2025/10/20
技術用語解説78『3-Aサニタリ規格(3-A Sanitary Standards)』
3-Aサニタリ規格(3-A Sanitary Standards)は、主に食品、飲料、乳製品、医薬品などの製造装置における衛生設計の基準を定めた米国発の規格である。以下に解説する。
1. 3-Aサニタリ規格とは?
-
① 正式名称:
3-A Sanitary Standards(3-A SSIによって管理) -
② 目的:
食品や医薬品と接触する装置の衛生性を確保し、製品の汚染を防止することで公衆衛生を守ること -
③ 対象:
ポンプ、バルブ、配管、フィルター、センサーなど、製造ラインで食品と接触する部品や装置
2. 規格の背景と構成団体
-
① 起源:
1920年代、米国の乳業界で牛乳用パイプフィッティングの衛生基準として誕生 -
② 名称の由来:
「3-A」は、当初関与した3つの団体(サニタリ専門家、装置メーカー、乳業者)に由来 -
③ 現在の構成団体:
• 3-A SSI(Sanitary Standards Inc.)
• USDA(米国農務省)
• FDA(米国食品医薬品局)
• FPSA(食品加工供給者協会)など
3. 規格の特徴
表1.に3-Aサニタリ規格の特徴をまとめる。
【特 徴】 | 【内 容】 |
---|---|
清掃性 | 装置は機械的に洗浄可能で、手動でも分解・検査・洗浄が容易であること |
表面仕上げ | 製品接触面は滑らかで、微生物の繁殖を防ぐためRa 32 µin以下の研磨が推奨される |
材 質 | 耐食性・非吸収性・非反応性の材料(例:ステンレス鋼)を使用 |
設 計 | 死角や滞留部がなく、液体や残渣が残らない構造であること |
認 証 | 3-Aシンボルマークが付与されると、規格に準拠していることを示す |
4. 他の衛生規格との違い(例:EHEDG)
表2.に3-AとEHEDGとの違いを示す。
【規 格】 | 【地 域】 | 【特 徴】 |
---|---|---|
3-A | 北米中心 | 実装装置の衛生設計に重点。FDA/USDAと連携 |
EHEDG | 欧州中心 | 設計原則と検証試験に重点。国際的なベストプラクティスを反映 |
5. 実装例と注意点
-
① フィルターやセンサー:
3-A準拠の製品は、分解・洗浄が容易で、微生物の繁殖を防ぐ設計 -
② 海外装置との互換性:
3-A規格はIDFやISO規格と形状が似ていても互換性がないため、変換アダプターが必要な場合もある。海外製装置(特に米国製)を導入する際、3-A規格の継手が使われていることが多い - ③ 日本国内ではIDF/ISO規格が主流のため、変換部品の在庫や納期に注意
- ④ 設計段階で規格の混在を避けることで、洗浄性・メンテナンス性・衛生性を確保しやすくなる
6. 寸法と形状の違い
表3.に3-A規格とIDF・ISO規格の違いと互換性についてまとめる
【規 格】 | 【主な 用途】 |
【外径 寸法】 |
【肉 厚】 | 【継手形状】 | 【備 考】 |
---|---|---|---|---|---|
3-A(米国) | 乳製品・食品 |
インチベース (例:1.5″=38.1mm) |
比較的 薄め |
ヘルール継手(Tri-Clamp) | 米国中心に流通。FDA/USDA準拠 |
IDF/ISO(国際) | 酪農・食品 |
メートルベース (例:38mm) |
厚めの 傾向 |
ヘルール継手(似ているが寸法差あり) | 欧州・日本で広く使用。ISO2852など |
横スクロールで表全体が見れます
〔注記〕
・外径は似ていても、肉厚やフェルールの溝形状が異なるため、直接接続は不可
・例えば、3-Aの1.5インチ継手(38.1mm)とISOの38mm継手は見た目が似ていても、わずかな寸法差で漏れや接続不良の原因になる
7. 3-A規格の導入メリット
導入のメリットは次の4つになる。
- ① 製品の安全性向上
- ② 規制対応(FDA・USDA)
- ③ 国際取引での信頼性確保
- ④ HACCPやFSSC22000などの衛生管理システムとの整合性
8. 3-Aサニタリ規格:バルブ・ポンプ関連の主な規格番号一覧
表4.にバルブやポンプに関連する代表的な規格番号を示す。
【規格番号】 | 【名 称】 | 【適用対象】 |
---|---|---|
3A 01-05 | Sanitary Pumps | 食品・乳製品用のサニタリーポンプ全般 |
3A 02-10 | Centrifugal and Positive Rotary Pumps | 遠心ポンプ・ロータリーポンプ |
3A 33-03 | Sanitary Valves | 食品・医薬品用のサニタリーバルブ |
3A 44-03 | Diaphragm Valves | ダイヤフラムバルブ |
3A 68-00 | Ball Valves | ボールバルブ |
3A 85-03 | Double Seat Mix Proof Valves | 二重シートミックスプルーフバルブ(交差汚染防止) |
これらの規格は、洗浄性、材料の安全性、設計の衛生性などが厳しく定められており、CIP(定置洗浄)やSIP(定置滅菌)対応が求められる製品に適用される。
9. 認証取得プロセス(3-Aサニタリ規格)
バルブやポンプでの3-A Sanitary Standards, Inc. (3-A SSI) による認証は、食品と接触する装置の衛生設計を保証するものである。取得には次のようなステップが必要になる。
-
① 設計の適合性確認
・ 装置の表面粗さ(例:Ra ≤ 0.8 µm)
・ 分解・洗浄の容易性
・ 死角や滞留部の排除 -
② 第三者検査(TPV)
・ 3-A SSIが認定する検査機関による評価
・ 設計図・材質証明・洗浄性試験などの提出 -
③ ライセンス取得とマーク表示
・ 認証後、3-Aマークの使用許可が与えられます
・ 製品にマークを表示することで、衛生設計の信頼性を示せます
〔補足〕
EHEDG(European Hygienic Engineering & Design
Group)による認証も国際的に注目されており、特にCIP(定置洗浄)対応機器の評価に強みがある。
3-A
SSIでは、製品が規格に適合しているかどうかを第三者検証(TPV)によって評価する。TPVは、3-A
SSIが公式に認定した検査員(Certified Conformance
Evaluators)によって実施され、製品の設計・材質・洗浄性・分解性などが評価される。
10. 認証取得の実務ポイント
-
① TPV検査員の選定は早めに
製品設計段階で検査員と連携することで、設計変更リスクを低減できる。 -
② 検査対象の図面・材質証明・洗浄性試験データの準備
特に表面粗さ(Ra値)や死角の有無は重点評価項目である。 -
③ 複数規格の同時取得を検討
3-A規格とISO/FSSC/EHEDGの同時取得により、輸出対応力が向上力を図る。
11. 最後に
接続部の規格統一確認、変換継手の有無と材質確認およびCIP/SIP対応可否の検証を考慮することが重要である。
以上