『気象変動による災害が警告、今のままの設計基準で大丈夫?』

ここ数年、この時期の梅雨前線による豪雨が列島各地で猛威を振るっている。熊本県をはじめ九州各県、さらには長野、岐阜の両県にも大雨特別警報が出る状況である。日本列島からはるかに離れたインド用の海面温度か長雨の要因ではないかと気象庁では分析している。地球温暖化による海面の高温化が、雨量の増大につながる水蒸気の大量発生を呼び込んでいることは確かだ。気象変動時代を迎え、従来の経験が通用しない大規模災害への備えが待ったなしになってきている。

確かに近年の雨の降り方は、数十年に一回の豪雨、過去に経験のない豪雨という表現が多くなってきている。「1時間に50ミリ以上の非常に激しい雨の日が、ここ100年間の間に2倍まで変化するだろう」。気象庁が地球温暖化など気候変動のデータを基にスーパーコンピュータではじき出した将来予測の試算結果である。
一般的に気温が1度上昇すると、空気に含むことができる水蒸気量は6~7%程度増加するとされている。

日本近海での海面水温はどうだろう。水温は高まった状態が続いている。地球温暖化の進行で海面温度が上昇し、水蒸気がより多く供給される循環が断続的に起こっている。
今回の豪雨に関し「日本の南の海では、海面温度が平均より1度ほど高い場所があったために、大量の水蒸気を含んだ空気が列島に流入した」と考えられる。

大気の状態はどうであろう。列島付近は梅雨末期で、太平洋側の高気圧の張り出しが例年より弱く、前線を押し上げることができず停滞している。偏西風が、黄海付近で平年のコースより南側を通過している。上空の風に沿うように比較的冷たい空気が南下し、南からの温かく湿った空気との境界に前線ができる状態が長く続くことになった原因とされている。
前線には南からの温かく湿った空気の流入が活発で、大気を不安定にしている。断続的に流入が続く線状降水帯と呼ばれる現象が起こっている。

近年の気象変動による激しい豪雨は、「昔は大丈夫だったから、今回も大丈夫」という過信は捨てた方がいいだろう。ニュースなどの映像を見ると道路や橋、河川、鉄道なども昔の基準で設計されていることから、崩壊するなど強度不足が感じられる。従来の実績がそのまま活用できない時代になったといえる。これからの公共施設については、設計基準の見直しの必要性があることを、気象変動による災害が警告していると考えるべきである。

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