『“最後のチャンス”日の丸半導体「ラピダス」の勝算は⁉』

『“最後のチャンス”日の丸半導体「ラピダス」の勝算は⁉』

  現在では遠い過去の経験であるが、半導体製造装置のダイボンダ、ワイヤーボンダの設計エンジニアを経験した技術屋としては、頑張ってほしいと思っているが、残念なことに現状の国内技術を考えると数年後2nmを量産するのは極めて困難と思われる。世界の半導体技術レベルと比較して10~20年以上の周回遅れとなっているのが現在の日本である。

  国家戦略として、経済産業省が中心となり欧米との国際連携を軸に次世代半導体の量産する新会社「ラピダス」と、研究開発拠点である技術研究組合最先端半導体技術センター(LSTC)をセットにした半導体産業の復活を掲げる基本戦略構想を打ち出し大きなニュースになった。このプロジェクトを実現するため5兆円の資金を用意し、「最後のチャンス」に挑もうとしている。経産省とトヨタ自動車、NTTなど主要企業を巻き込んだ「オールジャパン」による構想で進められることになっている。

  「半導体の開発のためには今後10年間で7~10兆円規模の資金が必要」と言われている。日米首脳会談で「半導体協力基本原則」に合意を受けて、次世代半導体開発の共同タスクフォースの設置が発表された。さらに重要・新興技術の育成・保護に向けて日米共同研究開発の推進で合意がされ、日本側の取り組みとして研究開発組織(日本版NSTC)の立ち上げも発表されている。

  これだけ矢継ぎ早に半導体関連の政策を打ち出した背景には、かつて半導体全盛期の1980年代「産業のコメ」といわれた半導体分野での日本の立ち遅れがある。欧米と比較して周回遅れの状態になっているのだ。1988年に日系半導体シェアは50%を越えていた。だが、その後30年以上にわたり低下傾向が続き、2021年のシェアは8.8%しかない。半導体企業のベスト20社を見ると、1990年には1位のNEC、2位の東芝をはじめ日立、富士通など10社が入っていた。しかし2021年で見ると、12位のキオクシアが最高位で、ルネサス、ソニーセミコンダクターの3社しかない。

  こうした惨状からして、このままでは日本から半導体産業は消滅してしまうという危機感も生まれていた。米国をはじめ欧州、韓国などでは、次世代の半導体開発のために政府が強力な支援策を相次いで発表している。日本はこの流れに乗り遅れるわけにはいかない情勢に追い込まれている今こそ半導体産業復活の「真のオールジャパン」を形成してほしい。現在の産業界を見ても半導体不足は日本経済に深刻なダメージを与えている。この1、2年は自動車メーカーの生産ラインが半導体不足のため一時的にストップしたりする事態が起きている。この他、鉄鋼、電力、輸送などインフラ関連でも半導体の需要はうなぎ上りに増えていて、世界の先端技術に追いつくためには、「オールジャパン」で取り組まざるを得ないという認識が自動車産業以外でも醸成されてきている。

  「ラピダス」に出資した企業は、トヨタ、NTT、NEC、ソニーグループ、ソフトバンク、デンソー、キオクシア、三菱UFJ銀行など各分野のトップが名を連ねている。全体のかじ取りは経産省がするが、これだけの主要企業がタッグを組んだところからみても、「オールジャパンで何としても半導体の遅れを早期に取り戻さなければならない」という意気込みが伝わってくる。今後の「ラピダス」の動向に注視しながら半導体産業の取り組みを見守ることにしよう。

以上