『日産「GT-R」生産終了』

 8月26日ニュースで日産自動車は代表的なスポーツカー「GT-R」の生産を終えることが伝えられた。栃木県の工場で最後の1台が完成し生産終了となった。日産にとって逆風となった環境や安全に関わる規制の厳格化によって開発コストが膨らんだことなどから生産の終了を決めたと報じられた。

1970年代に「ハコスカ」や「ケンメリ」の愛称で呼ばれた「スカイライン」のスポーツモデル「スカイラインGT-R」であるが、80年代から90年代にかけて新しいモデルが発表された後、その後継車種として開発がスタートし、2007年に登場したのが「GT-R」である。強力なV6ターボエンジンと四輪駆動により、日常での移動だけでなく、サーキットでも高い性能を発揮し注目を集めた。

エンジンは「匠」と呼ばれる職人が1基ずつ手作業で組み立て、日産のフラッグシップモデルとして世界的な人気を集め、これまでに約4万8000台が生産され、国内では1万7000台余りが販売された。しかし、騒音や環境、安全に関わる規制などの厳格化によって新たな設計や部品が必要となり、開発コストが膨らんだ。部品の調達も難しくなったことから日産は生産を終えることを決め、18年間の歴史に幕を閉じることになった。

「GT-R」以外にも日本の自動車メーカー各社では環境規制などを理由にスポーツカーの生産を終了したケースが過去にある。例えば、三菱自動車工業は2015年に「ランサーエボリューション」、SUBARUは2020年に「WRX STI」、ホンダも2022年に「NSX」の生産を終えている。「環境関連の規制のほか、安全装備やセキュリティー対策などへの対応が開発コストを押し上げる要因になった。

大規模な開発投資が難しくなる中で、次の開発ステップを断念せざるをえないケースが出てきている。一方で、車を購入する消費者の動向については子育て世代は使い勝手を重視して、ミニバンやSUV、3列シートの車などが人気になっている。ニーズの画一化が進み、スタイルや走りよりは現実的な使い勝手を重視する人が増えてきているかもしれない。

開発や経営の合理化でスポーツカーが失われるのは多様性の面からいうと残念なことで、いろんな車種が世の中に存在することがマーケットの大きさや魅力につながる。現在も生産が継続されているトヨタの「GR86」や日産の「フェアレディZ」、マツダの「ロードスター」などは生産が継続することを望む。

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