『今の暮らしの中で、そっと昭和を楽しむ』

 4月29日は“昭和の日”である。大人になった今でも、昭和の音楽やお菓子は、ちょっとしたきっかけで簡単に当時の自分を連れてきてくれる。仕事から帰って、ふと昭和歌謡や昭和ポップスのプレイリストを流してみる。あの頃好きだった歌手のベストアルバムを、今度はスマホやパソコンから聴いてみる。それだけで、心のどこかが「おかえり」と言ってくれているような、ほっとする感覚がある。

昭和の音楽と聞くと、まず思い出すのは、テレビやラジオから毎日のように流れていた昭和歌謡である。チャンネルが今ほど多くなかったぶん、同じ曲を日本中の人が聴いていて、子供も大人も一緒になって口ずさんでいた時代。

夕方の台所で、鍋の音と一緒に流れていたメロディ。商店街のスピーカーから聞こえてきたヒット曲。学校帰りに寄り道した駄菓子屋さんのラジオ。どこに行っても音楽がそっと寄り添っていて、日常の風景とセットで記憶に残っている、という方も多いと思う。

昭和30〜40年代の歌謡曲やムード歌謡は、今聴くと少し古風なアレンジに感じるかもしれないが、その“古さ”がかえって安心感につながるところがある。昭和40〜50年代のフォークやニューミュージックに心を支えられた人もいれば、昭和50〜60年代のアイドルポップやシティポップに、ときめきや憧れを重ねていた人もいるだろう。

レコードやカセットテープに録音したお気に入りの曲を、すり切れるまで聴いた記憶。歌番組を欠かさずチェックして、新曲のサビだけとりあえず口ずさめるようにしていた頃。今、配信で同じ曲を再生すると、イントロの数秒だけで、そのときの部屋のにおいや空気までふっとよみがえってくる。「あの頃、こんなこと考えながら聴いてたな」「この曲、あの人が好きだったな」と、音楽がタイムマシンみたいに記憶を連れてきてくれる感じが、昭和の曲ならではの味わいかもしれない。

昭和のお菓子の思い出といえば、やっぱり駄菓子屋さん。放課後にランドセルを置いて、「今日は何円持って行けるかな」と財布の中身を数えるところから、もうワクワクが始まっていた。店の奥までぎっしり並んだ色とりどりの袋。小さなプラスチックケースに山積みになったキャンディやガム。冷蔵ケースの中に整然と並んでいたジュースやアイス。棚の前にしゃがみ込んで、10円、20円の世界で真剣な計算をしていたあの時間は、大人になった今思い返しても、なんだか愛おしく感じる。

酸っぱい粉をまぶしたお菓子を「うわ、すっぱい!」と言いながら友達と分け合ったこと。グミやゼリーの独特の食感を楽しみながら、「これ当たり出るかな」とドキドキしたこと。小さなドーナツや焼き菓子をひとつずつ大事に食べて、おまけに付いてくるシールやカードを集めていたこと。あの頃のお菓子は、味だけでなく、小さなイベントや物語がセットになっていた。

そして何より印象的なのが、パッケージのデザイン。今ほど洗練されてはいないけれど、どこか肩の力が抜けたイラストや、妙にクセになるロゴ。駄菓子屋のガラスケース越しに並んだその姿は、まさに「昭和の色」と呼びたくなる風景である。「この絵、まだ覚えてる」「このロゴを見ると一気に子供の気分に戻る」という人も多いのではないでしょうか。

昭和の音楽とお菓子は、「あの頃は良かった」とただ振り返るためだけのものではなく、「今の自分がちょっと深呼吸するための小さなスイッチ」にもなってくれる存在でもある。懐かしさを味わいながら、今の生活の中に、自分なりの昭和時間を少しだけ忍ばせてみてもよいかも…。

以上