◇「国際物流総合展」視察_2022.09.13

◇「国際物流総合展」視察_2022.09.13

会場: 東京ビッグサイト 東1~8ホール
主催: 一般社団法人 日本産業機械工業会
    一般社団法人 日本産業車両協会
    一般社団法人 日本パレット協会
    一般社団法人 日本運搬車両機器協会
    一般社団法人 日本物流システム機器協会
    公益社団法人 日本ロジスティクスシステム協会
    一般社団法人 日本能率協会
開催規模: 526社・団体/2,597ブース (8/30 時点)
開催期間:2022年9月13日 (火) ~ 9月16日 (金) 4日間

東京ビッグサイト展示棟前
東京ビッグサイト展示棟前

◇視察目的:
 自動化・省人化のよるオペレーション、過剰在庫の削減、供給コストの適正化等を実現するためのロジスティクスの役割や物流におけるDXにますます注目が集まっていることから、三品産業向けの物流システム(主に3次元ピッキングシステム+自動倉庫、自律走行型搬送ロボットAGV/AMR/AGF)の動向調査を目的に視察した。

◇全般的な展示内容:
 アジア最大級の物流専門展で、今年は526社・2597ブース(8月30日時点)と過去最大規模での開催となる。東京で国際物流総合展を開くのは4年ぶりである。前回東京で開催された18年は、479社・2435小間の規模で開催し、約75,000人が来場した。今回はそれを上回り、過去最大規模の526社・2597ブースで開催となった。来場者も80,000人が見込まれていたが、速報値では60,574人(9月16日時点)と前回を下回る結果となった。

◇注目したメーカーの製品・システムについて紹介する。

1.トヨタL&Fカンパニーhttp://www.toyota-lf.com/
 豊田自動織機トヨタL&Fカンパニーは、3つのキーテーマとして、「安全、脱炭素、自動化」をコンセプトにした展示をしていた。自動化では、トラックの荷役作業に対応した自動運転フォークリフトを展示デモしていた。現在開発中の製品と説明していた。その他には、作業エリアに設置された反射板の位置をレーザースキャナで検出することで、自己位置を精密に把握できる自動運転フォークリフトなども展示されていた。仕分け作業に対応した可動式次世代ソーター「t – Sort」と多段式高速仕分け機「Sure Sort」の展示デモも行っていた。

写真1-1. トラックの荷役作業に対応した自動運転フォークリフト(AGF)
写真1-1. トラックの荷役作業に対応した自動運転フォークリフト(AGF)
写真1-2. 仕分け作業に対応した可動式次世代ソーター「t - Sort」
写真1-2. 仕分け作業に対応した可動式次世代ソーター「t – Sort」

2. 株式会社スギヤスhttp://www.bishamon.co.jp/
 「Bishamon(ビシャモン)」ブランドの物流機器メーカーであるスギヤスは、1tまで運べる自動運転のデリバリーハンドに、新たに最大で1.5tまで運べる「ABM15」を展示していた。AGVではないが、磁気テープ上を無人で走行し、「分岐ルート」や「停止ステーション」を設置すれば、事前の簡単な設定で曲がったり、止まって荷降ろしなどができる。停止と分岐はそれぞれ最大で9カ所まで設置できる。自律走行機能に制限はあるが、価格は150万円~と自律走行式AGVの半額以下。1tの荷物を運べるAGVもあるが、その分価格も400~500万円と高額なものが多いことから、用途に応じて使い分けてるなど選択の候補にできる。

写真2. 自動運転のデリバリーハンド「ABM15」
写真2. 自動運転のデリバリーハンド「ABM15」

3.株式会社Mujin(ムジン)https://www.mujin.co.jp/
 Mujinは、知能ロボット6台、無人搬送車(AGV)13台を使用し、ブース内での展示デモがされていた。パレット(荷役台)上に荷物を積付ける「Mujin Robot(ムジンロボット)パレタイザー」などを使った「混載ケース積付け出荷ライン」は初出展となっていた。
積載効率や出荷先の品出し効率を考慮した積付け計算に基づき、Mujin Robotがサイズや重量が様々な箱を自動で積み付けていた。従来、後工程の品出しを考慮した積付けを行う場合、シャトルシステム(順立て装置)などの付帯設備が必要となっていたが、ロボットを知能化することで「自動順立て機能」を可能としたため付帯設備を不要とできたと説明していた。

写真3. 「Mujin Robot(ムジンロボット)パレタイザー」などを使った「混載ケース積み付け出荷ライン」
写真3. 「Mujin Robot(ムジンロボット)パレタイザー」などを使った「混載ケース積み付け出荷ライン」

4. 株式会社オカムラhttps://www.okamura.co.jp/
 オカムラは、「イントラロジスティクスの解法~お客様の数だけ解決策を導き出す~」をテーマに、保管からピッキング、搬送まで連動したデモを披露していた。特に目を引いたのは、自動倉庫システム「Auto Store(オートストア)」に、樹脂コンテナ内の物を取り出すピース・ピッキング・システムの「Right Pick (ライトピック)」や、自律移動型搬送ロボットの「ORV:Okamura Robot Vehicle」などを組み合わせるなどの連携を重視したシステム提案をしていた。

写真4-1. 自動倉庫システム「Auto Store(オートストア)」
写真4-1. 自動倉庫システム「Auto Store(オートストア)」
写真4-2. 自律移動型搬送ロボット「ORV:Okamura Robot Vehicle」
写真4-2. 自律移動型搬送ロボット「ORV:Okamura Robot Vehicle」

5.オートストアシステム株式会社https://ja.autostoresystem.com/
 ノルウェーのロボット自動倉庫メーカーで、オートストアの日本法人のオートストアシステムが出展していた。国内では、オカムラ、ソフトバンクがそれぞれ正規販売代理店として出展していた。ブース内に自動倉庫「Auto Store(オートストア)」のデモを披露し、稼働する様子を展示していた。オートストアシステムの「ロボットがコンテナをピッキングする様子を間近で見られるのは展示会ならでは」と説明を受けた。

写真5. ロボット自動倉庫「Auto Store(オートストア)」
写真5. ロボット自動倉庫「Auto Store(オートストア)」

6.株式会社Geek +(ギークプラス)https://www.geekplus.jp/
 物流ロボットを製造する中国メーカーの日本法人、ギークプラスは、専用棚や荷役台(パレット)の下に潜り込んで搬送するAGVの一種、自動棚搬送ロボット「EVE(イブ)」シリーズを展開している。AGVが作業者の前に、ピックアップする製品を載せた棚やパレットを運んで来る展示デモを行っていた。

写真6. 自動倉庫は自動搬送システム / 自動仕分けシステム「PopPick Station」
写真6. 自動倉庫は自動搬送システム / 自動仕分けシステム「PopPick Station」

 一番の強みは柔軟性で、倉庫内に棚を自由に配置できるため、拡張しやすい点にある。AGVが走行できる環境であれば、既存施設をそのまま使できるとアピールしていた。展示されていた自動倉庫は自動搬送システム / 自動仕分けシステム「PopPick Station」で出荷する商品の入ったコンテナラックから、取り出し、自動的に作業者の手元まで運ぶシステム。大中小のあらゆるサイズのコンテナを作業者の手元まで運び、作業者が歩くことなくピッキングができると紹介していた。

7.株式会社椿本チエインhttps://www.tsubakimoto.jp/
 椿本チエインは、チェーン、モーションコントロール、モビリティ、マテハンの4事業を手掛けるメーカーである。自動ソーティングシステム、オートランバンガード MarkⅡ(モノレール式天井搬送電車)、パワーコラム(垂直自動棚)、AIてむ鑑定士(筐体型画像認識装置)などが出展されていた。

写真7-1. 多機能型マテハンシステム「T - AstroX」
写真7-1. 多機能型マテハンシステム「T – AstroX」

 特に多機能型マテハンシステム「T – AstroX」が注目を集めていた。保管機能と高速仕分け機能の両立を実現した縦空間を有効活用できる多機能型マテハンシステムとして展示デモを行っていた。ピッキング能力(実効)で600サイクル/時間×ピッキングST数である。

写真7-2. 天井モノレール搬送システム「オートランバンガードMarkⅡ」と高速垂直自動棚「パワーコラム」
写真7-2. 天井モノレール搬送システム「オートランバンガードMarkⅡ」と高速垂直自動棚「パワーコラム」

 さらに天井モノレール搬送システムの「オートランバンガードMarkⅡ」と高速垂直自動棚「パワーコラム」の展示も立体空間を有効に使う提案となっていた。

8.EXOTEC社https://www.exotec.com/ja/home-jp/
 EXOTEC社はフランスの倉庫ロボティクスメーカーで3次元ピッキングシステム「Skypod(スカイポッド)」の製造元メーカーである。日本国内では、IHI物流産業システムとオークラ輸送機が取り扱っている。3次元ピッキングシステム「Skypod(スカイポッド)」のレポートは、IHI物流産業システムを参照。

写真8. 3次元ピッキングシステム「Skypod(スカイポッド)」
写真8. 3次元ピッキングシステム「Skypod(スカイポッド)」

9.株式会社IHI物流産業システムhttps://www.ihi.co.jp/ilm/
 IHI物流産業システムは、IHIグループにおいてロジスティクスおよびFA分野に強みを持っているメーカーである。先に述べた、フランスのスタートアップ企業のEXOTEC社の3次元ピッキングシステム「Skypod(スカイポッド)」の実機を初展示していた。規模感としては、EXOTEC社と同等であったが注目を集めていた。
 倉庫内を「前後、左右、上下」へ自由自在に移動するロボットが、12m(展示ブースでは6m)のラックからビンを取り出し、短時間でピッカーのいるステーションへ搬送するGoods to Person方式(ロボット自らラックを昇降し、ビンの取り出しから搬送まで全て行う方式)採用の3次元走行ピッキングシステムとして展示デモを行っていた。

写真9. 3次元ピッキングシステム「Skypod(スカイポッド)」
写真9. 3次元ピッキングシステム「Skypod(スカイポッド)」

10.川崎重工業株式会社https://www.khi.co.jp/
 川崎重工業は、各種の輸送機器や機械装置を製造するメーカーである。物流分野において人に代わり荷降ろしを行うデバンニングロボット「Vambo」を展示デモしていた。

写真10. 人に代わり荷降ろしを行うデバンニングロボット「Vambo」
写真10. 人に代わり荷降ろしを行うデバンニングロボット「Vambo」

 「Vambo」は、自社製品の中型汎用ロボット「RS080N」に無人搬送車(AGV)を組み合わせたパッケージ商品。コンテナ内に自動で進入し、大小さまざまな重量物(ケース)の荷降ろしを行える。一般的なコンテナには、1台あたり1,000個以上のケースが積まれており、従来は人手で搬出していたが、「Vambo」は、新開発の3次元AIビジョンシステムとケース取出しハンドにより、1時間に最大600個の荷降ろしが可能と紹介していた。

11.オークラ輸送機株式会社https://www.okurayusoki.co.jp/
 オークラ輸送機は、搬送コンベヤに強みを持つ物流機器メーカーである。本展では“歩かない、持たない、探さない”をコンセプトに、物流ロボットを活用したピッキングシステムとピッキングコンテナのパレタイジングシステム「Smart Picking & Palletizing」を提案していた。展示ブースでは、ピッキングと荷積み・荷卸し作業の省力化・省人化に焦点があてられたソリューション展示がされていた。棚搬送ロボットやピッキングステーションの活用展示、パレタイジング・デパレタイジングロボットシステムやバラピッキングロボットなどが展示デモしていた。パネル展示ではあったが、EXOTECの3次元ロボットピッキングシステム「Skypot」を紹介していた。

写真11-1. 物流ロボットを活用したピッキングシステムとピッキングコンテナのパレタイジングシステム「Smart Picking & Palletizing」
写真11-1. 物流ロボットを活用したピッキングシステムとピッキングコンテナのパレタイジングシステム「Smart Picking & Palletizing」
写真11-2. カートラックを牽引搬送するロボット「OKURUN」
写真11-2. カートラックを牽引搬送するロボット「OKURUN」

 ブース内では、カートラックを牽引搬送するロボットに注目した。走行デモでは、カートラックを自動牽引し、目的地へ運ぶ牽引用ロボット(AMR)として紹介していた。最大牽引質量は350kgである。

12.伊東電機株式会社https://www.itohdenki.co.jp/
 伊東電機は、コンベヤ駆動用モーターローラ(商標「パワーモーラ」)の搬送関連機械メーカーである。物流システムやマテリアルハンドリング(マテハン)機器を製造、販売する伊東電機は、コア技術のモーター内蔵型ローラー(モーター・ドリブン・ローラー、MDR)をベースとした新型MDRメールソーター(ソーティングシステム)を初展示していた。展示システムは、メール便の箱出し⇒メール便の重なりばらし⇒メール便の高速仕分け⇒直角分岐モジュールによる仕分けの自動化⇒出荷先など方面別に仕分けを連続して行うシステムを紹介していた。展示デモでは、搬送ライン上でのトラブル対応を大阪のオペレータと遠隔操作で復旧させるといった実演を行い使いやすさをアピールしていた。

写真12. 新型MDRメールソーター(ソーティングシステム)
写真12. 新型MDRメールソーター(ソーティングシステム)

13.三機工業株式会社https://www.sanki.co.jp/
 三機工業は、三井グループの総合設備建設メーカーである。展示ブースでは「搬送をカイテキに!」をコンセプトに縦型搬送仕分システム「リバースソータ」、ソーティングロボットシステム「メリス・ビアンカ」、プッシュ・トレイ式仕分システム「オプティソーター」(モックアップ)を展示していた。「リバースソータ」は、縦型循環式にすることで上下2段・左右に多くの仕分け間口を設置できることから、従来のクロスベルトソータと比べて設置スペースを約4割削減できるとアピールしていた。展示デモで注目されていたのが、ソーティングロボットで「メリス・ビアンカ」には2つのベルトコンベヤが搭載されていてロボット1台で2つの搬送物を同時に自動で仕分けるシステムとして紹介していた。

写真13. ソーティングロボット「メリス・ビアンカ」と縦型搬送仕分システム「リバースソータ」
写真13. ソーティングロボット「メリス・ビアンカ」と縦型搬送仕分システム「リバースソータ」

14.株式会社マイティーカーサービスhttps://www.mightycar.co.jp/
 産業車両や自動車を整備するマイティーカーサービスは、オーストリアのアギロックスの自動走行フォークリフト「AGILOX(アギロックス)IGV」を展示デモしていた。

写真14. 自動走行フォークリフト「AGILOX(アギロックス)IGV」
写真14. 自動走行フォークリフト「AGILOX(アギロックス)IGV」

 工場や倉庫の地図データを作成すれば、アギロックスIGVが走行ルートを自動で作成する。上部に付いたセンサーで障害物を検知し、衝突を回避しながら、単体で活動するだけでなく、複数のアギロックスが相互に通信し、状況に応じて最適に動く「群知能」を採用している。日本国内では、まだ知名度が低いが欧州の大手企業を中心に導入実績を持つことから今後、日本国内での市場展開が期待できる。

15.村田機械株式会社https://www.muratec.jp/
 村田機械は、自動倉庫や無人搬送システムを中核としたFAシステムやロジスティクスシステムに強みを持つ機械メーカーである。最新の3Dロボット倉庫システム「ALPHABOT」を実演展示とVRでご紹介していた。「ALPHABOT」は、ロボット台車「BOT」が、保管+搬送+仕分け+ピッキングのすべてを行う総合型G2P(Goods To Person)ソリューションとなっていた。また、次世代WMS+IoTプラットフォームを提案する「Muratec E-LOGICS」を紹介していた。「Muratec E-LOGICS」は、日々変化する運用、管理、保守、緊急対応などに関わる現場のあらゆるライブデータを、サプライチェーンの様々なシステムとダイナミックにコネクトするワンストップソリューションである。

写真15. 最新3Dロボット倉庫システム「ALPHABOT」
写真15. 最新3Dロボット倉庫システム「ALPHABOT」

16.スター精機株式会社https://www.stertec.co.jp/~star/
 スター精機は、射出成形機向けの取り出しロボットメーカーとして、自動車業界などを中心に製造現場の自動化を支援してきている直交ロボットメーカーである。取り出しロボットの開発で培った技術を応用した低全高ロボットパレタイザー「PXシリーズ」を展示デモしていた。全高が2000mmと低く、限られたスペースでも設置しやすいのが大きな特徴で、物流倉庫などでの段ボール箱の積付けの自動化に向いている。また、パレット(荷役台)から段ボール箱を積下ろしするデパレタイジング用のロボットシステムの開発にも注力していと説明があった。

写真16. 低全高ロボットパレタイザー「PXシリーズ」
写真16. 低全高ロボットパレタイザー「PXシリーズ」

◇ 最後に
 前回東京で開催された18年に視察をして以来の物流展示会であったが、搬送、保管、ピッキングとそれぞれロボット化、すなわち自動化から自律化、知能化が一段と加速したと感じる展示会であった。ロボット化を加速させた人手不足、コロナ禍などと物流分野の生産効率の向上を目的とした取り組みなどを各社がアピールしていた。
 自律型の自動無人搬送車(AGV / AMR / AGF )が多くシステムの中に組込まれ、工程間搬送や仕分け、ピッキングなどの人による作業への導入が進んでいると感じる。
 さらに自動倉庫システムの「オートストア」や3次元ピッキングシステムの「Skypod(スカイポッド)」など革新的な技術を導入した欧州企業の自動倉庫ソリューションが注目を集めていた。

以上