技術用語解説67『ダイエット食品 (Diet food)』

1.定義

 保健、医療など特定の目的のために、ある規定された内容をもつ食品をいう。本来、食事療法という意味合いの強い「ダイエット」という学術用語に「食品」を付したものであるが、一般的には市場を中心として用いられている通俗用語である。成人病の予防や美容の志向が強い今日では、肥満防止あるいはやせるための食品の意味で用いられる場合が多い。そ の他、高血圧の予防や治療のための低塩食品に対して呼ばれることもある。

2.特徴

 ダイエット食品の基本的性格としては、不足しがちな栄養素を補給する栄養補給食品的なものと、逆に過剰に摂取しがちな栄養素を制限し、代謝の改善をはかる栄養調整食品的なものの双方が含まれる。しかし、具体的なダイエット食品の例でみると、これらの区別が容易でない双方の性格を兼ね備えているものがあるなど複雑である。その食品形態 は、未精製穀物食品(食物繊維、ビタミン、ミネラルの補給)、こんにゃく(低エネルギ)などの日常食品ならびに低脂肪ミルク、低脂肪マーガリン、 低塩醤油、高繊維パンなどの日常食品タイプの加工食品から、特別に調製された栄養補助食品タイプのものまでさまざまのものがある。このうち、栄養補助食品は「いわゆる健康食品」の一部をなすもので、日常食品 とは異なり通常の食事摂取形態にはなじまない形状や性質であり、特定成分の含量に著しい高低のあるのが特徴である。
 栄養補助食品のうち栄養補給を目的とするものには、古来用いられてきた肝油(ビタミンA、Dの補給)や酵母(ビタミンB群の補給)から精製度の進んだ胚芽油(ビタミンEの補給)、さらには純粋の化学物質に近 いビタミン類、カルシウム、たんぱく製品(プロテイン) などが含まれる。一方、栄養調整を目的とするものには、 食物繊維を主体とする低エネルギ食品、低エネルギ甘味料、さらには体脂肪の分解に役立つとうたわれているプロテイン(多くは大豆たんぱく製品)などが含まれる。このほか、栄養素に直接関係するというよりは特別 な生理的効果を期待する、いわば保健補助食品ともいうべきものにも、ダイエット食品のような性格をもつものがある。例えば、魚油より濃縮したエイコサペンタエン酸(EPA)製品は血栓防止作用や血中コレステロール、トリグリセリドなどの代謝改善効果が期待されている。 次に、上記のようなダイエット食品とは別に、厚生労働省が栄養改善法に基づき製造認可 しているものに「特殊栄養食品」がある。大別して強化食品(米、麦、パン、 あん、味噌、マーガリンなどにビタミン、カルシウム、 リジンなどを適宜強化したもの)と特別用途食品(正確にはこのうちの病者用特別用途食品、例えば低ナトリウム食品、低カロリ食品、高たんぱく食品)がある。これらの食品は、補給したり制限したりする栄養素の含量に規制がある。また、病者用特別用途食品の場合は医師、 栄養士等の相談を得て使用することが適当である旨指示されている。特殊栄養食品は、通常ダイエット食品とはいわないが、内容的にはダイエット食品の範疇に属するものである。 以上述べたダイエット食品の語義に沿って具体例を表1. に示す。

表1. ダイエット食品の例

主要目的 日常食品タイプ 栄養補助食品タイプ
栄養補助 未精製穀物食品
(玄米粥、食パン、ビスケット)
各種強化食品
肝油、酵母
胚芽油
ビタミンC、E
カルシウム
たんぱく製品(プロテイン)
栄養調整 こんにく、寒天、豆乳
食物繊維添加加工食品
(食パン、ビスケット、中華麺)
低エネルギ甘味料添加加工食品
(あめ、ジャム、ビスケット、茹で小豆、フルーツ缶詰)
低塩加工食品(醤油、味噌)
低脂肪加工食品
(ミルク、ヨーグルト、マーガリン、ドレッシング、マヨネーズ)
食物繊維食品
(セルロース、ペクチン、グルコマンナン)
低エネルギ甘味料
(マルチトース、ソルビトール、ステビオサイド、アスパルテーム、フラクト)
オリゴ糖
食塩代替調味料
たんぱく製品(プロテイン)

3.評価

 ダイエット食品は、特定の栄養素や成分の含量に高低のあるのが特徴であるが、現状ではその摂取目的に照らして適切であるか否かの判断がつきにくいものも見受けられる(ただ し、上記の特殊栄養食品には一定の含量規制がある)。したがって、使用に当ってはその成分内容とともに、摂取する必要性についても十分に検討することが大切である。また、摂取後もその有効性や幣害について注意深く観察することが望まれる。
 もとより、健全な食生 活をし、減量する場合にも適正な方法を講じれば、あえてダイエット食品に依存する必要性はない。しかし、先天的ならびに後天的に特異な体質をもつ個人が医学的見地から必要とする場合や、健全な食生活を維持しにくい情況にある個人が利用するには有効な食品である。

以上