2026/01/05
技術用語解説81『SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)』
1. はじめに
SAF(持続可能な航空燃料)は、航空業界の脱炭素化に向けた「切り札」とされ、廃食油やバイオマスなど循環型資源から製造される次世代燃料である。従来の化石燃料に比べてライフサイクル全体でCO₂排出を最大80%削減できる可能性がある。
2. SAFの基本概要
- (1) 定義:
- Sustainable Aviation Fuel(持続可能な航空燃料)。再生可能資源や廃棄物を原料とするジェット燃料
- (2) 価格安定と代替需要:
- 従来のジェット燃料と化学的性質がほぼ同じため、既存の航空機・インフラで利用可能
- (3) 混合比率:
- 国際規格(ASTM)により、化石燃料と最大50%まで混合して使用可能
3. 原料と製造プロセス
(1) 廃食油・植物油 → 水素化処理で製造(HEFA法)
(2) トウモロコシ・サトウキビ → 発酵でアルコールを生成し、ジェット燃料へ転換(ATJ法)
(3) 微細藻類・古紙・木材廃棄物 → 油分抽出やガス化を経て燃料化
(4) 廃プラスチック → ガス化・化学変換による利用も研究中
図1. 工場廃棄物からSAF原料への変換プロセスの例
4. 環境的意義
- (1) カーボンニュートラル:
- 燃焼時に排出されるCO₂は、原料となる植物や藻類が光合成で吸収したCO₂と循環するため、実質的に大気中のCO₂増加を抑制できる。
- (2) 削減効果:
- ライフサイクル全体で最大80%のCO₂削減が可能である。
- (3) 国際目標:
-
• ICAO(国際民間航空機関):2050年までに航空業界の排出ゼロ
• IATA(国際航空運送協会):2050年までにSAFを世界の航空燃料の90%に拡大
5. 現状と課題
- (1) 供給量:
- 2020年時点で世界のSAF供給は約6.3万kL(全ジェット燃料の0.03%)である。
- (2) 需要予測:
- 2050年には4.1〜5.5億kLが必要(世界需要の約90%)とされる。
- (3) 課題:
-
• 製造コストが化石燃料より高い
• 原料調達の安定性(廃食油やバイオマスの量的制約)
• サプライチェーン構築の遅れ
6. 日本の取り組み
- (1) 目標:
- 2030年までに国内ジェット燃料の5%をSAFに置き換えが目標である。
- (2) 企業動向:
- ENEOSや三菱商事が和歌山製造所で年間40万kLの量産体制を構築予定である。
- (3) 国際連携:
- 豪州Ampol社などと共同で製造設備を検討している。
7. まとめ
• SAFは航空業界の脱炭素化の核心技術であり、国際的に導入が加速中である。
• 課題はコストと供給量だが、官民連携で拡大が進む。
• 日本も2030年に向けて製造・輸入体制を強化中である。
以上
【参考引用先・参考レポート】
1. 「SAF(持続可能な航空燃料)」ENEOSホールディングス株式会社HP:
https://www.hd.eneos.co.jp/innovation/group_innovation/saf/
2. 「持続可能な航空燃料「SAF」って何? 使用済みの食用油やゴミから燃料ができるってホント!?」
独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構:https://www.jogmec.go.jp/publish/plus_vol15.html
3. 「持続可能な航空燃料」出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
持続可能な航空燃料 – Wikipedia