2026/02/26
ミラノ・コルティナ五輪で日本選手が見せた躍動の背景には、世界のトップアスリートが信頼を寄せる日本発の精密技術があった。スノーボード、フィギュアスケート、モーグルという異なる競技で、それぞれのメーカーが独自の素材開発と加工技術を武器に、選手のパフォーマンスを最大限に引き出した点は特筆すべき成果である。ここでは、ヨネックスのカーボンボード、山一ハガネのフィギュアブレード、マテリアルスポーツのスキークラウドエッジが選手の活躍を支えていた。
ミラノ・コルティナ五輪のスノーボード競技では、ヨネックスのロゴが空中で何度も舞い、世界中の視聴者の目を引いていた。男子ビッグエアでは木村葵来選手がヨネックス製ボードで金メダルを獲得し、男子ハーフパイプでも戸塚優斗選手が同社のボードで頂点に立った。
ヨネックスはもともとラケットスポーツで培った高弾性カーボンの積層技術をスノーボードに応用している。この技術が生むメリットは、空中での姿勢制御が容易になり、複雑な回転技を安定して実行できる軽量化、踏み込んだ瞬間のエネルギーを効率よく返し、ジャンプの高さと飛距離を伸ばす高い反発力、高速滑走時の安定性とトリック時の操作性を両立してねじれ剛性の最適化が図られている。
海外メーカーが強い市場で、ヨネックスが表彰台を席巻した背景には、こうした素材工学に根ざした性能向上があった。世界のトップ選手が「軽さと反応の速さが別次元」と評価するのも納得の仕上がりだからだ。
フィギュアスケートでは、名古屋の特殊鋼メーカー・山一ハガネが製造する国産ブレードが注目を集めた。「折れない国産ブレード」として紹介され、りくりゅうペアの金メダルを支えた技術として話題になった。山一ハガネのブレードが評価される理由は、ジャンプ着氷時の衝撃に耐えつつ、しなやかさを保つことで刃こぼれを防ぐ高純度特殊鋼による強度と靭性の両立、ステップやスピンで求められる微細なエッジコントロールを可能にする精密加工・研磨によるエッジの均一性、摩耗しにくく、シーズンを通して安定したパフォーマンスを維持できる長寿命化である。
フィギュアスケートは氷上の“ミリ単位の競技”。その中で、ブレードの品質は演技の安定性に直結する。山一ハガネの技術は、選手が安心して高難度ジャンプに挑める環境を作り、結果としてメダル獲得につながった。
モーグル競技では、マテリアルスポーツが開発したクラウドエッジをつかったスキー板が選手の滑りを支えていた。クラウドエッジは、雪面状況に応じてエッジの接地圧を最適化する構造で、エッジが雪面に吸い付くように働き、暴れを抑えるコブ斜面での安定性向上、接地圧が均一化されることで、スピードを落とさずにターンに入れるターンの切り替え性、板のバタつきが減り、エアの精度が向上するジャンプ前後の姿勢制御の容易性などの効果をもたらした。
モーグルは高速でコブを刻みながら、ジャンプで技を決める複合競技である。クラウドエッジのような“雪面追従性を高める技術”は、選手の安定した滑りと攻めのライン取りを可能にし、結果として高得点につながった。
今回のミラノ・コルティナ五輪では、「軽さ」「強さ」「しなやかさ」「精密さ」という日本の素材技術の強みが、競技の異なる3つの舞台で鮮やかに花開した。カーボン積層技術(ヨネックス)、特殊鋼の精密加工(山一ハガネ)、雪面追従構造の革新(マテリアルスポーツ)、これらはすべて、長年の研究開発と現場の声を反映した“ものづくりの結晶”である。選手の努力と才能に加え、こうした技術が背中を押したことで、日本勢は過去最多のメダル獲得という歴史的成果を残した。
ミラノ・コルティナ五輪を機に、日本のスポーツ工学はさらに世界から注目される存在になったといえる。今後、どの競技でどんな新技術が生まれるのか、楽しみは尽きない。
以上