Focus 2:視察レポート『FOOMA JAPAN 2026 工程別技術トレンド』

Focus 2:視察レポート『FOOMA JAPAN 2026 工程別技術トレンド』

東京ビッグサイト展示棟エントランス

1.はじめに
 FOOMA JAPAN 2026は、食品製造の全工程が同時多発的に進化していることを示した展示会だった。原料処理から調理、充填、包装、検査、出荷まで、各工程で“専業メーカーの技術深化”と“自動化・品質DXの加速”が明確に表れ、もはや単一設備の比較では捉えきれない段階に入っている。
 本レポートでは、視察を通じて得られた工程別の注目技術と競合メーカーの特徴を整理し、2026年以降の食品工場が向かうべき方向性について考察する。


2.工程別技術トレンドレポート(競合メーカー比較)
2-2.調理・加工工程

  1.  ● 日清エンジニアリング:
    強み: 粉体工場全体のプロセス設計(サイロ・混合・輸送・計量)。
    特徴: 粉体特性(流動性・付着性・粒度)を踏まえたライン設計、大規模粉体工場向け。
  2.  ● 赤武エンジニアリング:
    強み: 粉体供給・微量計量・スクリュー供給機。
    特徴: ブリッジ・ラットホール対策、粘着性粉体や微量原料の安定供給に特化。
    トレンド要約:原料工程は「工場全体最適化(日清)」と「供給安定化(赤武)」の二層で高度化し、粉体特性を前提にした設計が標準化しつつある。

表1.日清エンジニアリング × 赤武エンジニアリングの比較

観点 日清エンジニアリング 赤武エンジニアリング
技術思想 粉体工場全体のプロセス設計 粉体供給・微量計量の専門装置
得意領域 大規模粉体ライン 微量供給・粘着粉体
粉体特性対応 ◎(科学的解析) ◎(供給安定性)
装置構成 サイロ・混合・輸送・計量 スクリュー供給・ホッパー
規模 大規模〜中規模 中規模〜小規模
食品分野 小麦粉・粉末飲料 調味料・粉末添加物
強み 工場全体最適化 現場課題の解決力

2-2.調理・加工工程

  1.  ● カジワラ:
    強み: 高粘度・高固形物対応の撹拌調理器。
    特徴: スチームジャケット+特殊撹拌翼で焦げ付き抑制、カレー・ソース・あんなどの“味と食感の再現性”に直結。
  2.  ● 品川工業所:
    強み: 卵加工・連続加熱ライン。
    特徴: 玉子焼き・スクランブルエッグなどの連続生産に強く、惣菜・卵製品の大量生産向け。
    トレンド要約:調理工程は「高粘度バッチ調理(カジワラ)」と「連続加熱・卵加工(品川)」の棲み分けが明確で、品質再現性と連続生産性の両立がテーマになっている。

表2.カジワラ × 品川工業所の比較

観点 カジワラ 品川工業所
技術思想 高粘度・均一調理 連続加熱・卵加工
加熱方式 スチームジャケット 蒸気・焼成
粘度対応
連続生産 △(バッチ)
得意食品 カレー・ソース・あん 卵加工・惣菜
強み 品質再現性 大量生産性

2-3.包餡・成形工程

  1.  ● レオン自動機:
    強み: 世界トップクラスの包餡技術。
    特徴: 2重・3重包餡、多品種・高速生産、和菓子・中華・惣菜・パンまで対応。
  2.  ● コパード:
    強み: 小〜中規模向けの柔軟な包餡機。
    特徴: 段替え容易・操作性重視、小ロット・多品種ラインに適合。
    トレンド要約:包餡工程は「大量生産・高精度(レオン)」と「多品種・小ロット(コパード)」で二極化し、生産規模に応じた設備選定が重要になっている。

表3.レオン自動機 × コパードの比較

観点 レオン自動機 コパード
技術思想 高速・高精度・多品種 使いやすさ・段替え
生産量 ◎(大量生産) ○(中小規模)
包餡精度
多品種対応
操作性
最適用途 大規模食品工場 惣菜・ベーカリー

2-4.充填工程

  1.  ● 四国化工機(リニア搬送式オーバルタイプ充填機):
    強み: 高速・多品種・省スペース。
    特徴: リニア搬送でホルダー個別制御、型替え迅速、乳製品・飲料など高速ライン向け。
  2.  ● メイワ(オートチェンジャー付容量式充填装置):
    強み: 高粘度対応・段替え自動化。
    特徴: 容量式充填+オートチェンジャーでドレッシング・ソースなど粘体食品の多品種ラインに適合。
    トレンド要約:充填工程は「高速・リニア搬送(四国化工機)」と「粘度対応・段替え自動化(メイワ)」の両軸で進化し、多品種少量と中〜大量生産をどう切り分けるかが設計ポイント。

表4.四国化工機 × メイワの比較

観点 四国化工機 メイワ
技術基盤 リニア搬送(高速) 容量式(粘度対応)
強み 高速・省スペース・型替え迅速 段替え自動化・高粘度
生産量
多品種対応
メンテ性 チェーンレス 洗浄性重視
最適用途 乳製品・飲料 ドレッシング・ソース・調味料

2-5.包装工程

  1.  ● 大森機械工業(NSW-7000 高速横ピロー包装機):
    強み: 超高速・汎用性。
    特徴: 菓子・パン・スナックなどの大量生産ラインの“王道ピロー”。
  2.  ● フジキカイ(FUW3400 高速超音波シール包装機):
    強み:
    超音波シールによる省エネ・高品質シール。
    特徴: 油・水分が付着してもシール強度が安定、惣菜・冷凍食品向け。
  3.  ● PACRAFT(旧:東洋自動機)/ 古川製作所(ロータリー式パウチ充填包装):
    PACRAFT: レトルト・液体・粘体の高衛生・高耐久ライン。
    古川製作所: スタンドパウチ・チャック袋など多品種少量向け。
    トレンド要約:包装工程は「超高速ピロー(大森)」「難包装対応・超音波(フジキカイ)」「レトルト本格ライン(PACRAFT)」「多品種パウチ(古川製作所)」の4象限で整理でき、製品特性に応じた組み合わせ設計が鍵。

表5.大森機械工業 × フジキカイ × PACRAFT × 古川製作所の比較

観点 大森機械工業 フジキカイ PACRAFT 古川製作所
技術基盤 高速ピロー 超音波シール レトルト・液体パウチ 多品種パウチ
強み 超高速・汎用性 難包装・省エネ 高衛生・高耐久 袋形状対応
生産量
シール安定性
適性食品 菓子・パン 惣菜・冷凍食品 カレー・スープ 調味料・惣菜
段替え

2-6.計量・検査工程

  1.  ● イシダ:
    強み: マルチヘッドスケール+包装+検査の統合ライン。
    特徴: 菓子・冷凍食品・惣菜の計量〜包装一貫ラインを構築。
  2.  ● 大和製衡:
    強み: 計量精度とコストバランス。
    特徴: 中小工場向けのマルチヘッド・ウェイトチェッカー。
  3.  ● アンリツ:
    強み: X線・金属検出による異物検査。
    特徴: 異物混入リスクの高いラインでの品質保証の中核。
    トレンド要約:計量・検査工程は「計量・包装統合(イシダ)」「コスト重視計量(大和製衡)」「高度異物検査(アンリツ)」の役割分担が明確で、品質保証ラインの“組み合わせ設計”が重要。

表6.イシダ × 大和製衡 × アンリツの比較

観点 イシダ 大和製衡 アンリツ
技術思想 計量+包装+検査の統合 計量精度×コスト 異物検査の科学化
マルチヘッド
包装ライン
X線検査 ◎(最強)
金属検出
適性食品 菓子・冷凍食品 惣菜・中小工場 全食品(異物検査)
強み 一貫ライン構築 コストバランス 品質保証の中核

2-7.出荷・物流工程(ロボット・パレタイジング)

  1.  ● ファナック/安川電機:
    強み: 高速仕分け・箱詰め・パレタイジング。
    特徴: 画像認識+汎用ロボットで大規模ラインの後工程を自動化。
  2.  ● TechMagic:
    強み: 食品物流特化の箱詰め・積付ロボット。
    特徴: 多品種・不定形箱のパレタイジングを中小工場でも導入しやすい形で提供。
    トレンド要約:出荷工程は「汎用ロボット(ファナック・安川)」と「食品物流特化(TechMagic)」の二層で自動化が進み、人手依存だったパレタイジングが“標準的自動化対象”になりつつある。

表7.ファナック × 安川電機 × TechMagicの比較

観点 ファナック 安川電機 TechMagic
技術思想 画像認識+制御統合 高速・高精度 物流特化
ピッキング
仕分け
箱詰め
パレタイジング
調理・盛付 ×
適性 大規模後工程 中工程 出荷・物流
強み 大規模ライン 食品仕様ロボット 箱積付AI

2-8.総括:FOOMA JAPAN 2026 が示す食品工場の方向性

工程ごとに “専業メーカー × 競合技術” が明確に立ち上がり、設備選定は「1社で全部」ではなく 工程別の最適組み合わせが前提になっている。
自動化・品質保証・省人化は、原料(粉体)→調理→充填→包装→計量・検査→出荷の全工程で同時進行しており、2026年以降の食品工場は “工程単位の最適化”から“ライン全体の再設計”へとシフトしていくと考えられる。

3.2026年→2030年 技術ロードマップ
 工程別 × 競合メーカー比較 を基に、2026 → 2030 食品工場技術ロードマップ(工程別 × 技術進化 × 主要プレイヤー) を示す。


◆ 2026 → 2030 食品工場 技術ロードマップ

― FOOMA JAPAN 2026 を起点とした中期技術予測 ―


3-1.原料・粉体ハンドリング(2026 → 2030)
■ 2026:粉体特性に基づく「安定供給・安定輸送」が主テーマ
 ● 日清エンジ:粉体工場全体の最適化(サイロ・混合・輸送)
 ● 赤武:微量供給・粘着粉体の安定化
■ 2027~2028:粉体デジタルツインの普及
 ● 粉体流動のCFD解析が標準化
 ● 粉体詰まり・偏析の予測モデルが実装
 ● 粉体ラインの“事前検証”が可能に
■ 2029~2030:粉体工場の自律制御へ
 ● 粉体供給量・輸送圧・混合条件をAIが自動調整
 ● 粉体特性のオンライン計測(粒度・水分)
 ● 粉体工場の完全自動化ラインが登場


3-2.調理・加工(2026 → 2030)
■ 2026:高粘度・高固形物の均一調理が主戦場
 ● カジワラ:高粘度調理の品質再現性
 ● 品川工業所:卵加工・連続加熱ライン
■ 2027~2028:調理条件のモデル化(熱・流動・粘度)
 ● 温度・粘度・撹拌トルクのリアルタイム計測
 ● “狙った食感”を再現する調理パラメータ化
 ● 連続調理ラインの普及
■ 2029~2030:AI調理ラインの実用化
 ● AIがレシピに応じて撹拌・加熱条件を自動最適化
 ● 食感・粘度のオンライン測定
 ● 調理工程の完全自動化(人ゼロ化)


3-3.包餡・成形(2026 → 2030) ■ 2026:高速・高精度(レオン) vs 多品種・小ロット(コパード)
 ● 包餡精度・段替え性が主テーマ
■ 2027~2028:柔軟ハンド × 画像認識の導入
 ● 不定形食品の包餡・成形が可能に
 ● 生地状態(硬さ・水分)の自動補正
■ 2029~2030:包餡の完全自動化ライン
 ● 包餡 → 成形 → 整列 → 包装まで一体化
 ● AIが生地状態を見て自動補正
 ● “人の手の包餡”を完全再現


3-4.充填(2026 → 2030)
■ 2026:高速(四国化工機) vs 粘度対応・段替え(メイワ)
 ● リニア搬送と容量式の二極化
■ 2027~2028:粘度・流動性のオンライン測定
 ● 粘度変動に応じて充填条件を自動調整
 ● 充填量のAI補正
■ 2029~2030:多品種ラインの完全自動段替え
 ● ノズル交換・洗浄・設定変更が自動化
 ● “段替えゼロ時間”の充填ラインが登場


3-5.包装(2026 → 2030)
■ 2026:高速(大森)・難包装(フジキカイ)・レトルト(PACRAFT)・多品種(古川)
 ● 包装方式の多様化がピーク
\ ■ 2027~2028:フィルム最適化 × AIシール制御
 ● フィルム特性をAIが学習
 ● シール温度・圧力を自動調整
 ● 超音波シールの普及拡大
■ 2029~2030:包装ラインの自律制御
 ● 包装不良の自動検知・自動補正
 ● 包装材の脱プラ・紙化に対応した新シール技術
 ● 包装ラインの“完全無人化”が現実に


3-6.計量・検査(2026 → 2030)
■ 2026:計量(イシダ・大和製衡) × 異物検査(アンリツ)
 ● 計量・包装・検査の統合ラインが主流
■ 2027~2028:AI検査の本格普及
 ● X線画像のAI解析
 ● 異物・欠品・形状不良の自動分類
 ● 計量データと品質データの統合管理
■ 2029~2030:品質保証の自動化
 ● 異物検査の“誤検出ゼロ”に近づく
 ● 計量・包装・検査の完全統合ライン
 ● 工場全体の品質データがリアルタイムで可視化


3-7.出荷・物流(2026 → 2030)
■ 2026:
 ● ファナック:高速仕分け・パレタイジング
 ● 安川電機:高速ピッキング
■ 2027~2028:物流ロボットの標準化
 ● 多品種・不定形箱の自動積付
 ● 画像認識 × 積付アルゴリズムの高度化
 ● AGV/AMRとの連携
■ 2029~2030:出荷工程の完全自動化
 ● パレタイジング → ラッピング → 出荷まで無人化
 ● ロボットが自律的に積付パターンを生成
 ● 物流センターとのデータ連携で“自動出荷”


3-8.2026 → 2030 総括:食品工場は「自律制御 × 無人化」へ
 1. 工程ごとの最適化(2026)
 2. AI・センシングによる自動補正(2027–2028)
 3. ライン全体の自律制御(2029–2030)

食品工場は、 “人が操作する工場” → “自律的に動く工場”へと進化して行くと考える。


4.最後に
FOOMA JAPAN 2026 の視察を通じて明らかになったのは、食品工場が“部分最適”から“工程統合・自律制御”へと確実に進み始めていることである。競合メーカーの比較からも、各社が強みを持つ領域は明確であり、今後は工程ごとの最適技術を組み合わせた“ライン全体の再設計”が競争力の源泉となると考える。

本レポートが、2026〜2030年の設備投資・技術選定・工場改革の指針として、現場と経営の意思決定を支える一助となれば幸いである。


以上