『コロナ禍で大きく変わった働き方』

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府の専門家会議が5月に示した「新しい生活様式」。内容は買い物や娯楽から冠婚葬祭まで多岐にわたり、働き方にも大きく影響が及んだ。会議や名刺交換のオンライン化が推奨されたことで、これまで社会人の基本とされてきた「ビジネスマナー」も大きく変化する可能性があり、押印を廃止する動きも出てきた。コロナと共存する社会での、正しいマナーとは何か、考えてみよう。

初対面の方とは、今まで必ず名刺交換するのが当たり前で、社会人の基本であったがコロナ禍になった現在では、名刺すら交換をためらう。新しい生活様式で推奨されるオンラインでの名刺交換も推奨されている。名刺交換の所作は社会人にとって必須のマナーとされていた。初対面の場合、名刺交換をしてから会話を始めることが一般的だ。これがオンライン化した場合、専用のソフトやアプリなどを通じ、URLやQRコードを使って互いの名刺の画像を送りあうなど、パソコンやスマートフォン上でのやり取りに置き換わることになった。

やはり戸惑いの方が大きい。これまでの名刺交換の方法は、名刺を相手の“顔”として大事にするという考えからできたものだったはず。オンラインであっても、名刺を大事にするという前提は一緒である。現在のコロナ禍では応接室や会食の場の対応にも影響がでるであろう。これまでは、上座に役職や立場が上の人が座ったが、今後は変わる可能性がある。換気の状況や対面を避けることにも配慮する必要があるためだ。 応接室や個室での会食は「3密」にもなりやすく、会場の状況によっては目上の人に下座に座ってもらったり、ドアや窓を開放したままにしたりするケースも想定できる。こんな場面に遭遇した時のマナーとして「事後説明ではなく、案内前に一声かけることが大切」を心得ておくべきことである。

オンラインを活用した非対面の会議や、マスクを着用しての会話も気になる。画面やマスク越しでは表情やしぐさで反応が伝わらず、場の空気がつかみにくくなり、話している側の不安やいらだちにつながる恐れもある。こうした問題は、少しの配慮をすることで解消されると聞いた。例えば、リアクションを大きくしたり、口に出して相槌を打ったり。相手への気遣いがこれまで以上に重要ということである。

コロナ禍の影響で停滞気味だった働き方改革の質がガラッと変わる局面を迎えることになったのは、皮肉な話である。新しいビジネスマナーとして定着しても、抵抗を感じる人が多いのではなかろうか。

以上