『そろそろ夏に向けた準備、簾(すだれ)と葦簀(よしず)の違いってなんだ⁉』

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 夏になると見かける簾(すだれ)や葦簀(よしず)は、「暑さ対策」の用品として並び始めるころになりました。すでに使っている人も多いのではないでしょうか。我が家にも簾があるが買い替えのために訪れたホームセンター。夏の必需品、簾と葦簀が並んでいました。簾と葦簀の違いについてご存じでしょうか。

簾(すだれ) の主な素材は細く割った竹。葦(よし)が使われることもあります。細く割った竹とヒモで「編む」のが簾の作り方になります。現在では安価な輸入の竹が出回っています。簾の用途、使い方は、軒に吊るし、室内にさしこむ直射日光を遮ります。虫よけ、外からの人目を避ける役割もあります。窓の内外を問わず吊るせ、夏場はカーテンの代わりに使うことができるので便利です。雨にぬれるとカビが生えやすいため、室内に吊るすのが良いです。

カーテンレールからいつも使っているカーテンを外し、代わりに簾を吊るします。窓や玄関に立てかけて使用する、「立て簾」もあります。部屋を仕切る、和モダンなインテリアとしても便利です。

簾の優れている点は、カーテンや金属製のブラインドに日差しが当たると熱をもち、室温を上げてしまいますが、簾は熱を吸収しないので、室温が上がり難いことです。細く割った竹の間にできた空気の層が外気熱を室内に入れず、室内の涼しい空気を外に逃がさない効果もあります。

簾の歴史を調べると奈良時代のころにはすでに簾があったといわれ、「万葉集」でも簾が歌に詠まれています。また、昔の公家を描いた絵には、しばしば「御簾(みす)」が登場します。大名や公家の屋敷では室内と屋外、部屋と部屋を仕切るため、簾に布の縁取りなどをほどこした御簾が活用されていました。小倉百人一首、清少納言の「香炉峰(こうろほう)の雪は簾をかかげて見る」の逸話に御簾が出てきます。

簾(すだれ)に対して葦簀(よしず)は、水辺に生える葦(よし)を使っているので「葦簀(よしず)」といいます。「葦(よし)」は「あし」とも読みますが、「悪し(あし)」と音が同じで縁起がよくないとして「よし」を使うようになったそうです。2~3メートルの葦をシュロ糸でつなげると葦簀が完成します。葦も簾の原料である竹と同じく、輸入物が大半を占めます。

葦簀の優れている点は、簾よりも大きなものが多く、暑さをしのぐため窓の外に立てかけて使います。海の家など簡易的な建物の屋根や壁になった風景を観たことがあると思います。

北海道など寒冷地では、寒さや雪を防ぐためにも重宝します。使い方は軒下やベランダの掃き出し窓に葦簀を立てかけるだけの簡単なものです。斜めに立てかけることを考え、窓の高さよりも2~3割大きな葦簀を選ぶのが大事です。強風で飛ばされないよう葦簀の下部にひもを通し、重石で固定することが必要です。

遮熱、遮光効果は簾より高く、風をよく通す点が葦簀の長所になります。窓を開けて過ごすなら、葦簀に水を掛け葦がたっぷり水を吸い、気化熱の作用で室内に涼風が吹き込みます。これだけでも体感温度が2℃下がるといわれています。

葦簀についても歴史を調べてみても、いつから作られはじめたのか、起源は定かではありません。ただ、日本書紀にも葦原の様子が出てくるほど、葦は昔から日本人になじみ深い植物です。葦簀をはじめ、さまざまな形で生活に取り入れられてきたと推察できます。江戸時代には葦簀を天井材として利用していました。葦の代表的な産地は淀川水系、琵琶湖、渡良瀬遊水地、北上川などで、周辺では葦簀の生産が盛んでした。現在では輸入の葦に押され、国産の葦は減りほとんど見られなくなりました。

簾も葦簀も「遮光、遮熱、虫よけ、外からの視線を避ける」効果は同じです。住まいや気候によって簾と葦簀を上手に使い分けることで、今年の夏のエネルギー問題の対策として昔ながらの涼の取り方を見直してはいかがでしょうか。

以上