したバッグインドラム、折り畳み式コンテナを使用したバッグインコンテナなども一般的に使用されている。
ワンウェー用と再利用を可能にしたリターナブル用とが使用されている。

【清涼飲料容器】
refreshing drinks container

清涼飲料は身近な飲み物であるとともに、さまざまな容器が用いられている。清涼飲料を安全に安心しておいしく飲めるためにも飲料の容器は重要である。環境問題から石油由来の素材で作られるプラスチック容器は今後見直されることが考えられリサイクル性のよい、アルミ缶や紙容器並びにリユース可能な瓶などが有効かもしれない。
清涼飲料で用いられている代表的な容器については、次のようなものがある。

➢ スチール缶
気体、水分および光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことができる。熱伝導率がよいため、冷えやすく温めやすい素材で、磁石につくため、再資源化の際の選択が容易にできる。

➢ アルミ缶
スチール缶と同様に気体、水分および光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことができる。熱伝導率がよいため、冷えやすく温めやすい素材で、比重がスチール缶の約3分の1と軽く、取り扱いが便利である。アルミ缶からアルミ缶に何度でも繰り返し再生ができる。

➢ ペットボトル
ガラスのように透明なため、中身が確認でき、軽量なため取り扱いが容易である。スクリューキャップのため、開け閉めが容易である。ガスバリア性が、合成樹脂製容器の中で最も優れ中身の長期保存に適している。分別収集されたペットボトルは、繊維や飲料以外のボトルなどにリサイクルされている。

➢ ボトル缶
キャップを含め、アルミ単一素材で作られる。スクリューキャップのため、開け閉めが容易である。従来の缶よりも飲み口が大きく飲みやすくなっている。アルミ缶からアルミ缶に何度でも繰り返し再生ができる。

➢ 紙容器:チルド容器(ゲーブルトップ)
頂点が「三角屋根型」に加工された、箱型の紙容器で、製造から販売まで0℃~10℃以下の温度で管理され、賞味期間が通常18日前後と、短期間な点が特徴になっている。
殺菌時間が短く低温で流通されることから、味・香味が損なわれにくいという利点がある。

➢ 紙容器:LL容器(ブリックタイプ)
直方体や多面体(プリズマ)に成型された、箱型の紙容器で、未開栓であれば常温保管が可能、賞味期間が通常180日前後と、長期間保有できる特徴をもっている。酸素を通しにくい特殊な容器を用いている。LLとはロングライフを意味する。

➢ リターナブル瓶(リユース瓶)
何度も繰り返し使用(リユース)することを前提に製造されているガラス瓶で、回収後、検査・洗浄してから再度中味を充填し、検査の上で出荷できる。透明ガラス瓶は中味が見え、臭いがなく、他の物質に侵されにくいので、安定した品質を保つことができる。

➢ ワンウェー瓶
瓶として再使用を予定していないガラス瓶で、飲用後は回収し、リサイクルのために粉砕し、再資源として活用される。透明ガラスびんは中味が見え、臭いがなく、他の物質に侵されにくいので、安定した品質を保つことができる。

【レトルト食品容器】
retort pouch container

安全・安心を求められている食品分野において、レトルト殺菌された食品や野菜食材の包装が特に増えている。その包装容器として食品保存の機能を持った容器に詰められ流通している。レトルト食品で用いられている代表的な容器については、次のようなものがある。

➢ レトルトパウチ
レトルトパウチは、ほかの食品包装材料と異なり、110~140℃の熱水か水蒸気のなかで高温殺菌されるため、ヒートシール性、耐熱性、防湿性と酸素遮断性に優れた包材であることが要求される。さらに無臭、無味であること安全性が担保され食品衛生法やFDAに適合していなければならない。パウチの種類としては、透明通常タイプ、透明バリアタイプ、アルミ箔バリアタイプ、ハイレトルト(高温短時間殺菌)用パウチ、無機物蒸着パウチの5つに大別できる。

➢ ジップ付レトルト容器
この容器はスタンディングパウチであり、特殊配合樹脂を用いたジッパー素材と特殊機構により、高温加圧加熱によって従来のジッパー機能を失うことがない特徴を持っている。この容器につめられたレトルト食品は、病院や在宅医療高齢者向けに病院食、介護食等、食品が残った場合でもジッパーで密封して冷蔵保管できることが特徴である。米国ジップ社で開発・販売された。

➢ レトルト殺菌用酸素吸収容器
この容器は酸素吸収機能をもったレトルトパウチや容器でオキシガードという名称で流通され、100℃以上の湿熱において容器の収縮や層間剥離(デラミネーション)がなく、120℃以上のレトルト殺菌を可能とした。この容器は深絞り容器の無菌化米飯用トレー、おかゆ用レトルトパウチに使用されている。東洋製罐(株)が開発した。

➢ レトルト対応アルミレスハイバリア性容器
この容器の材質は屈曲によるバリア性が低下しにくいことや従来製品の約2倍となる高い酸素ガスバリア性を持っていることが特徴である。国内や欧米でのレトルト食品の容器はパウチよりもカップ、トレーなどリジット容器が多く利用されている。内容物としてはソース、シチュー、ライス、調理食品などが代表的である。この容器は常温流通が可能で電子レンジ加熱で簡単に食べれる手軽さが市場拡大を牽引している。