『ワールドカップ2026戦術レビュー ― 日本代表が突き当たった「ベスト16の壁」の正体』

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 FIFAワールドカップサッカーが終わると、1か月の熱気がふっと遠くなる感じである。スペインの優勝で締め括る結果となった。ここでは、日本代表の戦いを中心に、この大会全体を一度落ち着いて振り返ってみよう。

今大会は、北中米3か国共催で行われ、日本代表はF組に入った。一次リーグを2位で通過し、決勝トーナメント1回戦でブラジルと対戦した。結果は1対2で敗戦。通算成績でもブラジルには大きく負け越しており、今回も「あと一歩」が届かなかった形である。それでも、32か国から48か国に拡大した新フォーマットの中で、きちんと一次リーグを突破したことは、日本が「出るだけの国」から「トーナメント常連国」へと定着しつつある証でもある。

一次リーグでは、内容としても手応えと課題がはっきり出た大会であった。JFAの公式レポートでは、第2戦のチュニジア戦で日本代表がワールドカップ史上最多となる4得点を挙げて快勝したことが強調されている。この試合は、ハイプレスからのボール奪取と素早い縦への展開がうまくはまり、日本の現在のスタイルがもっとも鮮やかに表現されたゲームでした。

一方で、初戦のオランダ戦、第3戦のスエーデン戦は入りの硬さやコンディション調整の難しさが見える内容で、終盤にかけてバタつく場面もあった。新しい開催国、長距離移動、時差など、外的要因も含めた「ワールドカップの難しさ」が改めて浮かび上がったと言える。

大会を語る上で避けて通れないのが、主力の負傷離脱である。攻撃の中心だった三笘薫選手や南野拓実選手は大会直前のけがでメンバーから外れ、さらに初戦の途中で久保建英選手も不在となった。森保ジャパンの攻撃をけん引してきたタレントがそろって欠けたことで、相手にとってもっとも怖い「個で違いを作るカード」が減ってしまったことは否めない。

決勝トーナメントのブラジル戦では、前田大然選手や伊東純也選手を先発起用し、スピードで背後を狙い続けましたが、試合の流れをがらりと変える“切り札”に欠けた印象も残った。元日本代表の吉田麻也選手も、これまで日本の強みだったシャドーの選手層が薄くなった点を指摘しており、「選手層」というキーワードは、今大会を象徴する言葉のひとつになったように感じた。

今大会前、日本代表には「ベスト8に届くのではないか」という期待が、日本国内の調査でも強く表れていた。あるアンケートでは、最も多い予想が「ベスト8」で約3割、「ベスト4」「ベスト16」「優勝」がそれに続いていた。この数字は、かつての「グループ突破できれば御の字」という時代から、サポーターの意識が明確に変わっていることを物語っている。

森保監督は大会前、「勝つための最高の26人を選んだ」と語り、継続性と新陳代謝を両立させたメンバー構成で臨んでいた。実際、チームとしての成熟度や戦い方の共通理解は過去の大会よりも高く、特に守備から攻撃への切り替えのスピードは、世界の強豪と比べても遜色ないレベルに達していた。

その一方で、相手に試合を支配されたときに、流れを変えるオプションやシステム変更の幅は、まだ限られていたように感じる。選手層の問題に加え、90分を通して相手の変化に柔軟に対応していく「ゲームマネジメント力」は、次のサイクルへの大きな宿題である。

日本代表だけでなく、今大会の全体像から見えてきた、いくつかのトレンドがある。第一に、48か国制の導入により、アジアやアフリカ、中北米の新興国がこれまで以上に存在感を示したことである。かつては「番狂わせ」と言われた結果が、もはや番狂わせとは呼べないほど、各国の底上げが進んでいる。

第二に、フィジカルとスピードだけでなく、試合中の戦術変更や可変システムなど「戦術の柔軟性」が勝負を分ける場面が増えたことである。選手がピッチ上で自律的にポジションを変え、チームとして狙いを共有できるかどうかが、ベスト8以上の壁を越える条件になりつつある。

その意味で、日本代表は「組織力」では世界の中でしっかりとした位置を確保した一方、個の決定力と戦術的柔軟性という二つの軸で、今後さらにレベルアップが求められる立場にいると言える。

JFAは「2050年までにワールドカップを日本で開催し、その大会で優勝する」という長期ビジョンを掲げている。今回の大会は、その道のりの中間地点として、改めて「世界のトップとの距離」を測る機会になった。

一次リーグ突破は「当たり前」になりつつあり、ベスト16で敗れてもサポーターからは悔しさが先に立つようになったこと自体、日本サッカーがここまで歩んできた道のりの成果である。同時に、その悔しさをどう次の4年につなげるかが、選手・スタッフだけでなく、Jリーグや育成年代、そしてサポーターを含めた日本サッカー全体に問われている。

怪我で大会に出られなかった選手たちも含め、経験値を積んだ世代と、新しく台頭してくる若い世代がどう融合していくのか。48か国時代のワールドカップを、日本がどのように「常にベスト8を狙うチーム」として戦っていくのか。今日からの4年間が、また静かに始まっている。

以上