技術用語解説40『 有機農産物 (Organic Farm Products) 』

『技術用語解説40『 有機農産物 (Organic Farm Products) 』

 近年、百貨店やスーパーでは、有機野菜のコーナーが増え「有機」や「オーガニック」の用語が目立ち始めるなど、消費者の健康・安全志向を背景にその生産量、消費量が増加傾向 にあり、国内においても「有機農産物」が注目されるようになった。この有機農産物は、農 林水産省が平成4年に制定した「有機農産物及び特別栽培農産物に係る表示ガイドライン(平成4年10月1日付農産園芸局長、食品流通局長、食糧庁長官通達)の中で、初めて用語 として使用され、「当該農産物の生産過程等において、化学合成農薬、化学肥料及び化学合成土壌改良資材(以下「化学合成資材」と総称する)を使用しない栽培方法又は必要最小限の使用が認められる化学合成資材を使用する栽培方法により生産された農産物であって、必要最小限の使用が認められる化学合成資材以外の使用を中止してから3年以上を経過し、堆肥等による土づくりを行った圃場において収穫されたもの」と定義されている。
 従って、有機農産物の生産に当たっては、必要最小限の使用が認められる無機硫黄剤・銅剤、フェロモン剤等作物等に直接施されない農薬、作物の生長に不可欠な微量要素を補給する肥料等を除いて、化学肥料に代えて堆肥等の有機物の土壌への投入、化学合成農薬に代えて農薬取締法に基づき登録された天然の有用鉱物資材等天然系の農薬を使用して生産された場合に、有機農産物の名称を冠することができることとなっている。

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 表1. 有機農産物及び特別栽培農産物に係る表示ガイドライン(抜粋)

用語 定義
有機農産物 当該農産物の生産過程等において、化学合成農薬、化学肥料及び化学合成土壌改良資材(以下「化学合成資材」と総称する)を使用しない栽培方法又は第3の1に定めるところにより必要最小限の使用が認められる化学合成資材を使用する栽培方法により生産された農産物であって、第3の1に定めるところにより必要最低限の使用が認められるか化学合成資材以外の化学合成資材の使用を中止してから3年以上を経過し、堆肥等による土づくりを行った圃場において収穫されたものをいう。
転換期間中
有機農産物
当該農産物の生産過程等において、化学合成資材を使用しない栽培方法又は第3の1に定めるところにより必要最低限の使用が認められる化学合成資材を使用する栽培方法により生産された農産物であって、第3の1に定めるところにより必要最低限の使用が認められる化学合成資材以外の化学合成資材の使用を中止してから6か月以上を経過し、堆肥等による土づくりを行った圃場において収穫されたもの(有機農産物に該当するものを除く)をいう。
特別栽培 農産物 当該農産物の生産過程等の使用資材に着目した特別な栽培方法により生産された農産物(有機農産物及び転換期間中有機農産物に該当するものを除く)であって、「無農薬栽培農産物」、「無化学肥料栽培農産物」、「減農薬栽培農産物」及び「減化学肥料栽培農産物」をいう。
無農薬栽培
農産物
特別農産物の内、当該農産物の生産過程等において、農薬を使用しない栽培方法により生産された農産物をいう。
無化学肥料
栽培農産物
特別栽培農産物の内、当該農産物の生産過程等において、化学肥料を使用しない栽培方法により生産された農産物をいう。
減農薬栽培
農産物
特別栽培農産物の内、当該農産物の生産過程等における化学合成農薬の使用回数が、当該地域の同作期において当該農産物について慣行的に行われている回数の概ね5割以下(土壌消毒剤、除草剤等を含めた使用回数の合計を比較するものとする)の栽培方法により生産された農産物をいう。
減化学肥料
栽培農産物
特別栽培農産物の内、当該農産物の生産過程等における化学肥料の使用量が、当該地域の同作期において当該農産物について慣行的に行われている使用量の概ね5割以下(化学肥料の窒素成分量を比較するものとする)の栽培方法により生産された農産物をいう。

 このように有機農産物は、生産の段階において、原則として化学合成資材の使用を中止してから3年を経過し、その間堆肥等による土づくりを行った圃場において収穫されたものとされていることから、国内のようにアジアモンスーン地帯にあり、高温、多湿の条件下では大変厳しい生産要件となっているほか、流通段階においても有機的な流通を確保することが要求されている。
 例えば、流通段階において化学合成資材の添加又は処理が行われた場合(輸出国から国内に輸入される過程において化学合成農薬による燻蒸処理が行われた場合を含む)は、有機農産物である旨の表示を抹消しなければならないこととなっており、有機農産物として販売するためには、生産段階は勿論のこと流通段階においても有機的要件を確保することが要求されている。なお、表1.に示した「有機農産物及び特別栽培農産物に係る表示ガイドライ ン」では、有機農産物のほか、「転換期間中有機農産物」、「無農薬栽培農産物」、「無化学肥料栽培農産物」、「減農薬栽培農産物」及び「減化学肥料栽培農産物」についてもそれぞれ定義されている。
 有機農産物を取り上げたが、現在、国が推進する有機農業は環境問題の救世主と考えているようだが、課題が多く今後の取組みについて注視していきたい。

以上

【参考引用先】

農林水産省HP:【有機農業関連情報】トップ ~有機農業とは~
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/