2026/01/19
技術用語解説82『純 水(pure water)』
1. はじめに
三品産業(食品・医薬品・化粧品)における純水は「品質の安定」「安全性の確保」「設備保護」の三本柱で活用されいる基盤資源である。特に飲料や薬品の希釈水、化粧品の基材水、製造設備の洗浄水として不可欠である。
食品では風味と衛生、医薬品では安全性と精度、化粧品では成分安定性を支える役割を果たしている。
2. 純水の基本的な性質
- • 不純物が極めて少ない:
- カルシウムやマグネシウムなどの硬度成分、塩類、有機物を除去。
- • スケールが発生しない:
- 蒸発後も白い水垢が残らず、熱交換器や配管の効率低下を防止。
- • 溶解力が高い:
- 微量の不純物を溶かし込み、製品や設備の洗浄に有効。
3. 食品産業での活用
- • 飲料の割り水:
- 濃縮還元ジュースや乳飲料の希釈に使用。不純物が少ないため風味や品質が安定。
- • 製造設備の洗浄水:
- 乾燥後に水垢が残らず、衛生的な環境を維持。
- • ボイラー用水:
- 蒸気を利用する食品工場で腐食やスケールを防ぎ、安定稼働を支える。
4. 医薬品産業での活用
- • 注射用水・製剤用水:
- 超純水レベルまで精製し、微細な不純物も排除。安全性と有効性を確保。
- • 薬品の希釈水:
- 成分の安定性を維持し、変質や沈殿を防ぐ。
- • 分析用ブランク水:
- 微量分析において正確な数値を得るため、純度の高い水が必須。
5. 化粧品産業での活用
- • 基材水(主成分水):
- 化粧水や乳液のベースとして利用。不純物が少ないため成分の安定性が高い。
- • 希釈水:
- 香料や有効成分を均一に分散させるために使用。
- • 製造環境の洗浄水:
- 残留物やウォーターマークを防ぎ、製品の見た目や品質を守る。
6. 設備・環境面でのメリット
- • 省エネ・コスト削減:
- スケール防止により熱効率が向上し、エネルギー消費を抑制。
- • 環境負荷低減:
- 薬品を使わない純水製造システムの導入でクリーンな作業環境を構築。
- • 安定供給:
- RO膜やイオン交換樹脂を組み合わせたシステムで、工場全体に安定的に供給可能。
7. 純水の管理基準の代表例
純水の管理は「導電率」「比抵抗」「TOC(全有機炭素)」「微生物数」などで規定される。
表1. に純水の管理基準を整理して示す。
表1. 純水の管理基準
| 指標 | 一般純水基準 | 超純水基準 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 導電率 | 1.0 μS/cm以下 | 0.055 μS/cm(25℃) | 不純物イオン量の指標 |
| 比抵抗 | 0.1~1.5 MΩ·cm | 18 MΩ·cm近く | 高いほど純度が高い |
| TOC | 0.5~1 mg/L以下 | 0.05 mg/L以下 | 有機物汚染の指標 |
| 微生物数 | 100 CFU/mL以下(食品) | 10 CFU/100mL以下(医薬品) | 製品用途により厳格化 |
注記:基準はJIS、ISO、ASTM、日本薬局方などで用途別に規定されている。
8. 管理の実務ポイント
- • 連続モニタリング:
- 導電率・比抵抗をオンライン計測し、異常を即検知。
- • 定期試験:
- TOC・微生物検査を定期的に実施し、トレンド管理。
- • 設備保守:
- RO膜・イオン交換樹脂・EDI装置の交換周期を明確化。
- • 分岐管理:
- 用途別に配管を分け、食品用・医薬品用で交差汚染を防止。
- • 教育・チェックリスト:
- 工場チームに「純水の用途と基準」を明示し、日常点検を習慣化。
以上