技術用語解説53『アミノ酸スコア(amino acid score)』

技術用語解説53『アミノ酸スコア(amino acid score)』

 現在、知られているタンパク質は20種類のアミノ酸からできていた天然高分子であった。食事などにより得られたタンパク質は酵素によってアミノ酸に分解され、腸などから体内に吸収されてタンパク質に再合成するか、排出物(尿素など)やエネルギーとして代謝されて体外に排出される。ただし一旦、体内に吸収されたアミノ酸が、元のタンパク質と同じになることはほとんどない。

1. 必須アミノ酸とは

 必須アミノ酸は、大きく分類すると、動物性タンパク質と植物性タンパク質がある。動物の肉類に含まれるタンパク質と植物(穀物類)に含まれるタンパク質のどちらを食べても栄養的にはほとんど違いがないと思われているが、肉類に含まれる動物性タンパク質と、穀物類に含まれる植物タンパク質には、次の2つの点が異なる。

(1) 体内にとり込む吸収率の違い

 体内への吸収率は、食事の量を同等として比較した場合、動物性タンパク質は97%、植物性タンパク質は84%が吸収される。

(2) 必須アミノ酸のバランスの違い

 動物性タンパク質と植物性タンパク質の共通点は、両者とも20種類のアミノ酸からできている点である。両者の異なる点は、アミノ酸の量、割合、すなわち必須アミノ酸のバランスに違いがある点である。
 必須アミノ酸には、イソロイシン、ロイシン、トリプトファン、リジン、ヒスチジン、バリン、スレオニン、含硫アミノ酸、芳香族アミノ酸の9種類となる。
 動物性タンパク質は多くのものには9種類の必須アミノ酸を含んでいるが、植物性タンパク質の中には特定の必須アミノ酸が不足しているものがあるので注意が必要である。必須アミノ酸が不足していると、他の必須アミノ酸が多く含まれていても、本来必要なタンパク質合成量が不足している状態となってしまうことがある。
 必須アミノ酸の効用とそれを多く含む食品例を表1. の一覧に示す。

表1. 必須アミノ酸の効用とそれを多く含む食品例

必須アミノ酸名称 効用 食品例
イソロイシン 成長促進、血管拡張、肝機能強化、筋肉強化、疲労回復など 鶏肉、牛肉、牛乳、チーズなど
ロイシン タンパク質の合成、肝機能向上、筋肉強化など 牛肉、レバー、ハム、トウモロコシ、牛乳、チーズ、ほうれん草など
トリプトファン セロトニン生産の補助、安眠効果、精神安定など レバー、牛乳、チーズ、バナナ、パイナップル、緑黄色野菜、大豆など
リジン 肝機能強化、免疫力工場、カルシウムの吸収促進、脳卒中の発症抑制、ホルモン・酵素の生成など 鰆、サバ、オートミール、大豆、納豆など
ヒスチジン 神経機能の補助、成長促進、慢性関節炎の緩和、ストレスの軽減など 鶏肉、牛肉、ハム、イワシ、カツオ、マグロ、チーズなど
バリン タンパク質の合成、肝機能向上、血液中の窒素バランスの調整など 鶏肉、牛肉、レバー、魚、ドライミルク、チーズ、ゴマなど
スレオニン 成長促進、新陳代謝の促進、肝機能補助など 卵、スキムミルク、ゼラチンなど
含硫アミノ酸 アレルギーによるかゆみの軽減、肝機能のサポート、抗うつ効果など 牛肉、羊肉、レバー、牛乳、ほうれん草、ニンニク、トウモロコシなど
芳香族アミノ酸 精神安定、食欲制御、鎮痛効果など 肉類、魚介類、大豆、あずき、高野豆腐、納豆など

2. アミノ酸スコアとは

 アミノ酸がバランスよく含まれている良質なタンパク質かどうかを知る方法に「アミノ酸スコア」という指標がある。
 アミノ酸スコアは食品に含まれるタンパク質が必須アミノ酸を十分な量だけ含んでいるかどうかを示す指標値である。アミノ酸が100、あるいはそれに近い指標値であることが理想とされ、アミノ酸組成に近似すると考えられている(表2. を参照)。

表2. 動物性タンパク質と植物性タンパク質のアミノ酸スコア

動物性タンパク質 植物性タンパク質
食品名称 アミノ酸スコア 食品名称 アミノ酸スコア
牛肉 100 大豆 100
鶏肉 100 枝豆 92
豚肉 100 おから 91
馬肉 100 豆乳 86
山羊肉 100 木綿豆腐 82
ロースハム 100 ブロッコリ 80
牛乳 100 にら 77
ヨーグルト 100 ジャガイモ 73
生クリーム 100 椎茸 73
100 玄米 68
アジ 100 白米 65
イワシ 100 ビーフン 62
サケ 100 落花生 62
マグロ 100 にんじん 55
フグ 100 アーモンド 50
スルメイカ 100 ゴマ 50
鰹節 100 小麦粉 (薄力粉) 44
ナチュラルチーズ 92 食パン 44
アサリ 81 うどん(生) 41
ハマグリ 81 そうめん 41
牡蠣 77 小麦粉(強力粉) 38
車海老 74 トウモロコシ 22
ホタテ 71 濃口醤油 22

 表2. の一覧を見ると、肉や魚、乳製品などの動物性タンパク質食品にはアミノ酸スコア100のものが多く、それに対して植物性タンパク質食品には低いものが多くあり、植物性の穀物類や穀物由来の食品には必須アミノ酸が不足している食品が多く見られることが分かる。

以上

【参考文献・引用先】

  1. 日本理化学薬品株式会社H.P https://www.nipponrika.co.jp/
  2. 「アミノ酸スコアとは?」森永製菓株式会社H.P
    https://www.morinaga.co.jp/protein/columns/detail/?id=6&category=muscle
  3. 「アミノ酸スコアとは。スコアが高い食品はどれ?」江崎グリコ株式会社H.P
    https://cp.glico.jp/powerpro/amino-acid/entry37/