『コロナ禍の中、想い浮かんだ勇気がでる言葉』の一節

新型コロナウイルス感染拡大がいっこうに納まらない。緊急事態宣言に伴う自粛延長が本日、正式に決定した。全都道府県を対象としたまま5月31日まで25日間延長すると表明があった。まだ続けるのかと、ただため息である。

そんな中で“勇気がでる言葉”として、次の一節が想い浮かんだ。江戸時代の儒学者である佐藤一斎の著作『言志四録(げんししろく)』から一節をご紹介する。

一燈(いっとう)()げて暗夜(あんや)()く。 暗夜(あんや)(うれ)うること(なか)れ、只一燈(ただいっとう)(たの)め」

「言志晩録」の第13条に収められている一節である。
【意味】
提灯を掲げて暗い夜道を歩む。夜道の暗さ(自分の置かれている厳しい状況)を嘆き悲しむな。只ひたすらに提灯の一燈(僅かな可能性)を信じて迷わず進め
である。

「一燈を提げて暗夜を行く」とある。
『暗夜』とは真っ暗で先の様子が把握できない状況であるから、かなりの窮地に追い込まれた状況である。人はピンチを迎えると、誰もが不安を感じ心を乱しがちになる。心が乱れると弱気になり迷いが生じる。

一方、『一燈』とは孤立する暗夜の中で自分が頼りにできる僅かな灯りである。救いの可能性のある最後の命綱である。
窮地にいて冷静な判断のできなくなった者は、慌てふためき命綱を手放すどころか、とんでもない選択をすることもしばしばである。

ならば、このようなピンチにどう対応するか?その対応を教えてくれるのがこの句の真髄。
「暗夜を憂うること勿れ」とは、窮地にある現在の境遇を嘆き悲しむなということである。
嘆き哀しんで悲劇のヒロインを演じるほど、救いのナイトを求める救済幻想が心の底で強くなる。これは、自らの自立心を失うことになりうるから、益々弱気や迷いが増徴し、確実に自滅の方向に進む。

救済幻想に頼るよりも現実的な命綱である提灯の明かりを頼りにし、可能性が少ないからこそ一心不乱に心を注ぐ事が大切になる。これが、「只一燈を頼め」ということである。
心を弱くして万に一つも無い妄想に騙され右往左往することなく、きっぱりと迷いを捨て、必ずやり抜くという心で前に進めということである。

迷いを捨てて、この1ヶ月の自粛で終息に向かわせるための一人ひとりの行動が“封じ込めの分水嶺”となることを肝に銘じて前に進めということである。

最後に、この言葉の一節で締め括ることにする。
「弓を引くとき、十分に引き絞ってから、的に当てれば、無駄な矢はない。人の仕事も何よりも準備が肝要である。満を引いて度に中れば、発して空箭無し。人事宜しく射の如く然るべし」
—『言志晩録』第87条—

【意味】
弓を充分に引き絞ってから放つ矢のように、なにごとも準備を万端にして臨めば成功するということである。

この新型コロナウイルス感染拡大が終息されたその後のために、今は新たな力を蓄えるときと考え、いつまた新たな感染症が発生するかもしれない。だからこそ今は準備を進めるとともに、さらなる感染症との戦いに備えることに努めることにしよう。

以上