技術用語解説33『アレルゲン(Allergen)』

技術用語解説33『アレルゲン(Allergen)』

 本来生き物の体を守るための機構である免疫の働きが、体に不都合な症状を起こすことがある。アレルギーもそのひとつで、日本人の3人に1人は、なんらかの物質に対するアレルギーの症状を持っていると言われている。
 食べ物によって引き起こされる異常反応のうち、免疫の仕組みによって発症するものを食物アレルギーと呼ぶ。鶏卵、牛乳、肉、大豆などが主要な食物アレルギーの原因物質(アレルゲン)として知られている。ほとんどの人はこれらの食品を食べても何の症状も起こさないが、食物アレルギーの患者では、アレルゲンを摂取することによって死に至る重篤な症状 を引き起こすこともある。
 食物アレルギーを起こす人たちの血液の中には、アレルゲンと結合するIgE抗体が含まれていることが多い。
IgEはマスト細胞に結合する。体内に侵入したアレルゲンがマスト細胞上のIgE抗体に結 合すると、マスト細胞はヒスタミンなどの化学伝達物質を放出する。化学伝達物質は、浮腫を生じさせたり、粘液を著しく分泌させたり、平滑筋を収縮させて呼吸困難を引き起こしたりする。
 厚生労働省の調査では、これまで3大食物アレルゲンと言われてきた卵、牛乳、大豆に加えて、魚介類による食物 アレルギーが増加していることが報告されている。平成11年度の報告によると、1500を越える医療設へのアンケー トの結果、原因食物アレルゲンの頻度は、卵、牛乳、小麦、そば、えび、落花生、大豆、チーズ、キウイフルーツの順で、これまで3大アレルゲンのなかに入れられていた大豆が後退し、小麦が3位の座を占めた。またそば、えびについで落花生が大豆より上位にあることは注目される。
 この調査では、血液中のIgE値が必ずしも即時型過敏症の症状を起こす患者において高い価を示さないことも報告されている。したがって、IgE検査のみでは食物アレルギー発症の可能性を論ずることは困難であると考えられる。臨床症状では、即時型の重篤な症状で医療施設へ来る患者が増加していることが報告されている。特に重篤な症状となりやすい呼吸器症状を引き起こす食物として、キウイフルーツ、そば、小麦、落花生、大豆があげられている。
 厚生労働省では平成13年度より重篤なアレルギー疾患を惹起する実績のあった食品につ いて、当該食品を原材料として表示させる[特定原材料表示に関する制度を施行した。この うち症例が多いかまたは重篤である卵、牛乳、小麦、そば、エビ、カニ、落花生の7品目については省令で規定し表示を義務づけている。あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、バナナ、牛肉、アーモンド、カシューナッツ、くるみ、ごま、サケ、さば、大豆、鶏肉、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチンの21品目については通知として表示を奨励している。表示対象となるのは食品衛生法第11条 の規程に基づく食品衛生法施行規則別表第3に定める食品または添加物であって販売の用に供するものである。すなわち表示の対象となるのは、容器包装された加工食品であり、たとえば卵を使った加工食品には表示義務があるが、卵そのものは一見して卵であることがわかるので表示義務はないとされている。

以上