技術用語解説44『カビ毒 (Mycotoxin)』

技術用語解説44『カビ毒 (Mycotoxin)』

 カビ毒による中毒はアフラトキシン中毒症によって注目されたが、実際には日本および諸外国でカビ毒による中毒は古くから知られていた。ところが、それらの中毒症は人に直接関与しないか、関与したとしてもカビ毒として強力でなかったために注目されていなかった。いずれにしても、アフラトキシンによる中毒症がカビ毒とその中毒の研究の一契機なったことは事実であり、それ以降真菌と代謝産物、カビ毒中毒が食品衛生上認識されるようになってきた。
 カビ毒として知られる代謝産物は多いが、その主だったカビ毒をあげ、主な汚染食品と産生カビを表1.にまとめる。カビ毒産生菌の多くは、Aspergillus、PenicilliumおよびFusariumの3属である。中毒は発がん、神経障害、循環器障害などのように慢性的に経過し、重篤となりやすい。

表1. 食品と関わりのある代表的なカビ毒
カビ毒名 主な汚染食品 主な産生菌
アフラトキシンB1 ナッツ類、穀類、香辛料、豆類 Aspergillus flavus
A. parasiticus
オクラトキシンA 穀類、豆類 A. ochraceus
Penicillium spp.
ステリグマトシスチン 貯蔵穀類、チーズ A. versicolor
パツリン リンゴ加工品 P. expansum
シトリニン 穀類 P. citrinum
ルテオスカイリン 米 P. islandicum
トリコテセン系カビ毒 穀類 F. usarium spp.
ゼアラレン 穀類、豆類 F. usarium spp.
フモニシン トウモロコシ F. usarium spp.

代表的なカビ毒について解説する。

1. アフラトキシン

 Aspergillus flavus、A.parasiticusの産生するアフラトキシンは食品、特に穀類に含有されていることが多く、また発がん物質として最強であることから、食品のアフラトキシン汚染に厳しい規制が取られている。
 アフラトキシンにはB1、B2、G1、G2、M1、M2などが知られており、分子量312~330の低分子化合物で、融点は237~289℃であり、次亜塩素酸ナトリウムなどのアルカリ、光によって容易に分解する。
 アフラトキシン産生真菌の多くは熱帯、亜熱帯の土壌に広く分布し、植物を汚染する。主に穀類の豆、ピーナッツ、米、麦、ナッメ、綿実、トウモロコシ、胡椒、禾穀類などから分離され、また輸入穀類の主要真菌でもある。

2. オクラトキシン

 A.ochraceusによって産出されるオクラトキシンは7種が知られている。肝臓、腎臓への障害性が強い。A.ochraceusは熱帯、亜熱帯の土壌に多い。オクラトキシンはPenicillium属の一部からも産出される。

3. ステリグマトシスチン

 A.versicolorから単離されたカビ毒で、アフラトキシンと構造式が類似する。A.versicolor群のA.sydowii、A.versicolorが代表種であり、これらの真菌は土壌に分布し、米、麦、豆など穀類から高率に分離される。

4. シトレオビリジン

 Penicillium citreo-virideによる代謝物として知れている。動物に対し、上行性麻酔をもたらす神経毒である。土壌に分布し、穀類、味噌、バターなどから分離される。

5. シトリニン

 P.citrinumの産生するカビ毒で、腎臓毒性が強い。尿細管上皮の変性から腎臓の腫脹を認める。P.citrinumは土壌に広く分布し、多くの食品原料に付着している。

6. パツリン

 パツリンは、神経毒の証明されたカビ毒である。ラットへの連続皮下注射により肉腫形成も認められている。
 産生真菌として、Aspergillus属ではA.clavatusが、またPenicillium属ではP.expansumなどが知られている。A.clavatusは亜熱帯、温帯の土壌に広く分布し、穀類に付着する。またP.expansumは穀類やリンゴ腐敗カビとして分離される。

7. 含塩素ペプタイド

 P. islandicumのカビ毒として含塩素ペプタイドのイスランジトキシン、シクロクロロチンおよびルテオスカイリンが単離され、国内で発見されたカビ毒である。
 肝障害性の強いカビ毒で、長期に渡り摂取すると肝硬変あるいは肝がんの発生が見られる。P. islandicumは土壌、米、麦、大豆などの穀類から分離される。自然汚染例は熱帯、亜熱帯に見る。

8. フザリウムトキシン

フザリウムトキシンはF.usarium属に代表されるカビ毒で、次の4つが知られている。
① トリコテセン系カビ毒
② ゼアラレノン
③ ブテノライド
④ フモニシン
である。トリコテセン系カビ毒として、フザレノン-X、デオキシニバレール、ニバレノール、T-2トキシン、ジアセトキシスシルペノールなどが知られている。白血球減少症に代表されるトリコテセン系カビ毒には皮膚刺激性の強いものが知られている。
 フモニシンはF.moniliformeの産生するカビ毒である。F.moniliformeは自然界に普遍的に分布する菌種であり、食品衛生上無視できないものである。

以上

【参考文献】

  1. 「食品のカビⅠ. 食品のカビ汚染と危害」宇田川俊一編 幸書房
  2. 「微生物殺菌実用データ集」山本茂貴監修 サイエンスフォーラム