2025/12/16
◇「食品工場Week東京&ドリンクジャパン」視察_2025.12.04
会場:幕張メッセ ホール9~11
主催:
RX Japan株式会社
出展規模:約400社・団体
来場者数:12,173名 (3日間 速報値)
開催期間:2025年12月3日(水)〜5日(金)3日間
両展示会のキーテーマ:「食品工場における社会的・技術的課題を最新テクノロジーで解決と飲料・液状食品の研究開発から製造・品質管理までを網羅」
幕張メッセ展示棟前
- 1. 視察目的:
- 三品産業(食品・医薬品・化粧品)向けに活用が可能なフードテック技術、事例などを展示ブースで直接確認し、導入提案検討に参考となる情報を収集する。また「衛生設計」と「異物混入対策」両セミナーを聴講する。
- 2. 全般的な展示内容:
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「食品工場Week東京」は、食品工場の課題解決をテーマにした総合展示会であり、自動化・省人化、DX、食品衛生、食品ロス対策、職場環境改善など幅広い分野を網羅している。会場では、最新のロボット技術やIoT・AIを活用した生産効率化ソリューション、HACCP対応の衛生管理資材や洗浄・殺菌技術、資源循環やアップサイクルを実現する設備・システムが紹介されていた。また、労働安全や快適な作業環境を支援する製品も展示され、食品メーカーや加工業者が直面する現場課題に対する具体的な解決策を提示する場となっています。セミナーでは最新の法規制や技術動向が解説され、来場者は実務に直結する知識を得られる構成でした。
一方「ドリンクジャパン」は、日本唯一の飲料・液状食品に特化した展示会で、原料・素材から製造、充填、容器・パッケージ、品質管理、殺菌・滅菌技術までを包括的に扱っている。クラフトビールや発酵飲料関連の設備・技術も注目され、ブルワリー支援や新規市場開拓の情報が提供されていた。環境対応型パッケージや機能性素材など、消費者ニーズに応える最新技術が集結し、飲料メーカーや食品メーカーにとって製品開発・製造の最前線を体感できる展示会である。さらに、業界動向やサステナブル技術をテーマにしたセミナーも併催され、来場者は技術革新と市場トレンドを同時に学べる場となっていた。
3. 主な展示トレンド:
両展示会では、共通して自動化・DX、衛生管理、サステナブル技術が大きな展示トレンドとなっていた。食品工場分野では「人手不足解消」「食品ロス削減」「職場環境改善」、飲料分野では「機能性素材」「環境対応パッケージ」「クラフトビール関連技術」が特に注目されていた。
【食品工場Week東京の展示トレンド】
- 自動化・省人化・DX:ロボット、IoT、AIを活用した生産効率化や人手不足対策
- 食品衛生強化:HACCP対応、AI外観検査、洗浄・殺菌技術、クリーン資材
- 食品ロス対策・資源循環:残渣のアップサイクル、リサイクル技術、循環型システム
- 職場環境改善:安全管理、快適な作業環境を支援する設備や資材
- 展示傾向:実機デモや比較検討可能な設備展示、70以上のセミナーで最新動向を紹介
【ドリンクジャパンの展示トレンド】
- 機能性素材・健康志向:水溶化技術によるポリフェノールや機能性成分の新素材
- 製造効率化ソリューション:充填機、醸造設備、品質管理システムの最新技術
- 環境対応パッケージ:リサイクル可能なアルミキャップ、環境配慮型容器
- クラフトビール関連:ブルワリー支援技術、醸造設備、マーケット拡大企画
- サステナブル技術:殺菌・滅菌の非熱処理技術、環境負荷低減型製造プロセス
4. 注目した技術・装置機器・ソリューション
【代表的なメーカーおよび注目製品】
- ① 株式会社 VRAIN Solution: https://vrain.co.jp/
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AI画像認識技術と最新X線技術を融合「AI X線検査機
PX-1000N」
VRAIN Solutionの新製品「AI X線検査機 PX-1000N」は、AI画像認識技術と最新X線技術を融合した高精度な内部欠陥検査装置で、食品業界を主対象に異物混入や内部欠損、数量カウントなど幅広い検査ニーズに対応する。また、同社のAI外観検査システムと連携することで、内部と外部の同時検査を可能にし、検査工程の効率化と省スペース化を実現できることを強調していた。
写真1. 「AI X線検査機 PX-1000N」
PX-1000NはAIとX線技術を融合した高精度・長寿命の内部検査機であり、AI外観検査システムと組み合わせることで内部と外部を同時に検査できる統合ソリューション。食品工場の品質保証と効率化に大きく貢献する最新技術といえる。
- ② 株式会社Closer: https://www.close-r.com
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小袋移載ロボット「PickPacker(ピックパッカー)」
Close(Closer Robotics)がデモ展示していた「PickPacker(ピックパッカー)」は、不定形な小袋(例:めんつゆ小袋など)のバラ積みピッキングを高速・高精度で自動化する小型移載ロボット。食品工場の盛付工程における人手依存を減らし、省人化・効率化を実現することを目的としている。
写真2. 「PickPacker(ピックパッカー)」
「PickPacker」は食品工場の盛付工程に革新をもたらす、業界最速の不定形小袋ピッキングロボットであり、省人化・効率化を強力に支援する次世代ソリューションである。
- ③ 株式会社イシダ+FingerVision: https://www.fingervision.jp/
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ロボットハンドエンドエフェクタ「視触覚センシング技術」搭載ロボット
FingerVisionがイシダと併設出展していた食品盛り付けロボットは、大学発の「視触覚センシング技術」を応用し、不揃いな食材を柔軟に掴んで盛り付けることができる自動化システム。導入のハードルを下げるために、月額25万円から利用可能な「Robot as a Service(RaaS)」プランを提供しており、初期費用ゼロで検証導入から始められるのが特徴となっている。
写真3. 「視触覚センシング技術」搭載ロボット
食品業界では、導入コストの高さ、多品種対応の難しさ、運用体制構築の難しさがロボット導入の大きな障壁とされてきた。FingerVisionはこれらを打破するため、RaaSモデルを採用し「まずは使ってみる」ことを可能にしている。
- ④ プロソニック 株式会社: https://prosonic.co.jp/
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自動機・ロボット搭載対応「超音波フードカッター」
プロソニックが展示していた「超音波フードカッター」は、自動機やロボットに搭載可能な食品専用カッティングシステムで、ケーキやパン、チーズ、揚げ物など崩れやすい食品を美しく均一に切断できるのが特徴である。展示会では、スカラロボットに搭載したデモ実演が行われ、食品工場の自動化・DXに直結する技術として注目されていた。
写真4. 「超音波フードカッター」
プロソニックの「超音波フードカッター」は、食品工場の自動化に適したロボット搭載対応の切断技術であり、美しい断面・衛生性・省人化を同時に実現する次世代ソリューションである。
- ⑤ 株式会社イズミフードマシナリ: https://www.izumifood.shi.co.jp/
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無菌調合システム「アセタン調合」
イズミフードマシナリが紹介していた「アセタン調合」は、同社が得意とする無菌調合システムの一つで、食品や飲料の製造工程において、原料を衛生的かつ効率的に混合・調合するための設備である。従来のバッチ方式に比べて、連続処理による省スペース化・省力化・高い衛生性を実現するのが特徴である。
写真5-1. 無菌調合システム「アセタン調合」
「アセタン調合」はイズミフードマシナリが開発した無菌・連続処理型の調合システムで、食品工場における衛生性・効率性・品質安定性を同時に実現するソリューションである。
写真5-2. 展示ブース「技術・製品紹介パネル(熱交換器)」
写真5-3. 展示ブース「技術・製品紹介パネル(抽出・撹拌)」
その他に、展示ブースでは熱交換器、抽出・撹拌技術などのパネル紹介もされていた。
- ⑥ 株式会社四国総合研究所: https://www.ssken.co.jp/
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iRフレッシュの照射装置「Fkeep」
四国総合研究所が出展していた「iRフレッシュ」の照射装置「Fkeep」は、近赤外光をごく短時間(0.1〜数秒)照射することで青果物の鮮度を保持する世界初の技術を搭載した鮮度保持装置である。従来の低温保存や防カビ剤に比べて低コストかつ環境負荷が少なく、選果ラインや搬送コンベアに簡単に組み込めるのが特徴である。
写真6. iRフレッシュの照射装置「Fkeep」パンフレット
「Fkeep」は四国総合研究所の近赤外光鮮度保持技術「iRフレッシュ」を実装した照射装置で、短時間照射で青果物の腐敗・萎びを抑制し、低コスト・環境負荷低減・簡易導入を実現する次世代鮮度保持ソリューションである。
5. 聴講セミナー
【機械設計から始まる食品安全 ~ISO/EHEDGと実例紹介~】:写真7.(a)
- ① 「食品安全マネジメントシステムにおける機械の衛生設計(ISO/EHEDG)」
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(一社)日本食品機械工業会/長岡技術科学大学 事業部 部長/工学部
非常勤講師
大村 宏之 氏
このセミナー講演「食品安全マネジメントシステムにおける機械の衛生設計(ISO/EHEDG)」では、食品安全の確保は機械設計段階から始まるという視点で、ISO規格やEHEDG(European Hygienic Engineering & Design Group)のガイドラインを基盤にした衛生設計の重要性が解説された。特に、HACCPやISO 22000などの食品安全マネジメントシステムにおいて、衛生設計は前提条件プログラム(PRP)の一部として不可欠であることが強調されていた。
このセミナーでは ISO/EHEDGガイドラインを基盤にした衛生設計の重要性、具体的な設計要件、国際的な認証制度との関係 が解説され、食品安全マネジメントシステムにおける「設計から始まる安全」の考え方を実例とともに示した内容でした。 - ② 「充塡用自動はかりにおける衛生設計の実際」
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(株)イシダ 第一開発部 主任技師
影山 寿晴 氏
「充塡用自動はかりにおける衛生設計の実際」の講演では、食品工場で広く使われる自動充塡はかりを対象に、衛生設計の考え方と具体的な設計事例が紹介されました。ISO規格やEHEDGガイドラインを基盤に、食品安全マネジメントシステムにおける「機械設計段階からの衛生性確保」がテーマになっていた。
この講演は ISO/EHEDGガイドラインを基盤にした自動はかりの衛生設計事例を紹介し、食品安全マネジメントシステムにおける設計段階からの安全確保の重要性を具体的に示したものだった。
【異物混入リスクマネジメントの実践 ~製造現場と機器設計からのアプローチ~】:写真7.(b)
- ① 「異物混入対策」に関する取り組み事例
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(株)ヤクルト本社 生産本部付理事 兼 生産管理部担当部長
久保 昭弘 氏
「異物混入対策」に関する取り組み事例の講演では、食品工場における異物混入リスクをどう管理し、現場と機器設計の両面から防止するかが具体的に紹介された。
この講演では 現場管理(衛生・ゾーニング・教育)と機器設計(衛生設計・検知技術・材料選定)を組み合わせた異物混入対策事例が紹介され、食品安全マネジメントにおける「実践的リスクマネジメント」の具体像が示された。 - ② 「食品工場における異物混入防止 -異物除去概要・サニタリ機器-」
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岩井機械工業(株) 技術開発本部 技術センター 課長
田中 一道 氏
「食品工場における異物混入防止 ―異物除去概要・サニタリ機器―」の講演では、食品工場における異物混入防止を**「異物除去技術」と「サニタリ機器設計」**の両面から体系的に解説する内容でした。
この講演では 異物除去技術の体系的整理と、サニタリ機器設計による異物混入防止の具体事例が紹介され、食品工場における異物リスクマネジメントの「現場+設計」両面からの実践的手法が示さた。
写真7. セミナー会場案内
6. 最後に
食品工場Week東京は、食品工場の課題解決をテーマに、自動化・DX、食品衛生、食品ロス対策、職場環境改善など幅広い分野を網羅した展示会でした。最新のロボット技術やAI検査、資源循環ソリューションが集まり、食品安全と効率化を両立する実践的な提案が多く示されていた。
ドリンクジャパンは、日本唯一の飲料・液状食品特化展示会として、原料・製造設備・容器パッケージ・品質管理・クラフトビール関連技術までを包括。機能性素材や環境対応パッケージ、非熱殺菌技術などが注目され、飲料業界の最新動向とサステナブルな製造革新を体感できる場となった。
以上
【参考引用先・参考レポート】
1. 食品工場Week東京HP:
https://www.foodtechjapan.jp/ftw/ja-jp.html
2. ドリンクジャパンHP:
https://www.drinkjapan.jp/ja-jp.html
3. 展示会レポート「第4回
フードテックジャパン東京」視察 木本技術士事務所HP:
https://www.kimoto-proeng.com/exhibition/3939