『食品機械の衛生設計 7原則(EHEDG)と 俯瞰するJIS B 9650-2の基本思想』

  • HOME
  • 技術レポート
  • 『食品機械の衛生設計 7原則(EHEDG)と 俯瞰するJIS B 9650-2の基本思想』

『食品機械の衛生設計 7原則(EHEDG)と 俯瞰するJIS B 9650-2の基本思想』
“Seven principles of hygienic design for food machinery (EHEDG) and the basic concepts of JIS B 9650-2”

1. はじめに

 食品機械の衛生設計7原則(EHEDG)は、食品製造設備を「汚染を防ぎ、洗浄しやすく、微生物が繁殖しない構造」にするための基本思想をまとめたものです。ポイントは“機械そのものが衛生リスクを生まない設計”を徹底することにある。

2. 衛生設計7原則(概要)

① 製品接触面の安全性
食品と触れる部分は腐食せず、化学的に安定し、洗浄剤に耐える材料を使用する。
② 洗浄しやすい形状
角や隙間をなくし、残渣が溜まらない滑らかな構造とする。
③ 液体が滞留しない排水性
傾斜や排水経路を確保し、洗浄後に水が残らないようにする。
④ 分解・点検の容易性
必要な部位は工具なしで分解でき、内部まで確実に洗浄・確認できる。
⑤ 外部構造の衛生性
製品非接触部も汚れが溜まらず、清掃しやすい設計とする。
⑥ プロセスとの整合性
CIP/SIPなどの洗浄・殺菌方式と設備構造が矛盾しないように設計する。
⑦ 異物・微生物混入の防止
潤滑油漏れ、破損片落下、凝縮水滴下などのリスクを排除する。

 これらの原則は、食品安全を設備側から担保するための“設計思想の土台”であり、HACCPやGMPと並んで現場の衛生レベルを大きく左右します。

3. 衛生設計の設計要素とチェック観点(EHEDG 7原則)

 EHEDGの衛生設計7原則を体系化した 衛生設計チェック観点を整理してまとめる。

 ① 製品接触面の安全性(Materials & Surface)
  表 3-1.に製品接触面の安全性について示す。

表 3-1. 製品接触面の安全性

設計要素 チェック観点
材料選定 食品接触適合(EU/US/Japan)、耐薬品性、耐腐食性
表面粗さ Ra ≤ 0.8 μm など、微生物付着を抑える仕上げ
接 合 部 溶接の連続性、ピンホールなし、段差なし

 ② 洗浄しやすい形状(Cleanability)
  表 3-2.に洗浄しやすい形状について示す。

表 3-2. 洗浄しやすい形状

設計要素 チェック観点
形 状 角・隙間・袋小路の排除、曲率半径の確保
分解性 工具レス分解、洗浄アクセス性
CIP適合 スプレーパターン、流速、影になる部位の有無

 ③ 排水性・液溜まり防止(Drainability)
  表 3-3.に排水性・液溜まり防止について示す。

表 3-3. 排水性・液溜まり防止

設計要素 チェック観点
傾 斜 最低 3° 以上の排水勾配
配 管 デッドレグ長さ、自己排水構造、U字部の有無
洗浄後乾燥 水滴残留、凝縮水の滴下リスク

 ④ 分解・点検の容易性(Accessibility)
  表 3-4.に分解・点検の容易性について示す。

表 3-4. 分解・点検の容易性

設計要素 チェック観点
点 検 性 目視確認可能範囲、内部アクセス性
分 解 性 頻度に応じた分解工数、工具レス化
安 全 性 分解時の怪我・破損リスクの低減

 ⑤ 外部構造の衛生性(External Hygiene)
  表 3-5.に外部構造の衛生性について示す。

表 3-5. 外部構造の衛生性

設計要素 チェック観点
外装形状 水平面の排除、埃溜まりの防止
配線・配管 壁面からの浮かせ施工、清掃アクセス
設 置 床との隙間、脚部の清掃性、排水方向

 ⑥ プロセスとの整合性(Process Compatibility)
  表 3-6.にプロセスとの整合性について示す。

表 3-6. プロセスとの整合性

設計要素 チェック観点
洗浄方式 CIP/SIP条件と設備構造の整合性
温度・圧力 プロセス条件に対する耐性
流体挙動 混合、滞留、流速、気泡混入の管理

 ⑦ 異物・微生物混入の防止(Contamination Prevention)
  表 3-7.に異物・微生物混入の防止について示す。

表 3-7. 異物・微生物混入の防止

設計要素 チェック観点
潤滑・シール 漏れ込み防止、食品グレード潤滑剤
材料破損 摩耗部品の管理、破片混入リスク
環境要因 結露、落下物、空調流れ、虫害対策

4. 衛生設計チェック観点(EHEDG 7原則 × 設計 × バリデーション)

 「設計レビューで確認すべきポイント」と「バリデーション(FAT/SAT、CIP/SIP検証、衛生性能確認)で確認すべき項目」を体系化した、実務でそのまま使える 衛生設計チェックポイントと項目(EHEDG 7原則対応) を整理してまとめる。

 ① 製品接触面の安全性(Materials & Surface)
  表 4-1.に製品接触面の安全性について示す。

表 4-1. 製品接触面の安全性

観 点 設計で見るポイント バリデーションで確認すべき項目
材  料 食品接触適合、耐薬品性、耐腐食性 材料証明(CoC/DoC)、洗浄剤耐性テスト
表面粗さ Ra値、研磨品質、溶接仕上げ 表面粗さ測定、溶接部のピンホール検査
接 合 部 段差なし、死角なし、連続溶接 内視鏡検査、洗浄後の残渣付着評価

 ② 洗浄しやすい形状(Cleanability)
  表 4-2.に洗浄しやすい形状について示す。

表 4-2. 洗浄しやすい形状

観 点 設計で見るポイント バリデーションで確認すべき項目
形 状 角・隙間・袋小路の排除、R形状 洗浄後のATP/タンパク残渣テスト
分 解 性 工具レス分解、洗浄アクセス性 分解工数の実測、洗浄アクセス確認
CIP適合 スプレーパターン、流速、影の有無 CIPカバレッジテスト、流速・温度ログ

 ③ 排水性・液溜まり防止(Drainability)
  表 4-3.に排水性・液溜まり防止について示す。

表 4-3. 排水性・液溜まり防止

観 点 設計で見るポイント バリデーションで確認すべき項目
傾 斜 自己排水構造、最低3°以上 排水テスト(染色水・透明水)、残留水確認
配 管 デッドレグ長さ、U字部の排除 デッドレグ測定、CIP後の水滴残留確認
乾 燥 性 凝縮水対策、通気性 乾燥時間の実測、結露発生の有無

 ④ 分解・点検の容易性(Accessibility)
  表 4-4.に分解・点検の容易性について示す。

表 4-4. 分解・点検の容易性

観 点 設計で見るポイント バリデーションで確認すべき項目
点 検 性 目視可能範囲、内部アクセス性 内部点検の実施、視認性の確認
分 解 性 頻度に応じた分解工数 分解・組立時間の実測、工具使用の有無
安 全 性 分解時の破損・怪我リスク 作業性評価、破損リスクの実測確認

 ⑤ 外部構造の衛生性(External Hygiene)
  表 4-5.に外部構造の衛生性について示す。

表 4-5. 外部構造の衛生性

観 点 設計で見るポイント バリデーションで確認すべき項目
外装形状 水平面排除、埃溜まり防止 外装洗浄テスト、埃堆積の有無
配線・配管 壁面から浮かせ施工、清掃アクセス 清掃性評価、配線固定の安定性
設 置 床との隙間、脚部清掃性 設置後の清掃テスト、排水方向確認

 ⑥ プロセスとの整合性(Process Compatibility)
  表 4-6.にプロセスとの整合性について示す。

表 4-6. プロセスとの整合性

観 点 設計で見るポイント バリデーションで確認すべき項目
洗浄方式 CIP/SIP条件と構造の整合性 CIP/SIP実測ログ、温度・圧力プロファイル
温度・圧力 プロセス条件への耐性 加熱・冷却サイクル試験、圧力保持試験
流体挙動 滞留、混合、気泡混入 流体可視化テスト、滞留時間分布(RTD)

 ⑦ 異物・微生物混入の防止(Contamination Prevention)
  表 4-7.に異物・微生物混入の防止について示す。

表 4-7. 異物・微生物混入の防止

観 点 設計で見るポイント バリデーションで確認すべき項目
潤 滑
・シール
漏れ込み防止、食品グレード潤滑剤 シール部のリークテスト、潤滑剤の混入確認
材料破損 摩耗部品の管理、破片混入リスク 摩耗粉検査、稼働後の破損点検
環境要因 結露、落下物、虫害対策 稼働環境の観察、結露・落下物の有無

5. JIS B 9650-2 × EHEDG 7原則:衛生設計の共通点・相違点

 ① 製品接触面の安全性(材料・表面性状)
  表 5-1.に製品接触面の安全性について示す。

表 5-1. 製品接触面の安全性

観 点 共通事項 JIS B 9650-2 固有要求 EHEDG 固有要求
材 料 食品接触適合、耐腐食性、耐薬品性 材料証明、表面処理の均一性、耐久性の明確化 微生物付着抑制のための表面粗さ基準(例:Ra ≤ 0.8 μm)
表面仕上げ 滑らかで清掃しやすい表面 表面欠陥(割れ・ピンホール)禁止を明確化 EHEDG溶接ガイドラインに基づく連続溶接の推奨
接 合 部 段差・隙間の排除 接合部の強度・耐久性の要求 微生物リスク最小化のための溶接品質基準

 ② 洗浄しやすい形状(Cleanability)
  表 5-2.に洗浄しやすい形状について示す。

表 5-2. 洗浄しやすい形状

観 点 共通事項 JIS B 9650-2 固有要求 EHEDG 固有要求
形 状 隙間・袋小路の排除、R形状 清掃アクセス性の定量的要求 CIPカバレッジの設計基準を明確化
分 解 性 工具レス分解が望ましい 分解頻度に応じた耐久性要求 分解不要のCIP設計を強く推奨
洗浄方式 洗浄可能な構造 洗浄手順との整合性 CIP/SIPの流速・温度・衝突力の基準化

 ③ 排水性・液溜まり防止(Drainability)
  表 5-3.に排水性・液溜まり防止について示す。

表 5-3. 排水性・液溜まり防止

観 点 共通事項 JIS B 9650-2 固有要求 EHEDG 固有要求
傾 斜 自己排水構造 傾斜角度の明示(例:3°以上) デッドレグ長さの厳格基準(例:配管径の1.5倍以内)
配 管 液溜まり防止 配管支持・固定方法の要求 CIP時の流速基準(1.5 m/s 以上など)
乾 燥 性 洗浄後の水残り防止 結露対策の明確化 乾燥性評価(EHEDG乾燥テスト)

 ④ 分解・点検の容易性(Accessibility)
  表 5-4.に分解・点検の容易性について示す。

表 5-4. 分解・点検の容易性

観 点 共通事項 JIS B 9650-2 固有要求 EHEDG 固有要求
点 検 性 内部確認が可能な構造 点検口の寸法・配置の要求 内視鏡検査を前提とした設計推奨
分 解 性 適切な分解工数 分解時の安全性要求 分解不要の衛生設計(CIP/SIP)を重視
作 業 性 作業者の安全確保 人間工学的要求 洗浄作業の最小化を重視

 ⑤ 外部構造の衛生性(External Hygiene)
  表 5-5.に外部構造の衛生性について示す。

表 5-5. 外部構造の衛生性

観 点 共通事項 JIS B 9650-2 固有要求 EHEDG 固有要求
外装形状 水平面排除、埃溜まり防止 外装の耐久性・防錆要求 外部洗浄性の評価基準
配線・配管 清掃しやすい配置 固定方法・支持方法の規定 浮かせ施工の推奨
設 置 清掃しやすい脚部 床との隙間寸法の要求 排水方向の最適化

 ⑥ プロセスとの整合性(Process Compatibility)
  表 5-6.にプロセスとの整合性について示す。

表 5-6. プロセスとの整合性

観 点 共通事項 JIS B 9650-2 固有要求 EHEDG 固有要求
洗浄方式 CIP/SIPとの整合性 洗浄手順書との整合性要求 CIP/SIPの性能基準(温度・圧力・流速)
温度・圧力 プロセス条件への耐性 材料の熱膨張・応力の要求 EHEDGの熱衝撃試験推奨
流体挙動 滞留防止 流体シミュレーションの推奨 RTD(滞留時間分布)評価

 ⑦ 異物・微生物混入の防止(Contamination Prevention)
  表 5-7.に異物・微生物混入の防止について示す。

表 5-7. 異物・微生物混入の防止

観 点 共通事項 JIS B 9650-2 固有要求 EHEDG 固有要求
潤滑・シール 漏れ込み防止 シール材の耐久性要求 食品グレード潤滑剤の使用推奨
材料破損 摩耗部品管理 摩耗粉の発生防止要求 摩耗リスクのFMEA的評価
環境要因 結露・落下物防止 周囲環境の衛生要求 空調流れ・陽圧管理の推奨
【全体的な特徴のまとめ】
① 共通点(JIS × EHEDG)
 • 衛生設計の基本思想はほぼ一致
 • 微生物リスク低減、洗浄性、排水性、異物混入防止を重視
 • 設計段階での衛生リスク排除を最優先とする
② 相違点
  JIS B 9650-2
 • 日本の工場環境・運用を前提とした「実務的・安全性重視」の要求
 • 耐久性、作業性、点検性など“運用面”の要求が強い
 • 設計者・製造者の責任範囲を明確化
  EHEDG
 • 欧州の衛生設計思想に基づく“微生物リスク最小化”が中心
 • CIP/SIP性能、流体挙動、溶接品質など“技術的・科学的”要求が強い
 • 実験的評価(CIPテスト、乾燥テスト、RTDなど)が豊富

6. EHEDG 衛生設計7原則 × 機械構成要素 比較

 「EHEDG 衛生設計7原則 × 機械構成要素」および「JIS B 9650-2 × 機械構成要素」の2種類の体系化してまとめる。構成要素は「タンク/配管/バルブ/充填機/熱交換器」の5カテゴリで統一して示す。

 6-1. 「EHEDG 衛生設計7原則 × 機械構成要素」

 ① 製品接触面の安全性
  表 6-1-1.に各構成要素の製品接触面の安全性について示す。

表 6-1-1. 製品接触面の安全性

機械要素 衛生設計の要点
タンク 材料適合、溶接品質、表面粗さ(Ra ≤ 0.8 μm)
配 管 連続溶接、デッドレグ最小化、表面仕上げ
バルブ 接触材質の適合、シール材の衛生性
充填機 ノズル内部の表面仕上げ、摩耗部品の材質
熱交換器 製品側表面の仕上げ、腐食耐性、溶接品質

 ② 洗浄しやすい形状
  表 6-1-2.に各構成要素の洗浄しやすい形状について示す。

表 6-1-2. 洗浄しやすい形状

機械要素 衛生設計の要点
タンク R形状、袋小路排除、スプレーボール配置
配 管 CIP流速確保、影のない構造
バルブ 分解洗浄性、CIP対応構造
充填機 ノズル内部のCIP性、分解工数最小化
熱交換器 プレート間の洗浄性、チューブ側のCIP性

 ③ 排水性・液溜まり防止
  表 6-1-3.に各構成要素の排水性・液溜まり防止について示す。

表 6-1-3. 排水性・液溜まり防止

機械要素 衛生設計の要点
タンク 底部傾斜、自己排水構造
配 管 3°以上の傾斜、U字部排除
バルブ 排水性の高い構造、デッドスペース最小化
充填機 ノズル内部の排水性、残液防止
熱交換器 プレート・チューブの排水性、残留液確認

 ④ 分解・点検の容易性
  表 6-1-4.に各構成要素の分解・点検の容易性について示す。

表 6-1-4. 分解・点検の容易性

機械要素 衛生設計の要点
タンク 点検口の配置、内部視認性
配 管 クランプ接続、点検可能な配置
バルブ 工具レス分解、内部点検性
充填機 ノズル分解性、部品交換性
熱交換器 プレート分解性、チューブ点検性

 ⑤ 外部構造の衛生性
  表 6-1-5.に各構成要素の分解・点検の容易性について示す。

表 6-1-5. 外部構造の衛生性

機械要素 衛生設計の要点
タンク 外装の水平面排除、脚部清掃性
配 管 壁面から浮かせ施工、清掃アクセス
バルブ 外部洗浄性、配線・配管の整理
充填機 外装の清掃性、カバー構造
熱交換器 外部配管の清掃性、支持構造

 ⑥ プロセスとの整合性
  表 6-1-6.に各構成要素の分解・点検の容易性について示す。

表 6-1-6. 分解・点検の容易性

機械要素 衛生設計の要点
タンク CIP/SIP条件との整合、撹拌条件
配 管 流速・圧力・温度条件
バルブ CIP/SIP対応、流体挙動
充填機 充填速度と衛生性の両立
熱交換器 温度分布、滞留時間、熱衝撃耐性

 ⑦ 異物・微生物混入防止
  表 6-1-7.に各構成要素の異物・微生物混入防止について示す。

表 6-1-7. 異物・微生物混入防止

機械要素 衛生設計の要点
タンク 結露防止、破片混入防止
配 管 摩耗粉防止、漏れ防止
バルブ シール部の漏れ防止、摩耗管理
充填機 ノズル滴下防止、潤滑剤混入防止
熱交換器 プレート割れ・ピンホール防止

 6-2. 「JIS B 9650-2 × 機械構成要素」
     JISはEHEDGよりも「運用性・耐久性・安全性」の要求が強い点が特徴である。

 ① 材料・表面性状
  表 6-2-1.に材料・表面性状について示す。

表 6-2-1. 材料・表面性状

機械要素 JIS B 9650-2 の要求
タンク 材料証明、耐久性、表面欠陥禁止
配 管 表面処理の均一性、腐食防止
バルブ シール材の耐久性、材質適合
充填機 摩耗部品の材質管理
熱交換器 腐食耐性、表面欠陥管理

 ② 清掃性・洗浄性
  表 6-2-2.に清掃性・洗浄性について示す。

表 6-2-2. 清掃性・洗浄性

機械要素 JIS B 9650-2 の要求
タンク 清掃アクセス性、点検口寸法
配 管 清掃手順との整合、分解性
バルブ 分解洗浄性、清掃手順の適合
充填機 分解工数、洗浄手順の整合
熱交換器 プレート洗浄性、分解性

 ③ 排水性
  表 6-2-3.に排水性について示す。

表 6-2-3. 排水性

機械要素 JIS B 9650-2 の要求
タンク 傾斜角度の明示、排水口配置
配 管 傾斜・支持方法の規定
バルブ 排水性の確保
充填機 残液防止構造
熱交換器 排水性の確認、残留液管理

 ④ 点検・保守性
  表 6-2-4.に点検・保守性について示す。

表 6-2-4. 点検・保守性

機械要素 JIS B 9650-2 の要求
タンク 点検口、内部視認性
配 管 点検可能な配置、支持方法
バルブ 分解性、耐久性
充填機 保守性、交換性
熱交換器 プレート点検性、チューブ点検性

 ⑤ 外部衛生性
  表 6-2-5.に外部衛生性について示す。

表 6-2-5. 外部衛生性

機械要素 JIS B 9650-2 の要求
タンク 外装の清掃性、脚部構造
配 管 清掃アクセス、固定方法
バルブ 外部洗浄性、配線整理
充填機 外装清掃性、カバー構造
熱交換器 外部配管の清掃性

 ⑥ プロセス適合性
  表 6-2-6.にプロセス適合性について示す。

表 6-2-6. プロセス適合性

機械要素 JIS B 9650-2 の要求
タンク プロセス条件との整合
配 管 流体条件、圧力・温度
バルブ 流体挙動、耐久性
充填機 充填条件との整合
熱交換器 温度・圧力条件、耐久性

 ⑦ 異物混入防止
  表 6-2-7.に異物混入防止について示す。

表 6-2-7. 異物混入防止

機械要素 JIS B 9650-2 の要求
タンク 結露・落下物防止
配 管 摩耗粉防止、漏れ防止
バルブ シール材の耐久性、破損防止
充填機 滴下防止、摩耗部品管理
熱交換器 プレート破損防止、漏れ管理

 6-3. EHEDG × JIS B 9650-2 統合(高サニタリ化設計)
     構造は 衛生設計7原則 × 機械構成要素 ×(EHEDG+JISの統合要求) で統一して示す。

 ① 製品接触面の安全性(材料・表面性状)
  表 6-3-1.製品接触面の安全性について示す。

表 6-3-1. 製品接触面の安全性

機械要素 統合要求(EHEDG+JIS)
タンク 材料適合(食品接触)、耐腐食性、Ra管理、溶接品質、表面欠陥禁止
配 管 連続溶接、デッドレグ最小化、表面粗さ管理、腐食防止
バルブ 接触材質適合、シール材耐久性、摩耗リスク管理
充填機 ノズル内部の表面仕上げ、摩耗部品材質、破片混入防止
熱交換器 製品側表面の仕上げ、腐食耐性、ピンホール防止

 ② 洗浄しやすい形状(Cleanability)
  表 6-3-2.洗浄しやすい形状について示す。

表 6-3-2. 洗浄しやすい形状

機械要素 統合要求(EHEDG+JIS)
タンク R形状、袋小路排除、スプレーボール配置、清掃アクセス性
配 管 CIP流速確保、影のない構造、分解性
バルブ CIP対応、分解洗浄性、清掃手順との整合
充填機 ノズルCIP性、分解工数最小化、洗浄手順適合
熱交換器 プレート洗浄性、チューブCIP性、分解性

 ③ 排水性・液溜まり防止(Drainability)
  表 6-3-3.に排水性・液溜まり防止について示す。

表 6-3-3. 排水性・液溜まり防止

機械要素 統合要求(EHEDG+JIS)
タンク 自己排水構造、底部傾斜、排水口配置
配 管 3°以上の傾斜、U字部排除、支持方法
バルブ 排水性の高い構造、デッドスペース最小化
充填機 ノズル内部の排水性、残液防止
熱交換器 プレート・チューブの排水性、残留液管理

 ④ 分解・点検の容易性(Accessibility)
  表 6-3-4.に分解・点検の容易性について示す。

表 6-3-4. 分解・点検の容易性

機械要素 統合要求(EHEDG+JIS)
タンク 点検口配置、内部視認性、分解性
配 管 クランプ接続、点検可能な配置
バルブ 工具レス分解、内部点検性、耐久性
充填機 ノズル分解性、部品交換性
熱交換器 プレート分解性、チューブ点検性

 ⑤ 外部構造の衛生性(External Hygiene)
  表 6-3-5.に外部構造の衛生性について示す。

表 6-3-5. 外部構造の衛生性

機械要素 統合要求(EHEDG+JIS)
タンク 外装の水平面排除、脚部清掃性、外装耐久性
配 管 浮かせ施工、清掃アクセス、固定方法
バルブ 外部洗浄性、配線整理
充填機 外装清掃性、カバー構造
熱交換器 外部配管清掃性、支持構造

 ⑥ プロセスとの整合性(Process Compatibility)
  表 6-3-6.にプロセスとの整合性について示す。

表 6-3-6. プロセスとの整合性

機械要素 統合要求(EHEDG+JIS)
タンク CIP/SIP条件、撹拌条件、温度・圧力耐性
配 管 流速・圧力・温度条件、流体挙動
バルブ CIP/SIP対応、流体挙動、耐久性
充填機 充填条件との整合、衛生性の両立
熱交換器 温度分布、滞留時間、熱衝撃耐性

 ⑦ 異物・微生物混入防止(Contamination Prevention)
  表 6-3-7.に異物・微生物混入防止について示す。

表 6-3-7. 異物・微生物混入防止

機械要素 統合要求(EHEDG+JIS)
タンク 結露防止、破片混入防止、落下物対策
配 管 摩耗粉防止、漏れ防止
バルブ シール部漏れ防止、摩耗管理
充填機 滴下防止、潤滑剤混入防止
熱交換器 プレート割れ・ピンホール防止

 6-4. 食品カテゴリ別(乳・飲料・惣菜・粉体)特化
     カテゴリごとに「衛生設計で特に重視すべきポイント」を抽出して示す。

 ① 乳製品(ミルク・ヨーグルト・クリーム)
  表 6-4-1.に乳製品の衛生設計で特に重視すべきポイントについて示す。

表 6-4-1. 乳製品の衛生設計ポイント

衛生設計原則 特化ポイント
表面性状 タンパク質付着防止、Ra管理の厳格化
洗浄性 CIP/SIPの完全性、バイオフィルム対策
排水性 乳脂肪残渣の排水性確保
プロセス整合 高温殺菌(HTST/UHT)との整合
異物混入 プレート熱交換器のピンホール管理

 ② 飲料(清涼飲料・茶・コーヒー)
  表 6-4-2.に飲料の衛生設計で特に重視すべきポイントについて示す。

表 6-4-2. に飲料の衛生設計ポイント

衛生設計原則 特化ポイント
表面性状 糖分付着防止、腐食対策
洗浄性 CIPの流速・衝突力確保
排水性 糖液の粘性による残液対策
プロセス整合 炭酸飲料の圧力管理
異物混入 ノズル滴下防止、フィルター管理

 ③ 惣菜(固形物・粘性物・具材入り)
  表 6-4-3.に惣菜の衛生設計で特に重視すべきポイントについて示す。

表 6-4-3. 惣菜の衛生設計ポイント

衛生設計原則 特化ポイント
表面性状 粘性物の付着防止、溶接の段差ゼロ化
洗浄性 固形物の滞留防止、分解洗浄性重視
排水性 粘性物の排水性、残渣ゼロ化
プロセス整合 低流速領域の滞留対策
異物混入 摩耗部品の破片混入リスク管理

 ④ 粉体(小麦粉・砂糖・ミルクパウダー)
  表 6-4-4.に粉体の衛生設計で特に重視すべきポイントについて示す。

表 6-4-4. 粉体の衛生設計ポイント

衛生設計原則 特化ポイント
表面性状 粉付着防止、静電気対策
洗浄性 ドライクリーニング前提の構造
排水性 水洗いしない前提での粉落ち性
プロセス整合 粉体流動性、ブリッジ対策
異物混入 パッキン摩耗粉、金属片混入防止

7. CIP/SIP バリデーションの実務

 CIP/SIPの検証方法について、EHEDGとJISの違い。流速、乱流、温度プロファイルなど、技術的な内容が多いが簡潔にまとめる。EHEDGは流速1.5~2 m/s、乱流基準、温度プロファイルに厳格な要求があるが、JISはもう少し柔軟で、数値基準は少ない。EHEDGとJISの違いを使って比較し、各セクションを簡潔に説明する。
 CIP/SIPについては、EHEDGは「どこまで洗えているかを数値で攻める」、JISは「衛生的に洗える構造かどうかを守る」という役割分担にはっきり分かれる。

7-1. 全体像:EHEDG vs JIS(CIP/SIPバリデーションのスタンス)

 表 7-1. にCIP/SIPバリデーションの全体像を示す。

表 7-1. CIP/SIPバリデーションの全体像

観 点 EHEDG側の特徴 JIS B 9650-2側の特徴
基本スタンス 洗浄・滅菌“性能”を数値で規定し、バリデーションで実証する 「衛生的に洗浄可能な構造」であることを一般要求として規定
流速・乱流 乱流域(例:1.5〜2 m/s)など、目標値を明示しやすい 流速値は規定せず、「洗浄可能な配管・機器構造」であることを要求
温度プロファイル 最低温度・保持時間・コールドスポットを定義し、マッピングで確認 「洗浄・殺菌が可能であること」を要求し、条件設定はユーザー側に委ねる
バリデーション カバレッジテスト、RTD、温度マッピングなど“試験ベース”が前提 構造・材料・取説・保守性など“設計・運用ベース”が中心
7-2. 流速・乱流:EHEDGは“数値”、JISは“構造”
  ① EHEDG側
  • 設計指針としての流速:
  CIP時の配管流速を 1.5〜2 m/s(乱流域) とすることが、各種EHEDG系資料や業界ガイドで繰り返し示される。
  • 乱流確保の意味合い:
   ・バイオフィルム剥離
   ・界面せん断力の確保
   ・デッドレグ・枝管の洗浄性向上
  • 設計+バリデーションの一体化:
配管径・ポンプ能力・圧損計算からCIP流速を設計 → 実機で流量・圧力を測定し、必要ならトレーサー試験やカバレッジテストで裏付ける。

  ② JIS B 9650-2側
  • 規格としては流速値を“言わない”:
  JIS B 9650-2は「洗浄可能な構造」「清掃性」「排水性」を要求するが、具体的な流速やRe数は規定しない。
  • 日本の実務では“別資料”で補完:
   例えばサニタリーパイプの技術資料では、CIP時の目安として 流速1.6 m/s以上+乱流域 を推奨するなど、事実上EHEDGと同じ世界観で設計している。
  • バリデーションとの関係:
  「JIS準拠=構造的に洗える前提」「流速・乱流=ユーザー仕様・業界ガイドで上乗せ」という分担になりやすい。

7-3. 温度プロファイル・SIP:EHEDGは“コールドスポットまで”、JISは“可能性の担保”
  ① EHEDG側
  • SIPの考え方:
  「装置内のすべての製品接触面が、定義した温度(例:121 ℃)以上で、所定時間(例:15分)保持されること」を前提に、
  a. 温度センサーを複数配置
  b. コールドスポットを探索
  c. 立ち上がり・保持・冷却のプロファイルを記録
 といった温度マッピング+最悪条件検証を求める発想が強い。
 • CIPでも温度は“性能パラメータ”:
アルカリ洗浄・酸洗浄の最適温度帯を定め、流速・濃度・時間とセットで「洗浄サイクル」としてバリデーションする。

  ② JIS B 9650-2側
  • 規格としては“条件値”を持たない:
  「洗浄・殺菌が可能な構造」「洗浄・殺菌手順と矛盾しない設計」であることを要求するが、温度・時間の数値はユーザー側の手順書に委ねる。
   • 結果として:
  温度プロファイルのバリデーションは、JISというよりHACCP/GMP/社内SOPの世界 で決まり、JISは「その条件を実現できる構造か?」を見る立場になりやすい。
7-4. バリデーション実務フローの違い(EHEDG vs JIS)
  ① EHEDGを前面に出した場合
   • URS段階で数値を明記:
    a. CIP流速:1.5〜2 m/s以上
    b. Re数:乱流域
    c. 洗浄温度・時間・濃度
    d. SIP温度・保持時間・許容偏差
   • FAT/SAT・PQでの検証:
    a. 流量・圧力測定 → 設計値との整合
    b. カバレッジテスト(着色水・蛍光剤など)
    c. 温度マッピング(コールドスポット確認)
   → 「EHEDG的に妥当なCIP/SIP性能がある」と言える状態まで持っていく。

  ② JIS B 9650-2を軸にした場合
   • 設計・製造段階のチェック:
    a. 材料・表面・溶接・排水性・清掃性・点検性がJIS要求を満たすか
    b. 取扱説明書に洗浄・殺菌手順が明記されているか
   • バリデーションとの関係:
    a. JISは「構造・安全・保守」の合格ライン
    b. CIP/SIPの数値的性能は、ユーザー側のSOP・品質システムで定義しGMP/HACCP文脈でバリデーションする

8. 最後に

 食品機械の衛生設計は、EHEDGの“性能を攻める設計思想” と JIS B 9650-2の“衛生・安全・保守を守る一般要求” を両輪として統合することで、初めて実務的に成立します。EHEDGは材料・洗浄性・排水性・滞留ゼロ・CIP/SIP性能・流体挙動・空調環境まで踏み込んで微生物リスクを最小化する一方、JISは食品機械としての清掃性・点検性・耐久性・安全性を体系的に規定する。

 衛生設計レビューでは、これらをユーザー要求仕様URS→工場受入試験FAT→据付・立上げSAT→性能適格性・バリデーションPQの各段階で、タンク・配管・バルブ・充填機・熱交換器といった機械別にチェックリスト化し、○/△/×で評価することで、設計・据付・運転・洗浄・保守の全ライフサイクルで衛生リスクを可視化できる。

 液体・粉体・粘性食品といった製品特性に応じて重点ポイントを変えながら、EHEDGで“洗える性能”を担保し、JISで“衛生的に使い続けられる構造”を確保することが、食品工場の衛生設計レビューの最適解になる。

以上

【参考引用先】

1. EHEDGガイドラインEHEDG Doc.8「Hygienic Design Principles」
2. EHEDGガイドラインEHEDG Doc.13「Wet-cleaned Open Equipment」
3. EHEDGガイドラインEHEDG Doc.32「Air Handling Systems in the Food Industry」
4. JIS B 9650-2「食料品加工機械の安全及び衛生に関する 設計基準通則−第2部:衛生設計基準」
5. 技術レポート「食品機械の衛生とは ? 衛生設計の基礎知識」木本技術士事務所 HP
https://www.kimoto-proeng.com/report/876