2026/02/16
『食品機械の衛生設計 7原則(EHEDG)と 俯瞰するJIS B 9650-2の基本思想』
“Seven principles of hygienic design for food machinery (EHEDG) and the
basic concepts of JIS B 9650-2”
1. はじめに
食品機械の衛生設計7原則(EHEDG)は、食品製造設備を「汚染を防ぎ、洗浄しやすく、微生物が繁殖しない構造」にするための基本思想をまとめたものです。ポイントは“機械そのものが衛生リスクを生まない設計”を徹底することにある。
2. 衛生設計7原則(概要)
- ① 製品接触面の安全性
- 食品と触れる部分は腐食せず、化学的に安定し、洗浄剤に耐える材料を使用する。
- ② 洗浄しやすい形状
- 角や隙間をなくし、残渣が溜まらない滑らかな構造とする。
- ③ 液体が滞留しない排水性
- 傾斜や排水経路を確保し、洗浄後に水が残らないようにする。
- ④ 分解・点検の容易性
- 必要な部位は工具なしで分解でき、内部まで確実に洗浄・確認できる。
- ⑤ 外部構造の衛生性
- 製品非接触部も汚れが溜まらず、清掃しやすい設計とする。
- ⑥ プロセスとの整合性
- CIP/SIPなどの洗浄・殺菌方式と設備構造が矛盾しないように設計する。
- ⑦ 異物・微生物混入の防止
- 潤滑油漏れ、破損片落下、凝縮水滴下などのリスクを排除する。
これらの原則は、食品安全を設備側から担保するための“設計思想の土台”であり、HACCPやGMPと並んで現場の衛生レベルを大きく左右します。
3. 衛生設計の設計要素とチェック観点(EHEDG 7原則)
EHEDGの衛生設計7原則を体系化した 衛生設計チェック観点を整理してまとめる。
① 製品接触面の安全性(Materials & Surface)
表 3-1.に製品接触面の安全性について示す。
表 3-1. 製品接触面の安全性
| 設計要素 | チェック観点 |
|---|---|
| 材料選定 | 食品接触適合(EU/US/Japan)、耐薬品性、耐腐食性 |
| 表面粗さ | Ra ≤ 0.8 μm など、微生物付着を抑える仕上げ |
| 接 合 部 | 溶接の連続性、ピンホールなし、段差なし |
② 洗浄しやすい形状(Cleanability)
表 3-2.に洗浄しやすい形状について示す。
表 3-2. 洗浄しやすい形状
| 設計要素 | チェック観点 |
|---|---|
| 形 状 | 角・隙間・袋小路の排除、曲率半径の確保 |
| 分解性 | 工具レス分解、洗浄アクセス性 |
| CIP適合 | スプレーパターン、流速、影になる部位の有無 |
③ 排水性・液溜まり防止(Drainability)
表 3-3.に排水性・液溜まり防止について示す。
表 3-3. 排水性・液溜まり防止
| 設計要素 | チェック観点 |
|---|---|
| 傾 斜 | 最低 3° 以上の排水勾配 |
| 配 管 | デッドレグ長さ、自己排水構造、U字部の有無 |
| 洗浄後乾燥 | 水滴残留、凝縮水の滴下リスク |
④ 分解・点検の容易性(Accessibility)
表 3-4.に分解・点検の容易性について示す。
表 3-4. 分解・点検の容易性
| 設計要素 | チェック観点 |
|---|---|
| 点 検 性 | 目視確認可能範囲、内部アクセス性 |
| 分 解 性 | 頻度に応じた分解工数、工具レス化 |
| 安 全 性 | 分解時の怪我・破損リスクの低減 |
⑤ 外部構造の衛生性(External Hygiene)
表 3-5.に外部構造の衛生性について示す。
表 3-5. 外部構造の衛生性
| 設計要素 | チェック観点 |
|---|---|
| 外装形状 | 水平面の排除、埃溜まりの防止 |
| 配線・配管 | 壁面からの浮かせ施工、清掃アクセス |
| 設 置 | 床との隙間、脚部の清掃性、排水方向 |
⑥ プロセスとの整合性(Process Compatibility)
表 3-6.にプロセスとの整合性について示す。
表 3-6. プロセスとの整合性
| 設計要素 | チェック観点 |
|---|---|
| 洗浄方式 | CIP/SIP条件と設備構造の整合性 |
| 温度・圧力 | プロセス条件に対する耐性 |
| 流体挙動 | 混合、滞留、流速、気泡混入の管理 |
⑦ 異物・微生物混入の防止(Contamination Prevention)
表 3-7.に異物・微生物混入の防止について示す。
表 3-7. 異物・微生物混入の防止
| 設計要素 | チェック観点 |
|---|---|
| 潤滑・シール | 漏れ込み防止、食品グレード潤滑剤 |
| 材料破損 | 摩耗部品の管理、破片混入リスク |
| 環境要因 | 結露、落下物、空調流れ、虫害対策 |
4. 衛生設計チェック観点(EHEDG 7原則 × 設計 × バリデーション)
「設計レビューで確認すべきポイント」と「バリデーション(FAT/SAT、CIP/SIP検証、衛生性能確認)で確認すべき項目」を体系化した、実務でそのまま使える 衛生設計チェックポイントと項目(EHEDG 7原則対応) を整理してまとめる。
① 製品接触面の安全性(Materials & Surface)
表 4-1.に製品接触面の安全性について示す。
表 4-1. 製品接触面の安全性
| 観 点 | 設計で見るポイント | バリデーションで確認すべき項目 |
|---|---|---|
| 材 料 | 食品接触適合、耐薬品性、耐腐食性 | 材料証明(CoC/DoC)、洗浄剤耐性テスト |
| 表面粗さ | Ra値、研磨品質、溶接仕上げ | 表面粗さ測定、溶接部のピンホール検査 |
| 接 合 部 | 段差なし、死角なし、連続溶接 | 内視鏡検査、洗浄後の残渣付着評価 |
② 洗浄しやすい形状(Cleanability)
表 4-2.に洗浄しやすい形状について示す。
表 4-2. 洗浄しやすい形状
| 観 点 | 設計で見るポイント | バリデーションで確認すべき項目 |
|---|---|---|
| 形 状 | 角・隙間・袋小路の排除、R形状 | 洗浄後のATP/タンパク残渣テスト |
| 分 解 性 | 工具レス分解、洗浄アクセス性 | 分解工数の実測、洗浄アクセス確認 |
| CIP適合 | スプレーパターン、流速、影の有無 | CIPカバレッジテスト、流速・温度ログ |
③ 排水性・液溜まり防止(Drainability)
表 4-3.に排水性・液溜まり防止について示す。
表 4-3. 排水性・液溜まり防止
| 観 点 | 設計で見るポイント | バリデーションで確認すべき項目 |
|---|---|---|
| 傾 斜 | 自己排水構造、最低3°以上 | 排水テスト(染色水・透明水)、残留水確認 |
| 配 管 | デッドレグ長さ、U字部の排除 | デッドレグ測定、CIP後の水滴残留確認 |
| 乾 燥 性 | 凝縮水対策、通気性 | 乾燥時間の実測、結露発生の有無 |
④ 分解・点検の容易性(Accessibility)
表 4-4.に分解・点検の容易性について示す。
表 4-4. 分解・点検の容易性
| 観 点 | 設計で見るポイント | バリデーションで確認すべき項目 |
|---|---|---|
| 点 検 性 | 目視可能範囲、内部アクセス性 | 内部点検の実施、視認性の確認 |
| 分 解 性 | 頻度に応じた分解工数 | 分解・組立時間の実測、工具使用の有無 |
| 安 全 性 | 分解時の破損・怪我リスク | 作業性評価、破損リスクの実測確認 |
⑤ 外部構造の衛生性(External Hygiene)
表 4-5.に外部構造の衛生性について示す。
表 4-5. 外部構造の衛生性
| 観 点 | 設計で見るポイント | バリデーションで確認すべき項目 |
|---|---|---|
| 外装形状 | 水平面排除、埃溜まり防止 | 外装洗浄テスト、埃堆積の有無 |
| 配線・配管 | 壁面から浮かせ施工、清掃アクセス | 清掃性評価、配線固定の安定性 |
| 設 置 | 床との隙間、脚部清掃性 | 設置後の清掃テスト、排水方向確認 |
⑥ プロセスとの整合性(Process Compatibility)
表 4-6.にプロセスとの整合性について示す。
表 4-6. プロセスとの整合性
| 観 点 | 設計で見るポイント | バリデーションで確認すべき項目 |
|---|---|---|
| 洗浄方式 | CIP/SIP条件と構造の整合性 | CIP/SIP実測ログ、温度・圧力プロファイル |
| 温度・圧力 | プロセス条件への耐性 | 加熱・冷却サイクル試験、圧力保持試験 |
| 流体挙動 | 滞留、混合、気泡混入 | 流体可視化テスト、滞留時間分布(RTD) |
⑦ 異物・微生物混入の防止(Contamination Prevention)
表 4-7.に異物・微生物混入の防止について示す。
表 4-7. 異物・微生物混入の防止
| 観 点 | 設計で見るポイント | バリデーションで確認すべき項目 |
|---|---|---|
|
潤 滑 ・シール |
漏れ込み防止、食品グレード潤滑剤 | シール部のリークテスト、潤滑剤の混入確認 |
| 材料破損 | 摩耗部品の管理、破片混入リスク | 摩耗粉検査、稼働後の破損点検 |
| 環境要因 | 結露、落下物、虫害対策 | 稼働環境の観察、結露・落下物の有無 |
5. JIS B 9650-2 × EHEDG 7原則:衛生設計の共通点・相違点
① 製品接触面の安全性(材料・表面性状)
表 5-1.に製品接触面の安全性について示す。
表 5-1. 製品接触面の安全性
| 観 点 | 共通事項 | JIS B 9650-2 固有要求 | EHEDG 固有要求 |
|---|---|---|---|
| 材 料 | 食品接触適合、耐腐食性、耐薬品性 | 材料証明、表面処理の均一性、耐久性の明確化 | 微生物付着抑制のための表面粗さ基準(例:Ra ≤ 0.8 μm) |
| 表面仕上げ | 滑らかで清掃しやすい表面 | 表面欠陥(割れ・ピンホール)禁止を明確化 | EHEDG溶接ガイドラインに基づく連続溶接の推奨 |
| 接 合 部 | 段差・隙間の排除 | 接合部の強度・耐久性の要求 | 微生物リスク最小化のための溶接品質基準 |
② 洗浄しやすい形状(Cleanability)
表 5-2.に洗浄しやすい形状について示す。
表 5-2. 洗浄しやすい形状
| 観 点 | 共通事項 | JIS B 9650-2 固有要求 | EHEDG 固有要求 |
|---|---|---|---|
| 形 状 | 隙間・袋小路の排除、R形状 | 清掃アクセス性の定量的要求 | CIPカバレッジの設計基準を明確化 |
| 分 解 性 | 工具レス分解が望ましい | 分解頻度に応じた耐久性要求 | 分解不要のCIP設計を強く推奨 |
| 洗浄方式 | 洗浄可能な構造 | 洗浄手順との整合性 | CIP/SIPの流速・温度・衝突力の基準化 |
③ 排水性・液溜まり防止(Drainability)
表 5-3.に排水性・液溜まり防止について示す。
表 5-3. 排水性・液溜まり防止
| 観 点 | 共通事項 | JIS B 9650-2 固有要求 | EHEDG 固有要求 |
|---|---|---|---|
| 傾 斜 | 自己排水構造 | 傾斜角度の明示(例:3°以上) | デッドレグ長さの厳格基準(例:配管径の1.5倍以内) |
| 配 管 | 液溜まり防止 | 配管支持・固定方法の要求 | CIP時の流速基準(1.5 m/s 以上など) |
| 乾 燥 性 | 洗浄後の水残り防止 | 結露対策の明確化 | 乾燥性評価(EHEDG乾燥テスト) |
④ 分解・点検の容易性(Accessibility)
表 5-4.に分解・点検の容易性について示す。
表 5-4. 分解・点検の容易性
| 観 点 | 共通事項 | JIS B 9650-2 固有要求 | EHEDG 固有要求 |
|---|---|---|---|
| 点 検 性 | 内部確認が可能な構造 | 点検口の寸法・配置の要求 | 内視鏡検査を前提とした設計推奨 |
| 分 解 性 | 適切な分解工数 | 分解時の安全性要求 | 分解不要の衛生設計(CIP/SIP)を重視 |
| 作 業 性 | 作業者の安全確保 | 人間工学的要求 | 洗浄作業の最小化を重視 |
⑤ 外部構造の衛生性(External Hygiene)
表 5-5.に外部構造の衛生性について示す。
表 5-5. 外部構造の衛生性
| 観 点 | 共通事項 | JIS B 9650-2 固有要求 | EHEDG 固有要求 |
|---|---|---|---|
| 外装形状 | 水平面排除、埃溜まり防止 | 外装の耐久性・防錆要求 | 外部洗浄性の評価基準 |
| 配線・配管 | 清掃しやすい配置 | 固定方法・支持方法の規定 | 浮かせ施工の推奨 |
| 設 置 | 清掃しやすい脚部 | 床との隙間寸法の要求 | 排水方向の最適化 |
⑥ プロセスとの整合性(Process Compatibility)
表 5-6.にプロセスとの整合性について示す。
表 5-6. プロセスとの整合性
| 観 点 | 共通事項 | JIS B 9650-2 固有要求 | EHEDG 固有要求 |
|---|---|---|---|
| 洗浄方式 | CIP/SIPとの整合性 | 洗浄手順書との整合性要求 | CIP/SIPの性能基準(温度・圧力・流速) |
| 温度・圧力 | プロセス条件への耐性 | 材料の熱膨張・応力の要求 | EHEDGの熱衝撃試験推奨 |
| 流体挙動 | 滞留防止 | 流体シミュレーションの推奨 | RTD(滞留時間分布)評価 |
⑦ 異物・微生物混入の防止(Contamination
Prevention)
表 5-7.に異物・微生物混入の防止について示す。
表 5-7. 異物・微生物混入の防止
| 観 点 | 共通事項 | JIS B 9650-2 固有要求 | EHEDG 固有要求 |
|---|---|---|---|
| 潤滑・シール | 漏れ込み防止 | シール材の耐久性要求 | 食品グレード潤滑剤の使用推奨 |
| 材料破損 | 摩耗部品管理 | 摩耗粉の発生防止要求 | 摩耗リスクのFMEA的評価 |
| 環境要因 | 結露・落下物防止 | 周囲環境の衛生要求 | 空調流れ・陽圧管理の推奨 |
- 【全体的な特徴のまとめ】
- ① 共通点(JIS × EHEDG)
- • 衛生設計の基本思想はほぼ一致
- • 微生物リスク低減、洗浄性、排水性、異物混入防止を重視
- • 設計段階での衛生リスク排除を最優先とする
- ② 相違点
- JIS B 9650-2
- • 日本の工場環境・運用を前提とした「実務的・安全性重視」の要求
- • 耐久性、作業性、点検性など“運用面”の要求が強い
- • 設計者・製造者の責任範囲を明確化
- EHEDG
- • 欧州の衛生設計思想に基づく“微生物リスク最小化”が中心
- • CIP/SIP性能、流体挙動、溶接品質など“技術的・科学的”要求が強い
- • 実験的評価(CIPテスト、乾燥テスト、RTDなど)が豊富
6. EHEDG 衛生設計7原則 × 機械構成要素 比較
「EHEDG 衛生設計7原則 × 機械構成要素」および「JIS B 9650-2 × 機械構成要素」の2種類の体系化してまとめる。構成要素は「タンク/配管/バルブ/充填機/熱交換器」の5カテゴリで統一して示す。
6-1. 「EHEDG 衛生設計7原則 × 機械構成要素」
① 製品接触面の安全性
表 6-1-1.に各構成要素の製品接触面の安全性について示す。
表 6-1-1. 製品接触面の安全性
| 機械要素 | 衛生設計の要点 |
|---|---|
| タンク | 材料適合、溶接品質、表面粗さ(Ra ≤ 0.8 μm) |
| 配 管 | 連続溶接、デッドレグ最小化、表面仕上げ |
| バルブ | 接触材質の適合、シール材の衛生性 |
| 充填機 | ノズル内部の表面仕上げ、摩耗部品の材質 |
| 熱交換器 | 製品側表面の仕上げ、腐食耐性、溶接品質 |
② 洗浄しやすい形状
表 6-1-2.に各構成要素の洗浄しやすい形状について示す。
表 6-1-2. 洗浄しやすい形状
| 機械要素 | 衛生設計の要点 |
|---|---|
| タンク | R形状、袋小路排除、スプレーボール配置 |
| 配 管 | CIP流速確保、影のない構造 |
| バルブ | 分解洗浄性、CIP対応構造 |
| 充填機 | ノズル内部のCIP性、分解工数最小化 |
| 熱交換器 | プレート間の洗浄性、チューブ側のCIP性 |
③ 排水性・液溜まり防止
表 6-1-3.に各構成要素の排水性・液溜まり防止について示す。
表 6-1-3. 排水性・液溜まり防止
| 機械要素 | 衛生設計の要点 |
|---|---|
| タンク | 底部傾斜、自己排水構造 |
| 配 管 | 3°以上の傾斜、U字部排除 |
| バルブ | 排水性の高い構造、デッドスペース最小化 |
| 充填機 | ノズル内部の排水性、残液防止 |
| 熱交換器 | プレート・チューブの排水性、残留液確認 |
④ 分解・点検の容易性
表 6-1-4.に各構成要素の分解・点検の容易性について示す。
表 6-1-4. 分解・点検の容易性
| 機械要素 | 衛生設計の要点 |
|---|---|
| タンク | 点検口の配置、内部視認性 |
| 配 管 | クランプ接続、点検可能な配置 |
| バルブ | 工具レス分解、内部点検性 |
| 充填機 | ノズル分解性、部品交換性 |
| 熱交換器 | プレート分解性、チューブ点検性 |
⑤ 外部構造の衛生性
表 6-1-5.に各構成要素の分解・点検の容易性について示す。
表 6-1-5. 外部構造の衛生性
| 機械要素 | 衛生設計の要点 |
|---|---|
| タンク | 外装の水平面排除、脚部清掃性 |
| 配 管 | 壁面から浮かせ施工、清掃アクセス |
| バルブ | 外部洗浄性、配線・配管の整理 |
| 充填機 | 外装の清掃性、カバー構造 |
| 熱交換器 | 外部配管の清掃性、支持構造 |
⑥ プロセスとの整合性
表 6-1-6.に各構成要素の分解・点検の容易性について示す。
表 6-1-6. 分解・点検の容易性
| 機械要素 | 衛生設計の要点 |
|---|---|
| タンク | CIP/SIP条件との整合、撹拌条件 |
| 配 管 | 流速・圧力・温度条件 |
| バルブ | CIP/SIP対応、流体挙動 |
| 充填機 | 充填速度と衛生性の両立 |
| 熱交換器 | 温度分布、滞留時間、熱衝撃耐性 |
⑦ 異物・微生物混入防止
表 6-1-7.に各構成要素の異物・微生物混入防止について示す。
表 6-1-7. 異物・微生物混入防止
| 機械要素 | 衛生設計の要点 |
|---|---|
| タンク | 結露防止、破片混入防止 |
| 配 管 | 摩耗粉防止、漏れ防止 |
| バルブ | シール部の漏れ防止、摩耗管理 |
| 充填機 | ノズル滴下防止、潤滑剤混入防止 |
| 熱交換器 | プレート割れ・ピンホール防止 |
6-2. 「JIS B 9650-2 × 機械構成要素」
JISはEHEDGよりも「運用性・耐久性・安全性」の要求が強い点が特徴である。
① 材料・表面性状
表 6-2-1.に材料・表面性状について示す。
表 6-2-1. 材料・表面性状
| 機械要素 | JIS B 9650-2 の要求 |
|---|---|
| タンク | 材料証明、耐久性、表面欠陥禁止 |
| 配 管 | 表面処理の均一性、腐食防止 |
| バルブ | シール材の耐久性、材質適合 |
| 充填機 | 摩耗部品の材質管理 |
| 熱交換器 | 腐食耐性、表面欠陥管理 |
② 清掃性・洗浄性
表 6-2-2.に清掃性・洗浄性について示す。
表 6-2-2. 清掃性・洗浄性
| 機械要素 | JIS B 9650-2 の要求 |
|---|---|
| タンク | 清掃アクセス性、点検口寸法 |
| 配 管 | 清掃手順との整合、分解性 |
| バルブ | 分解洗浄性、清掃手順の適合 |
| 充填機 | 分解工数、洗浄手順の整合 |
| 熱交換器 | プレート洗浄性、分解性 |
③ 排水性
表 6-2-3.に排水性について示す。
表 6-2-3. 排水性
| 機械要素 | JIS B 9650-2 の要求 |
|---|---|
| タンク | 傾斜角度の明示、排水口配置 |
| 配 管 | 傾斜・支持方法の規定 |
| バルブ | 排水性の確保 |
| 充填機 | 残液防止構造 |
| 熱交換器 | 排水性の確認、残留液管理 |
④ 点検・保守性
表 6-2-4.に点検・保守性について示す。
表 6-2-4. 点検・保守性
| 機械要素 | JIS B 9650-2 の要求 |
|---|---|
| タンク | 点検口、内部視認性 |
| 配 管 | 点検可能な配置、支持方法 |
| バルブ | 分解性、耐久性 |
| 充填機 | 保守性、交換性 |
| 熱交換器 | プレート点検性、チューブ点検性 |
⑤ 外部衛生性
表 6-2-5.に外部衛生性について示す。
表 6-2-5. 外部衛生性
| 機械要素 | JIS B 9650-2 の要求 |
|---|---|
| タンク | 外装の清掃性、脚部構造 |
| 配 管 | 清掃アクセス、固定方法 |
| バルブ | 外部洗浄性、配線整理 |
| 充填機 | 外装清掃性、カバー構造 |
| 熱交換器 | 外部配管の清掃性 |
⑥ プロセス適合性
表 6-2-6.にプロセス適合性について示す。
表 6-2-6. プロセス適合性
| 機械要素 | JIS B 9650-2 の要求 |
|---|---|
| タンク | プロセス条件との整合 |
| 配 管 | 流体条件、圧力・温度 |
| バルブ | 流体挙動、耐久性 |
| 充填機 | 充填条件との整合 |
| 熱交換器 | 温度・圧力条件、耐久性 |
⑦ 異物混入防止
表 6-2-7.に異物混入防止について示す。
表 6-2-7. 異物混入防止
| 機械要素 | JIS B 9650-2 の要求 |
|---|---|
| タンク | 結露・落下物防止 |
| 配 管 | 摩耗粉防止、漏れ防止 |
| バルブ | シール材の耐久性、破損防止 |
| 充填機 | 滴下防止、摩耗部品管理 |
| 熱交換器 | プレート破損防止、漏れ管理 |
6-3. EHEDG × JIS B 9650-2 統合(高サニタリ化設計)
構造は 衛生設計7原則 × 機械構成要素
×(EHEDG+JISの統合要求) で統一して示す。
① 製品接触面の安全性(材料・表面性状)
表 6-3-1.製品接触面の安全性について示す。
表 6-3-1. 製品接触面の安全性
| 機械要素 | 統合要求(EHEDG+JIS) |
|---|---|
| タンク | 材料適合(食品接触)、耐腐食性、Ra管理、溶接品質、表面欠陥禁止 |
| 配 管 | 連続溶接、デッドレグ最小化、表面粗さ管理、腐食防止 |
| バルブ | 接触材質適合、シール材耐久性、摩耗リスク管理 |
| 充填機 | ノズル内部の表面仕上げ、摩耗部品材質、破片混入防止 |
| 熱交換器 | 製品側表面の仕上げ、腐食耐性、ピンホール防止 |
② 洗浄しやすい形状(Cleanability)
表 6-3-2.洗浄しやすい形状について示す。
表 6-3-2. 洗浄しやすい形状
| 機械要素 | 統合要求(EHEDG+JIS) |
|---|---|
| タンク | R形状、袋小路排除、スプレーボール配置、清掃アクセス性 |
| 配 管 | CIP流速確保、影のない構造、分解性 |
| バルブ | CIP対応、分解洗浄性、清掃手順との整合 |
| 充填機 | ノズルCIP性、分解工数最小化、洗浄手順適合 |
| 熱交換器 | プレート洗浄性、チューブCIP性、分解性 |
③ 排水性・液溜まり防止(Drainability)
表 6-3-3.に排水性・液溜まり防止について示す。
表 6-3-3. 排水性・液溜まり防止
| 機械要素 | 統合要求(EHEDG+JIS) |
|---|---|
| タンク | 自己排水構造、底部傾斜、排水口配置 |
| 配 管 | 3°以上の傾斜、U字部排除、支持方法 |
| バルブ | 排水性の高い構造、デッドスペース最小化 |
| 充填機 | ノズル内部の排水性、残液防止 |
| 熱交換器 | プレート・チューブの排水性、残留液管理 |
④ 分解・点検の容易性(Accessibility)
表 6-3-4.に分解・点検の容易性について示す。
表 6-3-4. 分解・点検の容易性
| 機械要素 | 統合要求(EHEDG+JIS) |
|---|---|
| タンク | 点検口配置、内部視認性、分解性 |
| 配 管 | クランプ接続、点検可能な配置 |
| バルブ | 工具レス分解、内部点検性、耐久性 |
| 充填機 | ノズル分解性、部品交換性 |
| 熱交換器 | プレート分解性、チューブ点検性 |
⑤ 外部構造の衛生性(External Hygiene)
表 6-3-5.に外部構造の衛生性について示す。
表 6-3-5. 外部構造の衛生性
| 機械要素 | 統合要求(EHEDG+JIS) |
|---|---|
| タンク | 外装の水平面排除、脚部清掃性、外装耐久性 |
| 配 管 | 浮かせ施工、清掃アクセス、固定方法 |
| バルブ | 外部洗浄性、配線整理 |
| 充填機 | 外装清掃性、カバー構造 |
| 熱交換器 | 外部配管清掃性、支持構造 |
⑥ プロセスとの整合性(Process Compatibility)
表 6-3-6.にプロセスとの整合性について示す。
表 6-3-6. プロセスとの整合性
| 機械要素 | 統合要求(EHEDG+JIS) |
|---|---|
| タンク | CIP/SIP条件、撹拌条件、温度・圧力耐性 |
| 配 管 | 流速・圧力・温度条件、流体挙動 |
| バルブ | CIP/SIP対応、流体挙動、耐久性 |
| 充填機 | 充填条件との整合、衛生性の両立 |
| 熱交換器 | 温度分布、滞留時間、熱衝撃耐性 |
⑦ 異物・微生物混入防止(Contamination Prevention)
表 6-3-7.に異物・微生物混入防止について示す。
表 6-3-7. 異物・微生物混入防止
| 機械要素 | 統合要求(EHEDG+JIS) |
|---|---|
| タンク | 結露防止、破片混入防止、落下物対策 |
| 配 管 | 摩耗粉防止、漏れ防止 |
| バルブ | シール部漏れ防止、摩耗管理 |
| 充填機 | 滴下防止、潤滑剤混入防止 |
| 熱交換器 | プレート割れ・ピンホール防止 |
6-4. 食品カテゴリ別(乳・飲料・惣菜・粉体)特化
カテゴリごとに「衛生設計で特に重視すべきポイント」を抽出して示す。
① 乳製品(ミルク・ヨーグルト・クリーム)
表 6-4-1.に乳製品の衛生設計で特に重視すべきポイントについて示す。
表 6-4-1. 乳製品の衛生設計ポイント
| 衛生設計原則 | 特化ポイント |
|---|---|
| 表面性状 | タンパク質付着防止、Ra管理の厳格化 |
| 洗浄性 | CIP/SIPの完全性、バイオフィルム対策 |
| 排水性 | 乳脂肪残渣の排水性確保 |
| プロセス整合 | 高温殺菌(HTST/UHT)との整合 |
| 異物混入 | プレート熱交換器のピンホール管理 |
② 飲料(清涼飲料・茶・コーヒー)
表 6-4-2.に飲料の衛生設計で特に重視すべきポイントについて示す。
表 6-4-2. に飲料の衛生設計ポイント
| 衛生設計原則 | 特化ポイント |
|---|---|
| 表面性状 | 糖分付着防止、腐食対策 |
| 洗浄性 | CIPの流速・衝突力確保 |
| 排水性 | 糖液の粘性による残液対策 |
| プロセス整合 | 炭酸飲料の圧力管理 |
| 異物混入 | ノズル滴下防止、フィルター管理 |
③ 惣菜(固形物・粘性物・具材入り)
表 6-4-3.に惣菜の衛生設計で特に重視すべきポイントについて示す。
表 6-4-3. 惣菜の衛生設計ポイント
| 衛生設計原則 | 特化ポイント |
|---|---|
| 表面性状 | 粘性物の付着防止、溶接の段差ゼロ化 |
| 洗浄性 | 固形物の滞留防止、分解洗浄性重視 |
| 排水性 | 粘性物の排水性、残渣ゼロ化 |
| プロセス整合 | 低流速領域の滞留対策 |
| 異物混入 | 摩耗部品の破片混入リスク管理 |
④ 粉体(小麦粉・砂糖・ミルクパウダー)
表 6-4-4.に粉体の衛生設計で特に重視すべきポイントについて示す。
表 6-4-4. 粉体の衛生設計ポイント
| 衛生設計原則 | 特化ポイント |
|---|---|
| 表面性状 | 粉付着防止、静電気対策 |
| 洗浄性 | ドライクリーニング前提の構造 |
| 排水性 | 水洗いしない前提での粉落ち性 |
| プロセス整合 | 粉体流動性、ブリッジ対策 |
| 異物混入 | パッキン摩耗粉、金属片混入防止 |
7. CIP/SIP バリデーションの実務
CIP/SIPの検証方法について、EHEDGとJISの違い。流速、乱流、温度プロファイルなど、技術的な内容が多いが簡潔にまとめる。EHEDGは流速1.5~2
m/s、乱流基準、温度プロファイルに厳格な要求があるが、JISはもう少し柔軟で、数値基準は少ない。EHEDGとJISの違いを使って比較し、各セクションを簡潔に説明する。
CIP/SIPについては、EHEDGは「どこまで洗えているかを数値で攻める」、JISは「衛生的に洗える構造かどうかを守る」という役割分担にはっきり分かれる。
7-1. 全体像:EHEDG vs JIS(CIP/SIPバリデーションのスタンス)
表 7-1. にCIP/SIPバリデーションの全体像を示す。
表 7-1. CIP/SIPバリデーションの全体像
| 観 点 | EHEDG側の特徴 | JIS B 9650-2側の特徴 |
|---|---|---|
| 基本スタンス | 洗浄・滅菌“性能”を数値で規定し、バリデーションで実証する | 「衛生的に洗浄可能な構造」であることを一般要求として規定 |
| 流速・乱流 | 乱流域(例:1.5〜2 m/s)など、目標値を明示しやすい | 流速値は規定せず、「洗浄可能な配管・機器構造」であることを要求 |
| 温度プロファイル | 最低温度・保持時間・コールドスポットを定義し、マッピングで確認 | 「洗浄・殺菌が可能であること」を要求し、条件設定はユーザー側に委ねる |
| バリデーション | カバレッジテスト、RTD、温度マッピングなど“試験ベース”が前提 | 構造・材料・取説・保守性など“設計・運用ベース”が中心 |
- 7-2. 流速・乱流:EHEDGは“数値”、JISは“構造”
- ① EHEDG側
- • 設計指針としての流速:
- CIP時の配管流速を 1.5〜2 m/s(乱流域) とすることが、各種EHEDG系資料や業界ガイドで繰り返し示される。
- • 乱流確保の意味合い:
- ・バイオフィルム剥離
- ・界面せん断力の確保
- ・デッドレグ・枝管の洗浄性向上
-
• 設計+バリデーションの一体化:
配管径・ポンプ能力・圧損計算からCIP流速を設計 → 実機で流量・圧力を測定し、必要ならトレーサー試験やカバレッジテストで裏付ける。 - ② JIS B 9650-2側
-
• 規格としては流速値を“言わない”:
JIS B 9650-2は「洗浄可能な構造」「清掃性」「排水性」を要求するが、具体的な流速やRe数は規定しない。 - • 日本の実務では“別資料”で補完:
- 例えばサニタリーパイプの技術資料では、CIP時の目安として 流速1.6 m/s以上+乱流域 を推奨するなど、事実上EHEDGと同じ世界観で設計している。
-
• バリデーションとの関係:
「JIS準拠=構造的に洗える前提」「流速・乱流=ユーザー仕様・業界ガイドで上乗せ」という分担になりやすい。 - 7-3. 温度プロファイル・SIP:EHEDGは“コールドスポットまで”、JISは“可能性の担保”
- ① EHEDG側
- • SIPの考え方:
- 「装置内のすべての製品接触面が、定義した温度(例:121 ℃)以上で、所定時間(例:15分)保持されること」を前提に、
- a. 温度センサーを複数配置
- b. コールドスポットを探索
- c. 立ち上がり・保持・冷却のプロファイルを記録
- といった温度マッピング+最悪条件検証を求める発想が強い。
-
• CIPでも温度は“性能パラメータ”:
アルカリ洗浄・酸洗浄の最適温度帯を定め、流速・濃度・時間とセットで「洗浄サイクル」としてバリデーションする。 - ② JIS B 9650-2側
- • 規格としては“条件値”を持たない:
- 「洗浄・殺菌が可能な構造」「洗浄・殺菌手順と矛盾しない設計」であることを要求するが、温度・時間の数値はユーザー側の手順書に委ねる。
- • 結果として:
- 温度プロファイルのバリデーションは、JISというよりHACCP/GMP/社内SOPの世界 で決まり、JISは「その条件を実現できる構造か?」を見る立場になりやすい。
- 7-4. バリデーション実務フローの違い(EHEDG vs JIS)
- ① EHEDGを前面に出した場合
- • URS段階で数値を明記:
- a. CIP流速:1.5〜2 m/s以上
- b. Re数:乱流域
- c. 洗浄温度・時間・濃度
- d. SIP温度・保持時間・許容偏差
- • FAT/SAT・PQでの検証:
- a. 流量・圧力測定 → 設計値との整合
- b. カバレッジテスト(着色水・蛍光剤など)
- c. 温度マッピング(コールドスポット確認)
- → 「EHEDG的に妥当なCIP/SIP性能がある」と言える状態まで持っていく。
- ② JIS B 9650-2を軸にした場合
- • 設計・製造段階のチェック:
- a. 材料・表面・溶接・排水性・清掃性・点検性がJIS要求を満たすか
- b. 取扱説明書に洗浄・殺菌手順が明記されているか
- • バリデーションとの関係:
- a. JISは「構造・安全・保守」の合格ライン
- b. CIP/SIPの数値的性能は、ユーザー側のSOP・品質システムで定義しGMP/HACCP文脈でバリデーションする
8. 最後に
食品機械の衛生設計は、EHEDGの“性能を攻める設計思想” と JIS B 9650-2の“衛生・安全・保守を守る一般要求” を両輪として統合することで、初めて実務的に成立します。EHEDGは材料・洗浄性・排水性・滞留ゼロ・CIP/SIP性能・流体挙動・空調環境まで踏み込んで微生物リスクを最小化する一方、JISは食品機械としての清掃性・点検性・耐久性・安全性を体系的に規定する。
衛生設計レビューでは、これらをユーザー要求仕様URS→工場受入試験FAT→据付・立上げSAT→性能適格性・バリデーションPQの各段階で、タンク・配管・バルブ・充填機・熱交換器といった機械別にチェックリスト化し、○/△/×で評価することで、設計・据付・運転・洗浄・保守の全ライフサイクルで衛生リスクを可視化できる。
液体・粉体・粘性食品といった製品特性に応じて重点ポイントを変えながら、EHEDGで“洗える性能”を担保し、JISで“衛生的に使い続けられる構造”を確保することが、食品工場の衛生設計レビューの最適解になる。
以上
【参考引用先】
1. EHEDGガイドラインEHEDG Doc.8「Hygienic Design Principles」
2. EHEDGガイドラインEHEDG Doc.13「Wet-cleaned Open Equipment」
3. EHEDGガイドラインEHEDG Doc.32「Air Handling Systems in the Food
Industry」
4. JIS B 9650-2「食料品加工機械の安全及び衛生に関する
設計基準通則−第2部:衛生設計基準」
5. 技術レポート「食品機械の衛生とは ?
衛生設計の基礎知識」木本技術士事務所 HP
https://www.kimoto-proeng.com/report/876