2025/12/31
2025年の食品・飲料業界は、物価高や猛暑、サステナビリティの加速、そして働き方の多様化といった複数の潮流が交錯した一年だった。市場の構造変化が進む一方で、企業の社会的責任や新たな価値創造に向けた取り組みも際立ち、業界全体が次のステージへ移行しつつあることを印象づけた。
2025年の清涼飲料業界では、物価高による買い控えや観測史上最高レベルの猛暑が影響し、生産量が伸び悩んだことが大きなニュースとなった。特に原材料価格の高騰は深刻で、コーヒー豆などの主要原料の値上がりが続き、各社は相次いで値上げに踏み切った。小型PETボトルの一部はついに200円台へ突入し、価格改定が市場構造そのものに影響を与えた一年だった。
一方で、価格上昇にもかかわらず販売数量は前年並みを維持したという調査結果もあり、消費者の“価格慣れ”が進んでいることが示唆された。ミネラルウォーターや茶系飲料は猛暑による需要増で堅調に推移し、特に無糖・健康志向の定着が市場を支えた。
家庭内調理の効率化ニーズが高まる中、冷凍食品市場は2025年も拡大を続けた。業界関係者によるトレンド調査では、「冷凍野菜」が2025年の大賞に選ばれ、価格高騰する生鮮野菜の代替として注目を集めた。ワンプレート冷凍食品や冷凍スイーツなど、利便性と満足度を両立した商品群も存在感を強めた。また、コンビニ各社による冷凍食品の強化や、冷凍ラーメン・冷凍アサイーボウルといった新ジャンルの拡大も、冷凍食品の“日常食化”を後押しした。冷凍技術の進化とともに、家庭の食卓における冷凍食品の役割はますます広がっている。
2025年は、飲料メーカー各社がサステナビリティ領域で大きく動いた年でもあった。アサヒ飲料は複数自治体と連携し、PETボトルの水平リサイクル(ボトルtoボトル)事業を推進。地域と協働した循環型モデルの構築が進んだ。また、日本コカ・コーラはスタートアップ企業と協働し、茶殻バイオ炭やAIによる節水技術など、サプライチェーン全体の環境負荷低減に向けた取り組みを加速させた。
こうした動きは、単なる企業のCSR活動にとどまらず、事業戦略の中核としてサステナビリティが位置づけられていることを示している。
2025年の食品・飲料業界では、働き方の多様化に向けた取り組みも注目された。サッポロビールは業界10社と連携し、障害者同士の交流会「エッキョウサミット」を初開催。企業の枠を超えた情報交換や課題解決の場を設け、障害者活躍推進の新たなモデルケースとなった。この取り組みは、単なる雇用促進にとどまらず、業界全体で多様な人材が活躍できる環境づくりを進める動きとして評価されている。
飲料各社は、価格改定や市場変化に対応しながらも積極的に新商品を投入した。伊藤園は「お~いお茶」や「1日分の野菜」など主力ブランドの値上げを発表しつつ、商品刷新を進めた。
また、JR東日本の「アキュアメイド」からは酸化防止剤不使用のりんごジュースが登場し、素材の良さを訴求する商品が支持を集めた。
2025年の食品・飲料業界は、価格高騰や猛暑といった外部要因に揺さぶられながらも、冷凍食品の拡大、サステナビリティの深化、多様な働き方の推進など、次の時代に向けた変革が進んだ一年だった。
消費者の価値観が多様化する中で、企業は単なる商品提供にとどまらず、環境・社会・生活者の課題に寄り添う姿勢が求められている。2026年以降、これらの動きがどのように結実していくのか、引き続き注目したい。
以上