『リスキリング⁈ デジタル時代の人的資本戦略』

「リスキリング」という言葉を最近、よく聞く。「リスキリング」はスキルを再び習得する、といった意味で使われている。

最近、注目されている概念で、新しい職業に就いたり成長が見込まれる社内の新たな業務に当たったりするため、必要なスキルを身につけることである。「リスキリング」について考えてみることにしよう。

 

これまで日本の企業では人材育成の手法として用いられてきた「OJT」、社内研修が一般的に行われてきた。これらは職場での実践を通じて今の業務を続ける上での技術や能力を高めていく内容が多く、スキルアップなどと呼ばれてきた。

 

一方、「リスキリング」は急速に進むデジタル化などで仕事の進め方が大幅に変わっていく中、世代を問わず、これまで経験したことのない分野への転職や社内での異動を前提にスキルを身につけることである。

 

リスキリングが求められる背景には、DX=デジタルトランスフォーメーションなどで仕事に求められるスキルや人材の需要が急速に変化し、人手が余剰となったり不足したりするミスマッチが2030年には450万人の規模に上ると試算がされている。

 

日本では終身雇用が根付いていて、労働移動が少ないことで技術が社内にとどまり、新たなイノベーションが生まれにくいと指摘されている。

国はリスキリングによって新たな価値が生み出され、成長分野へと労働移動が進めば、生産性や収益力が向上し、賃金の上昇にもつながると期待されている。

 

リスキリングはデジタル人材の不足以外にも企業が抱える経営課題を解決に導いたり、「新たな価値を創出」したりする見方もされている。リスキリングによって新たなビジネスモデルが生み出せれば、将来的には会社が成長するだけでなく、社員にとっても「仕事のやりがい」や「給与アップ」「昇進」にも結び付き、双方にとってメリットはとても大きいと考えられる。

 

その反面、リスキリングは「企業の人材流出につながってしまわないか」と懸念する声もある。しかし、これだけ変化が激しい時代にあって、企業もこれまでの実績や強みだけでは生き延びていくことが難しくなってくることも否定できない。

 

「成長の機会が与えられない会社には人は集まらない」と発想を転換し、「リスキリング」にかかる費用や時間を「コスト」としてではなく人への「投資」捉えるべきだ。すなわち、人的資本戦略を考えるべきである

 

国は「リスキリング」など「人への投資」に3年間で4000億円から5年間で1兆円に拡充するという「総合経済対策」を打ち出しニュースにもなったが、成長分野への労働移動を着実に進めるために官民が協力して実効性のある道筋を作ることが求められている。

 

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