『果肉入り果汁飲料の殺菌機導入計画に伴う生産工程設計』

『果肉入り果汁飲料の殺菌機導入計画に伴う生産工程設計』
“Production process design in conjunction with the introduction of a sterilization machine for fruit juice beverages containing fruit pulp.”

果肉入りジュースは、プレート単独だと無理が出やすい領域なので、チューブラーとの組み合わせで設計の考え方を整理する。

1.前提条件のイメージ

 まず代表例として次のような製品を想定。

  製品:オレンジパルプ入りジュース
  パルプ粒径:最大 3〜5 mm 程度
  粘度:水よりやや高い程度(高糖度だとさらに上昇)
  殺菌条件:例えば 95〜100 ℃、数十秒ホールド後、ホットパックまたはアセプティック充填

 粒径と粘度の時点で「製品側はチューブラー優位」が基本になる。

2. チューブラー側の標準構成

 果肉入りジュースでは、製品側はチューブラーが前提。

(1)典型的な構成

  ・多管式または「チューブ・イン・チューブ」型の熱交換器
  ・チューブ径は「最大果肉粒径の 8〜10 倍以上」を目安に選定
  ・製品側:チューブ内側を流す
   加熱媒体:シェル側に温水やスチームを流す
  ・保持部:加熱後に同径またはやや太めのホールディングチューブで F値確保
  ・冷却部:同じくチューブラーで段階冷却(水 → 冷水 → 氷水など)

(2)設計上のポイント

  ・粒子が均一に流れるよう、層流になりすぎない流速レンジを確保
  ・圧力損失とポンプ容量のバランス(充填機まで押し切れるか)
  ・CIP 時にはスラグ流にならないような洗浄流速を確保

3. プレート式を使うとしたら「熱回収・予熱」だけ

 果肉入りジュースでは、プレート式熱交換器は通常、以下のような使い方になる。

(1)役割

  ・濾過済みの“清澄ジュース部分”の予熱・冷却
  ・洗浄液(CIP)用の加熱・冷却
  ・場合によっては、パルプを含まないシロップやベース液の熱処理

(2)なぜ製品本体の殺菌には使いにくいか

  ・プレートの流路は狭く、果肉粒が噛んで目詰まりしやすい
  ・粒と液の加熱がアンバランスになりやすく、F値設計・バリデーションが難しい
  ・高糖度+酸性でスケールやカラメル化が起こりやすく、CIP 頻度が増える

このため、果肉入りの「最終製品流路」をプレートに通さない構成が一般的。

4. 果肉入りジュースUHTラインのモデル比較

A案:プレート+チューブ ハイブリッド

 主な流れのイメージ(ベース濃縮とパルプを別扱いする場合)

  ① ベース濃縮ジュースをプレート式で予熱(高効率な熱回収)
  ② 別ラインでパルプを温水中で軽く予熱、あるいは未加熱のまま混合点へ送液
  ③ ミキサー手前でベースとパルプを混合
  ④ 混合後の製品をチューブラーで殺菌加熱+ホールディング
  ⑤ チューブラーで段階冷却し、アセプティックタンクへ

 この構成では、プレートは「熱回収担当」、チューブラーは「最終製品担当」という役割分担。

B案:製品すべてチューブラーで処理

 よりシンプルに、

  ・予熱〜殺菌〜冷却まで、すべてチューブラーで構成

 とするパターン。

  ・熱効率は A案よりやや劣るが、製品経路はシンプルで設計・バリデーションがわかりやすい
  ・小〜中規模ラインに向く構成

5. 果肉入りジュースにおけるプレート/チューブラーの使い分け

表1. にプレート式とチューブラー式の使い分けについて整理して示す。

表1. プレート/チューブラーの使い分け

観点 プレート式熱交換器 チューブラー式熱交換器
製品流路 基本は通さないか、パルプ除去済みのベース液のみ 果肉入り最終製品を通すメイン系統
主な役割 予熱・熱回収、清澄液処理、CIP 加熱 殺菌加熱、保持、冷却の全工程
長所 高い熱回収率、コンパクト、洗浄しやすい 粒・繊維・高粘度に強く、目詰まりリスクが低い
短所 粒による閉塞リスク、粒の温度管理が難しい プレートより大型になりがち、設備コスト増
適するケース ベース液が清澄、粒は後混合か別ルート処理 果肉入り製品を一括で殺菌したい場合

6. 工程設計における実務での決め方のステップ

 果肉入りジュース用の熱交換方式を決めるなら、次の順で考えると整理しやすい。

  ① 最大粒径と想定固形分比率を決める
  ② 粘度曲線(温度別)をおおまかに押さえる
  ③ 「ベース液とパルプを分けて処理するか、一括処理か」を決める
  ④ 熱回収率目標と CIP インターバル(汚れやすさ)を設定する
  ⑤ それに応じて「プレートはどこまで入れるか」「チューブ径をどこまで太くするか」を決める

7. 仮前提条件の設定で設計

 たとえば、仮に日産40〜50トンで果肉3〜5 mm と前提条件を設定。
 プレート式とチューブラーの「現実的な棲み分け」を数字感も含めて設計する。

【前提条件の整理】

  日産量:40〜50 t/日(ここでは 45 t/日を代表値とする)
  24時間運転換算:45,000 kg ÷ 24 h ≒ 1,875 kg/h(約 1.9 t/h)
  2直16時間運転なら:約 2.8 t/h
  果肉粒径:最大 3〜5 mm
  製品:オレンジパルプ入りジュース
  想定殺菌条件:95〜100 ℃、数十秒ホールド後ホットパックまたはアセプティック

 この規模と粒径なら、機種選定としては「チューブラーがメイン+プレートは熱回収補助」が基本ライン。

(1)チューブラー側:必要能力のイメージ

 ① チューブ径の目安

  ・一般的な果肉入り飲料では、「粒径の 8〜10 倍以上のチューブ内径」を取るのが安全側である。
  ・粒径 5 mm を最大とすると、チューブ内径 40〜50 mm クラスが目安。

 実務では、

  ・呼び32A(外径42.7mm)や 呼び40A(外径48.6mm)のステンレス鋼管クラスの多管式を複数本束ねて、必要能力を出す構成が典型。
  ・多管式は「外径基準」で見積もりたいのか、「有効伝熱面としての内径基準」で合わせたいのかで設計の仕方が変わるので注意が必要。

 ② 処理量から見た段数イメージ

  ・1.9〜2.8 t/h レベルであれば、40〜50 mm 級チューブを数十本束ねた多管式を「予熱/加熱/保温/冷却」で数段構成にするイメージ。

 例(ここでのイメージ)

  ・予熱段:多管式チューブラー(製品 vs 温水)
  ・本加熱段:多管式チューブラー(製品 vs 高温温水/蒸気)
  ・ホールディング:同径ホールディングチューブ
  ・冷却段:多管式チューブラー(製品 vs 冷却水 → 氷水)

(2)プレート式の役割:熱回収と周辺のみ

 この条件だと、製品(果肉入り)をプレートに通すのはプレート間隙が小さくほぼ無理である。

 ① プレート式の主な使いどころ

  ・濃縮オレンジ果汁やシロップの予熱・冷却パルプを含まないベース部分だけをプレートに通して高効率に熱回収。
  ・CIP 洗浄液の加熱・冷却用
  ・必要なら、「ベース液だけプレートで HTST → 後段でパルプ混合 → チューブラーで再加熱短時間殺菌」という 2段殺菌的な構成も検討余地あり。

 ② こうしない方がよいパターン

  ・果肉入り最終製品をそのままプレートに通す → 3〜5 mm 粒で日量 40〜50 t クラスだと果肉が流せない(粒詰まり・ファウリング発生)ので現実的ではない。

(3)推奨ライン構成イメージ

 ① モデル構成

 前段:調合〜脱気

  ・調合タンク(ベース液+パルプ)
  ・インラインミキサー(必要なら)
  ・真空脱気装置(溶存空気除去)

 熱交換・殺菌部

  ・予熱チューブラー:60〜70 ℃程度まで昇温(温水との熱交換)
  ・本加熱チューブラー:95〜100 ℃まで昇温(温水/蒸気温水)
  ・ホールディングチューブ:数十秒〜1分程度の保持時間
  ・冷却チューブラー:一段目:40〜50 ℃まで(温水との熱回収)→ 二段目:20〜30 ℃まで(冷水/氷水)

 その後

  ・アセプティックタンク
  ・アセプティック充填機(PET/紙容器など)

 ② ここにプレートをどう入れるか

  ・パルプなしの濃縮果汁・シロップライン → プレート式で高効率予熱/熱回収
  ・CIP → プレート式でアルカリ・酸・熱水を加熱し、チューブラー系を洗浄

 「製品本流=チューブ」「ベース液・CIP=プレート」という明確な役割分担にするのが堅実。

(4)この条件でのプレート vs チューブラーの整理

 上記のこの条件を基に表2.にプレート式 vs チューブ式について整理して示す。

表2. プレート vs チューブラーの整理

項目 プレート チューブラー
日産 40〜50 t/パルプ3〜5 mm 製品本流には基本不向き 製品本流の必須選択肢
役割 ベース液、CIP、熱回収 予熱〜本加熱〜保持〜冷却
設備規模感 比較的小型 40〜50 mm 級多管式を数段構成
リスク 目詰まり、頻繁CIP 設備費・スペースやや増加

8. 概略仕様の具体化

 24時間連続運転+アセプティック+パルプ20%、「製品前提“飲みやすさ”を崩さない設計」をポイントに製品設計。

(1)前提条件の再整理

  ・日産量: 45t/日
  ・運転:24 h 連続(CIP は別枠で設定)
  ・瞬時能力:約 1.9 t/h(1,875 kg/h)
  ・製品:オレンジパルプ入りジュース
  ・パルプ配合:20%、粒径 3〜5 mm
  ・食感:ストローでも飲みやすいレベル(粒は感じるが“ゴロゴロ”までは不要)
  ・充填:無菌タンク経由アセプティック充填

(2)熱交換方式の結論

 ① 製品本流

  ・チューブラーをメイン採用
  ・内径 40〜50 mm クラスの多管式チューブラーを複数段

  粒径 5 mm × 8〜10 ≒ 40〜50 mm で安全側

 ② 役割

  ・予熱 → 本加熱 → ホールディング → 冷却をすべてチューブラーで構成

 ③ プレート式

  ・製品本流には通さない
  ・使うのは以下の用途
   ○ 濃縮果汁/シロップなどパルプを含まないベース液の予熱・冷却
   ○ CIP 洗浄液の加熱・冷却
   ○ 必要なら「清澄ジュース HTST」用ライン

(3)概略プロセスフロー案(アセプティック対応)

 ① 前処理・調合

  ・ベース濃縮果汁+水+糖液を調合タンクで混合
  ・パルプを別タンクから計量投入し、軽くミキシング
  ・真空脱気装置で溶存空気除去(泡と酸化抑制)

 ② 殺菌系(すべてチューブラー想定)

 目安プロファイル案(飲みやすい食感を残す前提)

  ・予熱チューブラー
   ○ 入口:20 ℃前後
   ○ 出口:65〜70 ℃
  ・本加熱チューブラー
   ○ 入口:70 ℃ → 出口:95〜98 ℃
  ・ホールディングチューブ
   ○ 95〜98 ℃で 20〜40 秒程度保持
   ○ F値は製品設計・規格次第で最終決定
  ・冷却チューブラー
   ○ 一段目:95〜98 → 50 ℃(温水による熱回収)
   ○ 二段目:50 → 25〜30 ℃(冷水/氷水)
  ・その後、アセプティックタンクへ送液し、無菌充填

 ③ ポイント

  ・温度は「果肉の食感を崩しすぎないギリギリライン」で調整
  ・保持時間と温度の組み合わせで微生物指標(酵母・カビ・耐熱菌)に必要な F値を確保

(4)「飲みやすい食感」側からの設計ポイント

  ・パルプ20%でも、粒径 3〜5 mm +ストロー通過を意識するなら
   ○ 過度な加熱で果肉が崩れて“ドロドロ”にならないよう、「温度は高め・時間は短め」の方向で調整
  ・チューブ内の流速は
   ○ 速すぎると滞留が不均一になり F値バラつき
   ○ 遅すぎると粒が沈んで滞留しやすい → ここはポンプ選定+チューブ径の組み合わせで詰める

9.プレート vs チューブラーの最終設計(この条件)組み合わせ

表3.にプレート vs チューブラーの最終設計を以下にまとめる。

表3. プレート vs チューブラーの最終設計

項目 プレート チューブラー
製品(果肉20%、3〜5 mm) 通さない(ベース液のみ) 本流全工程を担当
能力帯 ベース液・CIP 用なので小さめ 約 1.9 t/h を24h連続処理
メリット 高効率熱回収、CIP加熱に有利 粒・粘度・連続運転に強い
デメリット 粒詰まり・ファウリング懸念 設備コスト・スペース増

 果実のパルプや固形物に対しては、チューブラー式熱交換器を用いる。プレート式熱交換器は、補助的に加熱・冷却装置としてラインに組み込み構成する。工程設計を考える場合は、使い分けるか、統一するか、前提条件を基に全体の工程を考慮して検討するのが最善である。

以上