2026/07/06
『果肉入り果汁飲料の殺菌機導入計画に伴う生産工程設計』
“Production process design in conjunction with the introduction of a
sterilization machine for fruit juice beverages containing fruit pulp.”
果肉入りジュースは、プレート単独だと無理が出やすい領域なので、チューブラーとの組み合わせで設計の考え方を整理する。
1.前提条件のイメージ
まず代表例として次のような製品を想定。
- 製品:オレンジパルプ入りジュース
- パルプ粒径:最大 3〜5 mm 程度
- 粘度:水よりやや高い程度(高糖度だとさらに上昇)
- 殺菌条件:例えば 95〜100 ℃、数十秒ホールド後、ホットパックまたはアセプティック充填
粒径と粘度の時点で「製品側はチューブラー優位」が基本になる。
2. チューブラー側の標準構成
果肉入りジュースでは、製品側はチューブラーが前提。
(1)典型的な構成
- ・多管式または「チューブ・イン・チューブ」型の熱交換器
- ・チューブ径は「最大果肉粒径の 8〜10 倍以上」を目安に選定
-
・製品側:チューブ内側を流す
加熱媒体:シェル側に温水やスチームを流す - ・保持部:加熱後に同径またはやや太めのホールディングチューブで F値確保
- ・冷却部:同じくチューブラーで段階冷却(水 → 冷水 → 氷水など)
(2)設計上のポイント
- ・粒子が均一に流れるよう、層流になりすぎない流速レンジを確保
- ・圧力損失とポンプ容量のバランス(充填機まで押し切れるか)
- ・CIP 時にはスラグ流にならないような洗浄流速を確保
3. プレート式を使うとしたら「熱回収・予熱」だけ
果肉入りジュースでは、プレート式熱交換器は通常、以下のような使い方になる。
(1)役割
- ・濾過済みの“清澄ジュース部分”の予熱・冷却
- ・洗浄液(CIP)用の加熱・冷却
- ・場合によっては、パルプを含まないシロップやベース液の熱処理
(2)なぜ製品本体の殺菌には使いにくいか
- ・プレートの流路は狭く、果肉粒が噛んで目詰まりしやすい
- ・粒と液の加熱がアンバランスになりやすく、F値設計・バリデーションが難しい
- ・高糖度+酸性でスケールやカラメル化が起こりやすく、CIP 頻度が増える
このため、果肉入りの「最終製品流路」をプレートに通さない構成が一般的。
4. 果肉入りジュースUHTラインのモデル比較
A案:プレート+チューブ ハイブリッド
主な流れのイメージ(ベース濃縮とパルプを別扱いする場合)
- ① ベース濃縮ジュースをプレート式で予熱(高効率な熱回収)
- ② 別ラインでパルプを温水中で軽く予熱、あるいは未加熱のまま混合点へ送液
- ③ ミキサー手前でベースとパルプを混合
- ④ 混合後の製品をチューブラーで殺菌加熱+ホールディング
- ⑤ チューブラーで段階冷却し、アセプティックタンクへ
この構成では、プレートは「熱回収担当」、チューブラーは「最終製品担当」という役割分担。
B案:製品すべてチューブラーで処理
よりシンプルに、
- ・予熱〜殺菌〜冷却まで、すべてチューブラーで構成
とするパターン。
- ・熱効率は A案よりやや劣るが、製品経路はシンプルで設計・バリデーションがわかりやすい
- ・小〜中規模ラインに向く構成
5. 果肉入りジュースにおけるプレート/チューブラーの使い分け
表1. にプレート式とチューブラー式の使い分けについて整理して示す。
表1. プレート/チューブラーの使い分け
| 観点 | プレート式熱交換器 | チューブラー式熱交換器 |
|---|---|---|
| 製品流路 | 基本は通さないか、パルプ除去済みのベース液のみ | 果肉入り最終製品を通すメイン系統 |
| 主な役割 | 予熱・熱回収、清澄液処理、CIP 加熱 | 殺菌加熱、保持、冷却の全工程 |
| 長所 | 高い熱回収率、コンパクト、洗浄しやすい | 粒・繊維・高粘度に強く、目詰まりリスクが低い |
| 短所 | 粒による閉塞リスク、粒の温度管理が難しい | プレートより大型になりがち、設備コスト増 |
| 適するケース | ベース液が清澄、粒は後混合か別ルート処理 | 果肉入り製品を一括で殺菌したい場合 |
6. 工程設計における実務での決め方のステップ
果肉入りジュース用の熱交換方式を決めるなら、次の順で考えると整理しやすい。
- ① 最大粒径と想定固形分比率を決める
- ② 粘度曲線(温度別)をおおまかに押さえる
- ③ 「ベース液とパルプを分けて処理するか、一括処理か」を決める
- ④ 熱回収率目標と CIP インターバル(汚れやすさ)を設定する
- ⑤ それに応じて「プレートはどこまで入れるか」「チューブ径をどこまで太くするか」を決める
7. 仮前提条件の設定で設計
たとえば、仮に日産40〜50トンで果肉3〜5 mm
と前提条件を設定。
プレート式とチューブラーの「現実的な棲み分け」を数字感も含めて設計する。
【前提条件の整理】
- 日産量:40〜50 t/日(ここでは 45 t/日を代表値とする)
- 24時間運転換算:45,000 kg ÷ 24 h ≒ 1,875 kg/h(約 1.9 t/h)
- 2直16時間運転なら:約 2.8 t/h
- 果肉粒径:最大 3〜5 mm
- 製品:オレンジパルプ入りジュース
- 想定殺菌条件:95〜100 ℃、数十秒ホールド後ホットパックまたはアセプティック
この規模と粒径なら、機種選定としては「チューブラーがメイン+プレートは熱回収補助」が基本ライン。
(1)チューブラー側:必要能力のイメージ
① チューブ径の目安
- ・一般的な果肉入り飲料では、「粒径の 8〜10 倍以上のチューブ内径」を取るのが安全側である。
- ・粒径 5 mm を最大とすると、チューブ内径 40〜50 mm クラスが目安。
実務では、
- ・呼び32A(外径42.7mm)や 呼び40A(外径48.6mm)のステンレス鋼管クラスの多管式を複数本束ねて、必要能力を出す構成が典型。
- ・多管式は「外径基準」で見積もりたいのか、「有効伝熱面としての内径基準」で合わせたいのかで設計の仕方が変わるので注意が必要。
② 処理量から見た段数イメージ
- ・1.9〜2.8 t/h レベルであれば、40〜50 mm 級チューブを数十本束ねた多管式を「予熱/加熱/保温/冷却」で数段構成にするイメージ。
例(ここでのイメージ)
- ・予熱段:多管式チューブラー(製品 vs 温水)
- ・本加熱段:多管式チューブラー(製品 vs 高温温水/蒸気)
- ・ホールディング:同径ホールディングチューブ
- ・冷却段:多管式チューブラー(製品 vs 冷却水 → 氷水)
(2)プレート式の役割:熱回収と周辺のみ
この条件だと、製品(果肉入り)をプレートに通すのはプレート間隙が小さくほぼ無理である。
① プレート式の主な使いどころ
- ・濃縮オレンジ果汁やシロップの予熱・冷却パルプを含まないベース部分だけをプレートに通して高効率に熱回収。
- ・CIP 洗浄液の加熱・冷却用
- ・必要なら、「ベース液だけプレートで HTST → 後段でパルプ混合 → チューブラーで再加熱短時間殺菌」という 2段殺菌的な構成も検討余地あり。
② こうしない方がよいパターン
- ・果肉入り最終製品をそのままプレートに通す → 3〜5 mm 粒で日量 40〜50 t クラスだと果肉が流せない(粒詰まり・ファウリング発生)ので現実的ではない。
(3)推奨ライン構成イメージ
① モデル構成
前段:調合〜脱気
- ・調合タンク(ベース液+パルプ)
- ・インラインミキサー(必要なら)
- ・真空脱気装置(溶存空気除去)
熱交換・殺菌部
- ・予熱チューブラー:60〜70 ℃程度まで昇温(温水との熱交換)
- ・本加熱チューブラー:95〜100 ℃まで昇温(温水/蒸気温水)
- ・ホールディングチューブ:数十秒〜1分程度の保持時間
- ・冷却チューブラー:一段目:40〜50 ℃まで(温水との熱回収)→ 二段目:20〜30 ℃まで(冷水/氷水)
その後
- ・アセプティックタンク
- ・アセプティック充填機(PET/紙容器など)
② ここにプレートをどう入れるか
- ・パルプなしの濃縮果汁・シロップライン → プレート式で高効率予熱/熱回収
- ・CIP → プレート式でアルカリ・酸・熱水を加熱し、チューブラー系を洗浄
「製品本流=チューブ」「ベース液・CIP=プレート」という明確な役割分担にするのが堅実。
(4)この条件でのプレート vs チューブラーの整理
上記のこの条件を基に表2.にプレート式 vs チューブ式について整理して示す。
表2. プレート vs チューブラーの整理
| 項目 | プレート | チューブラー |
|---|---|---|
| 日産 40〜50 t/パルプ3〜5 mm | 製品本流には基本不向き | 製品本流の必須選択肢 |
| 役割 | ベース液、CIP、熱回収 | 予熱〜本加熱〜保持〜冷却 |
| 設備規模感 | 比較的小型 | 40〜50 mm 級多管式を数段構成 |
| リスク | 目詰まり、頻繁CIP | 設備費・スペースやや増加 |
8. 概略仕様の具体化
24時間連続運転+アセプティック+パルプ20%、「製品前提“飲みやすさ”を崩さない設計」をポイントに製品設計。
(1)前提条件の再整理
- ・日産量: 45t/日
- ・運転:24 h 連続(CIP は別枠で設定)
- ・瞬時能力:約 1.9 t/h(1,875 kg/h)
- ・製品:オレンジパルプ入りジュース
- ・パルプ配合:20%、粒径 3〜5 mm
- ・食感:ストローでも飲みやすいレベル(粒は感じるが“ゴロゴロ”までは不要)
- ・充填:無菌タンク経由アセプティック充填
(2)熱交換方式の結論
① 製品本流
- ・チューブラーをメイン採用
- ・内径 40〜50 mm クラスの多管式チューブラーを複数段
粒径 5 mm × 8〜10 ≒ 40〜50 mm で安全側
② 役割
- ・予熱 → 本加熱 → ホールディング → 冷却をすべてチューブラーで構成
③ プレート式
- ・製品本流には通さない
- ・使うのは以下の用途
- ○ 濃縮果汁/シロップなどパルプを含まないベース液の予熱・冷却
- ○ CIP 洗浄液の加熱・冷却
- ○ 必要なら「清澄ジュース HTST」用ライン
(3)概略プロセスフロー案(アセプティック対応)
① 前処理・調合
- ・ベース濃縮果汁+水+糖液を調合タンクで混合
- ・パルプを別タンクから計量投入し、軽くミキシング
- ・真空脱気装置で溶存空気除去(泡と酸化抑制)
② 殺菌系(すべてチューブラー想定)
目安プロファイル案(飲みやすい食感を残す前提)
- ・予熱チューブラー
- ○ 入口:20 ℃前後
- ○ 出口:65〜70 ℃
- ・本加熱チューブラー
- ○ 入口:70 ℃ → 出口:95〜98 ℃
- ・ホールディングチューブ
- ○ 95〜98 ℃で 20〜40 秒程度保持
- ○ F値は製品設計・規格次第で最終決定
- ・冷却チューブラー
- ○ 一段目:95〜98 → 50 ℃(温水による熱回収)
- ○ 二段目:50 → 25〜30 ℃(冷水/氷水)
- ・その後、アセプティックタンクへ送液し、無菌充填
③ ポイント
- ・温度は「果肉の食感を崩しすぎないギリギリライン」で調整
- ・保持時間と温度の組み合わせで微生物指標(酵母・カビ・耐熱菌)に必要な F値を確保
(4)「飲みやすい食感」側からの設計ポイント
- ・パルプ20%でも、粒径 3〜5 mm +ストロー通過を意識するなら
- ○ 過度な加熱で果肉が崩れて“ドロドロ”にならないよう、「温度は高め・時間は短め」の方向で調整
- ・チューブ内の流速は
- ○ 速すぎると滞留が不均一になり F値バラつき
- ○ 遅すぎると粒が沈んで滞留しやすい → ここはポンプ選定+チューブ径の組み合わせで詰める
9.プレート vs チューブラーの最終設計(この条件)組み合わせ
表3.にプレート vs チューブラーの最終設計を以下にまとめる。
表3. プレート vs チューブラーの最終設計
| 項目 | プレート | チューブラー |
|---|---|---|
| 製品(果肉20%、3〜5 mm) | 通さない(ベース液のみ) | 本流全工程を担当 |
| 能力帯 | ベース液・CIP 用なので小さめ | 約 1.9 t/h を24h連続処理 |
| メリット | 高効率熱回収、CIP加熱に有利 | 粒・粘度・連続運転に強い |
| デメリット | 粒詰まり・ファウリング懸念 | 設備コスト・スペース増 |
果実のパルプや固形物に対しては、チューブラー式熱交換器を用いる。プレート式熱交換器は、補助的に加熱・冷却装置としてラインに組み込み構成する。工程設計を考える場合は、使い分けるか、統一するか、前提条件を基に全体の工程を考慮して検討するのが最善である。
以上