2026/08/17
1.シュードモナスとは
シュードモナスは、Pseudomonas 属に属する細菌の総称で、グラム陰性の桿菌であり、酸素を好む好気性菌である。土壌、水、植物、動物など自然界のあらゆる場所に広く分布し、環境常在菌として知られている。
多くの種があり、食品分野では特に低温で増殖できる「低温性」であることが重要である。冷蔵温度でも増殖可能なため、冷蔵食品や冷却水、食品工場の湿った場所で問題になりやすい菌群である。
2.食品分野での特徴
シュードモナスは「腐敗菌」としての性格が強く、牛乳や乳製品、食肉、魚介類、野菜、果物など多様な食品で腐敗の主役になることが多いとされている。
代表的な性質は次の通りである。
- 低温でもよく増殖し、冷蔵食品でも菌数が増えやすい
- タンパク質や脂質を分解し、悪臭や粘り、変色などの品質劣化を引き起こす
- 色素を産生する株もあり、青緑色などの着色を伴う場合がある
食肉の調査では、市販肉のほぼすべてからシュードモナス属細菌が検出され、多くが低温で生育する菌であったと報告されている。
3.バイオフィルムとの関係
シュードモナス属の多くは、設備表面に付着しバイオフィルムを形成しやすいことが知られています。湿潤な環境と栄養があれば、ステンレスや樹脂などの表面に定着し、粘性のあるスライム状の層をつくる。
このバイオフィルムは次のような問題を引き起こす。
- 洗浄や消毒剤に対する抵抗性が高まり、除去が難しい
- スライムの剥離によって製品や他の設備への二次汚染源になる
- 色素や酵素の産生により、食品や水の外観・臭いを悪化させる
食品工場では、冷却水槽、充填機周辺、コンベヤ、排水溝、冷蔵庫内面など湿りやすい箇所にバイオフィルムを形成し、冷蔵食品の変敗に関与する事例が報告されている。
4.病原性との関係
シュードモナス属の中には環境腐敗菌として主に問題になる種と、医療現場などで日和見感染症を起こす種がある。
- 食品分野でよく見られる Pseudomonas fluorescens などは、主に腐敗や品質劣化の原因菌として位置づけられている。
- 一方、Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)は、免疫力の低下した人などで日和見感染症を引き起こすことがあり、医療関連感染の原因菌として重要視されている。湿潤環境を好み、消毒にも比較的強い菌として知られている。食品衛生の観点では、多くの場合「食中毒菌」というより「腐敗や変敗を起こす菌」として問題視されるが、製造環境で緑膿菌が増えやすい状況は好ましくなく、特に要注意者向け食品では慎重な管理が求められる。
5.食品工場での管理の考え方
食品工場でシュードモナスを管理する上では、次の点が重要になる。
- 冷蔵工程や冷却水ライン、湿潤箇所を中心に、バイオフィルムの形成を想定した洗浄・殺菌条件を設計する
- スライム状汚れや色付きのヌメリなど、シュードモナスが関与しやすい汚れを見逃さない
- 低温下でも活性を持つ酵素系を考慮し、冷蔵保管中の品質変化をモニタリングする
- 必要に応じて、選択培地などを用いたモニタリングで、シュードモナス属の存在状況を把握する
腐敗菌としての側面が強い一方で、植物病害の抑制など有用に利用されるシュードモナスも報告されており、環境中に広く存在する多様なグループであることを理解しておくと、リスク評価や説明がしやすくなる。
以上
【参考引用先】
- 1.「冷蔵食品から検出されたPseudomonas属細菌について」齋藤美香 他
- https://www.pref.gunma.jp/uploaded/attachment/150358.pdf
- 2.「食肉の生菌数および分離したPseudomonas属細菌の性質」日本食品保蔵科学会誌 2005年31巻3号 p.117-120
- 3.「細菌・ウイルスによる食中毒」消費者庁HP
- https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/food_safety/food_safety_portal/microorganism_virus/
- 4. 技術レポート「乳製品工場におけるバイオフィルムと生菌数バラつきの関係」木本技術士事務所HP
- https://www.kimoto-proeng.com/report/6576
- 5. 技術用語解説93「バイオフィルム(Biofilm)」木本技術士事務所HP
- https://www.kimoto-proeng.com/keyword/6592