2026/07/06
◇ 第38回『ものづくりワールド東京』視察2026.07.01
- 展示会の全体:
- ・会期:2026年7月1日(水)〜 3日(金)10:00〜17:00
- ・会場:東京ビッグサイト(東1~3、7・8、西1~4、南1・2ホール)
- ・出展規模:2,000社以上(世界最大級の製造業展示会)
- ・主催:RX Japan 合同会社
- ・来場者(2025年実績):出展社数約1,800社 来場予定者数は約65,000名
- ・目的:AIを活用した技術が食品工場の自動化、自律化にどのように今後関わっていくのかを機械要素技術展、新設のものづくりNEXT展とフィジカルAI展を視察し情報収集を行う。
東京ビッグサイト展示場正面
1.構成展示会(主な視察先9展)
製造業のバリューチェーンをほぼ網羅する構成。 特に以下の展示会は、現場改善・DX・設備投資、フィジカルAI、機械要素技術の観点で構成:
- ・設計・製造ソリューション展(CAD/CAE/ERP/生産管理)
- ・機械要素技術展(モーター、ベアリング、ねじ、ばね、加工技術)
- ・工場設備・備品展(省エネ、保全、安全、物流)
- ・次世代3Dプリンタ展(AM、材料、造形サービス)
- ・計測・検査・センサー展(品質保証・自動検査)
- ・製造業DX展(IoT、MES、AI、デジタルツイン)
- ・ヘルスケア・医療機器開発展(医療部品・OEM)
- ・ものづくりNEXT(新設)
- ・フィジカルAI展(新設)
2. Focus1【フィジカルAI展】注目した出展ブース
2-1. 株式会社東京測器研究所(TML):https://tml.jp/
注目技術:ひずみゲージ技術を応用した高精度の力覚センサー
東京測器研究所は、ロボットの「触覚」を担う力覚センサーを中心に展示していた。特に、ひずみゲージ技術を応用した高精度の力覚センサーは、ロボットが物体に触れた瞬間の微妙な力の変化を捉えることができ、従来のロボットでは難しかった繊細な作業を可能にする。例えば、柔らかい食品や不定形物をつかむ際に、力を入れすぎて破損させることなく、適切な圧力で把持することがでる。フィジカルAIの世界では、ロボットが周囲の状況を理解し、自律的に判断するための“実世界の感覚器官”が不可欠だが、力覚センサーはその中でも最も重要な要素の一つ。
食品工場の自動化においても、盛り付けやピッキングなど、人の繊細な感覚が必要だった工程の自動化を大きく前進させる技術として注目されていた。
写真1.TML展示ブース
2-2. DIC株式会社:http://www.dic-global.com/
注目装置:表面品質チェックツール「Tacthancer」/空圧グリッパー「MoR – C」
DICの展示ブースでは、表面品質チェックツール「Tacthancer」と空圧グリッパー「MoR – C」がデモ展示されていた。「Tacthancer」は、表面の微細な凹凸・傷・摩耗を高精度に検出できるセンシングツールで、従来の目視検査では見落としやすい“微細な欠陥”を数値化できる点が特徴。材料表面の状態をリアルタイムで評価できるため、樹脂・フィルム・金属など幅広い製品の品質保証に活用できます。また、AI画像認識と組み合わせることで、表面品質の自動判定にも応用でき、検査工程の省人化に直結する。一方「MoR – C」は、空圧制御によって柔軟に開閉するグリッパーで、対象物の形状に合わせて自然にフィットし、安定した把持を実現する。
食品・医療・精密部品など、形状が一定でない物体のピッキングに適しており、ロボットハンドの汎用性を高めるツールとして注目した。DICは材料メーカーとしての強みを活かし、“表面を見る技術”と“物をつかむ技術”の両方を提供しており、製造現場の自動化と品質管理を同時に強化できる展示内容であった。
写真2.DIC展示ブース
2-3. Prox Industries株式会社:https://prox-industries.jp/
注目技術:Physical AI × UR3e双腕ロボット/Unitree G1 × GR00T N1.7(VLT)
Prox Industriesの展示ブースでは、Physical AIを実装したUR3e双腕ロボットによる自律化デモが行われていた。UR3eの両腕が協調しながら、対象物を認識し、最適な角度で把持し、位置決めまで自律的に行う様子が紹介され、ロボットが“見て・考えて・動く”フィジカルAIの実用レベルを体感できる内容だった。特に、仮想空間で学習した動作を実機に転移するSim2Real技術が活用されており、従来のティーチングでは難しかった複雑作業を短期間で実現できる点が大きな特徴。
さらに、Unitree G1とGR00T N1.7(VLT)を組み合わせた展示では、ヒューマノイドロボットが高自由度の動作を行い、物体操作や協働作業の可能性を示していました。GR00TはNVIDIAのロボットAIモデルで、視覚・触覚・動作計画を統合した高度な判断が可能。これにより、ロボットが環境の変化に応じて柔軟に行動でき、食品工場のような不定形物が多い現場でも自律化の可能性が広がる。Proxの展示は、フィジカルAIの“現場実装の最前線”を示す非常にインパクトのある内容であった。
写真3.Prox Industries展示ブース
2-4. リョーサン菱洋株式会社:https://www.rr-hds.co.jp/
注目技術:双腕システム「FR3 DUO」/Franka GELLO Duo
リョーサン菱洋の展示ブースでは、双腕ロボットシステム「FR3 DUO」のデモ展示が行われていた。FR3 DUOは、Franka Emikaの高精度協働ロボットを左右に配置し、人の両腕のように協調して作業できる点が特徴。展示では、左右のアームが互いの動きを認識しながら、部品の受け渡しや整列など、複雑な協調作業を滑らかに行う様子が紹介されていた。特に注目すべきは、FR3 DUOを直接制御できる「Franka GELLO Duo」。GELLOは、ロボット動作をプログラムではなく“論理的なタスク記述”として扱える新しい制御言語で、双腕ロボットの動作計画を直感的に記述できるため、従来のティーチングよりも圧倒的に短時間で高度な協調動作を構築できる。
食品工場では、盛り付け・包装・選別など、左右の手を使う工程が多く、FR3 DUOは人の作業をそのままロボット化できる可能性を示す非常に実務的な展示内容であった。
写真4.リョーサン菱洋展示ブース
2-5. YATOMエンジ株式会社:https://www.yatomi-eng.co.jp/business
注目技術:協働ロボット「Airion」×ヒューマノイド+AI搬送デモ/5本指「Linker Hand」試験管搬送
YATOMIエンジの展示ブースでは、協働ロボットシステム「Airion(エアリオン)」を使ったヒューマノイド+AIの搬送デモが行われていた。Airionは、軽量・高応答の協働ロボットで、AIによる動作計画と組み合わせることで、人のように環境を理解しながら柔軟に動作できる点が特徴。展示では、ヒューマノイドロボットがAirionと連携し、物体の位置を認識しながら搬送するデモが紹介され、フィジカルAIによる“自律搬送”の実用レベルを体感できた。
また、5本指ハンド「Linker Hand」を使った試験管搬送デモでは、人の指のように独立した動きを持つ指が試験管を優しくつかみ、角度を調整しながら安定して運ぶ様子が示されていた。柔らかい物体や細長い容器など、従来の2爪グリッパーでは扱いにくい対象物でも高い安定性を発揮。
食品工場では、容器搬送・盛り付け・検査サンプルの扱いなど、人の繊細な指の動きを必要とする工程の自動化に直結する展示内容であった。
写真5.YATOMエンジ展示ブース
3. Focus2【ものづくりNEXT東京】注目した出展ブース
3-1. 株式会社ブリヂストン:https://www.bridgestone.co.jp/products/softrobotics/
注目装置:ソフトロボットハンド「TETOTE」
ブリヂストンは、自動化・省人化Stageでソフトロボットハンド「TETOTE」のデモ展示を行っていた。TETOTEは、同社が長年培ってきたゴム材料技術を応用した“柔らかいロボットの手”で、人の指のようにしなやかに曲がり、対象物に合わせて形状を変えながら把持できる点が特徴です。従来のロボットハンドでは難しかった、柔らかい食品や不定形物のつかみ作業を可能にするため、食品・医療・精密部品など幅広い領域で応用が期待されている。展示では、TETOTEが対象物の形状に合わせて自然にフィットし、力を入れすぎることなく優しく持ち上げる様子が紹介されており、人の手の感覚に近い“やさしい把持”を実現していた。自動化の現場では、ロボットが「どう持つか」が最大の課題になることが多く、TETOTEはその課題を材料技術で解決するアプローチとして非常に実務的。
食品工場の省人化においても、破損しやすい惣菜やパン、野菜などの扱いに大きな可能性を感じさせる展示であった。
写真6.ブリヂストン展示ブース
3-2. クラボウ(倉敷紡績 株式会社):https://www.kurabo.co.jp/el/sc/large/
注目装置:力覚+3Dビジョン+7軸ロボットの自律把持デモ
クラボウは、力覚センサーと3Dビジョンセンサーを組み合わせた高度なロボットシステムのデモ展示を行っていた。7軸ロボットの先端に力覚センサーを搭載し、対象物に触れた際の微妙な力の変化を検知しながら、3Dビジョンで形状・位置を正確に把握することで、ロボットが自律的に“見て・触って・判断して”動作する様子が紹介されてた。従来のロボットは、決められた位置にある決められた形状の物体しか扱えませんでしたが、このシステムでは、位置ズレや形状がばらついている対象物でも、ロボット自身が状況を理解し、最適な角度や力で把持できる。
食品工場のように不定形物が多く、人の感覚に頼っていた工程では特に効果が大きく、盛り付け・ピッキング・選別などの自動化に直結する。クラボウの展示は、単なる画像認識ではなく、視覚と触覚を統合した“フィジカルAIロボット”の実用的な姿を示すもので、現場で使える自律ロボット技術として非常に完成度の高い内容であった。
写真7.クラボウ展示ブース
4. Focus3【機械要素技術展】注目した出展ブース
4-1. ハーモニック・ドライブ(Harmonic Drive Systems): https://www.hds.co.jp/
注目装置:超小型ACサーボアクチュエータ × ヒューマノイドハンド/6軸ロボットアーム
ハーモニック・ドライブは、超小型ACサーボアクチュエータを組み込んだヒューマノイドハンドと6軸ロボットアームのデモ展示を行っていました。特に注目すべきは、同社の精密減速機技術をベースにしながら、従来よりも大幅に小型化されたアクチュエータをロボットの指や関節に直接組み込める点です。これにより、ロボットが人の手のような繊細な動作を実現でき、指先の微妙な角度調整や滑らかな軌跡生成が可能にる。展示では、ヒューマノイドハンドが小物を器用につかむ様子や、6軸アームが高精度な位置決めを繰り返す様子が紹介され、フィジカルAI時代のロボットに求められる「高精度・高応答・小型化」の三要素を高いレベルで満たしていた。
食品工場では、盛り付けやピッキングなど、人の手の繊細さが必要な工程の自動化に直結する技術であり、ロボットの“動きの質”を根本から向上させる展示内容でした。
写真8.Harmonic Drive Systems展示ブース
4-2. ハイウィン(HIWIN)株式会社: https://www.hiwin.co.jp/
注目装置:超薄型DDモーター × XYθステージ/PLP対応ナノ精度ステージ
ハイウィンは、超薄型DD(ダイレクトドライブ)モーターを搭載した「XYθステージ」と、PLP対応のナノ精度「位置決めステージ」のデモ展示を行っていた。DDモーターはバックラッシがなく、応答性が非常に高いため、ステージの高速・高精度制御に最適。展示されたXYθステージは、X・Yの直動に加えてθ(回転)を一体化した構造で、半導体・精密加工・検査装置などで求められる複雑な位置決めを1台で実現できる点が特徴。また、PLP対応ステージは、ナノレベルの位置決め精度を持ち、大型パネルの高精度加工や検査に対応する次世代仕様となっていた。
食品工場では、包装機や検査装置のステージ制御に応用でき、特に高速搬送や高精度位置決めが求められる工程で大きな効果を発揮します。モーション技術の進化を象徴する展示内容だった。
写真9.HIWIN展示ブース
4-3. THK株式会社: https://www.thk.com/jp/ja/
注目装置:変種変量生産対応「次世代リニア搬送システム VTSシリーズ」
THKは、変種変量生産に対応した次世代リニア搬送システム「VTSシリーズ」のデモ展示を行っていた。VTSシリーズは、従来のコンベア搬送とは異なり、個々のキャリアを独立制御できる点が最大の特徴。キャリアごとに速度・位置・タイミングを自由に設定できるため、多品種少量生産や工程ごとに処理時間が異なるラインでも柔軟に対応できる。展示では、複数キャリアが異なる動作をしながらも全体として滑らかに同期する様子が紹介され、従来の直線搬送では難しかった「個別制御」「高速応答」「高精度位置決め」を高いレベルで実現していた。
食品工場では、包装ラインや選別ラインなど、製品ごとに処理時間が異なる工程で特に効果を発揮し、ライン停止の削減や省人化に直結する。変種変量生産が当たり前になる時代に向けて、非常に実務的な搬送ソリューションを示す展示内容だった。
写真10.THK展示ブース
4-4. 株式会社モリテック: https://www.moriteq.co.jp/
注目技術:ゴムの切削加工
モリテックは、一般的には難しいとされる「ゴムの切削加工」を高精度に実現する技術を展示していた。ゴムは柔らかく弾性が高いため、通常の切削では刃物が逃げる現象や寸法が安定しないという課題がある。しかしモリテックは、独自の加工条件、専用刃物、材料固定技術を組み合わせることで、ゴムを金属や樹脂と同様に“狙った寸法で削る”ことを可能にしている。展示では、複雑形状のゴム部品や高精度シール材が紹介され、従来は金型成形でしか作れなかった形状を切削で短納期・小ロット対応できる点が強調されていた。
食品工場では、設備のパッキン・ガスケット・シール材は頻繁に交換が必要で、形状変更や試作が多い領域です。モリテックの技術は、こうした部材を短納期で高精度に製作できるため、保全の効率化や衛生設計の改善に大きく貢献する。特に、特殊形状のシールや耐熱・耐薬品ゴムの試作に強みを発揮する展示内容だった。
写真11.モリテック展示ブース
4-5. 株式会社アジアトレーディングコーポレーション(ATC): http://atc.gr.jp
注目要素部品:特殊環境対応ベアリング/高温炉設備/食品設備向けセラミックベアリング
ATCは、過酷環境で使用できる特殊ベアリングと高温炉設備、さらに食品設備向けのセラミックベアリングを中心に展示していた。特殊環境対応ベアリングは、耐熱・耐薬品・耐腐食性を備え、一般の金属ベアリングでは対応できない環境でも長寿命を実現する。高温炉設備では、数百℃の高温下でも安定して回転できる高耐熱ベアリングが紹介され、熱処理・焼成工程を持つ工場向けのソリューションが展示されていた。食品設備向けのセラミックベアリングは、非磁性・非腐食・耐薬品性に優れ、洗浄剤や蒸気殺菌が多い食品工場でも劣化しにくい点が特徴。金属ベアリングのような錆や摩耗が発生しにくく、潤滑剤不要のモデルもあるため、異物混入リスクの低減にも寄与する。
食品工場では、搬送機・充填機・包装機などの衛生環境で使えるベアリングは非常に重要で、ATCの展示は“食品工場の保全課題を直接解決する”実務的な内容であった。
写真12.ATC展示ブース
5. 総括(まとめ)
ものづくりワールド東京で視察した各社の技術を総括すると、今年の展示は「フィジカルAI × 機械要素 × ロボティクス」が一体となり、食品工場の自動化を現実レベルで前進させる“実装可能な技術”が揃っていた点が最大の特徴といえる。
DICの「Tacthancer」や「MoR – C」は、表面品質の可視化や柔軟把持といった“人の感覚のデジタル化”を実現し、Prox Industriesやリョーサン菱洋、YATOMIエンジが示したフィジカルAIロボットは、環境を理解し自律的に動く“人の判断の自動化”を体現していた。
一方、ハーモニック・ドライブ、HIWIN、THKといった機械要素メーカーは、ロボットの動作精度・搬送効率・設備の柔軟性を支える基盤技術を進化させ、食品工場のような多品種・不定形物・衛生環境に対応できるレベルに到達している。これらを組み合わせることで、食品工場では盛り付け、ピッキング、検査、搬送といった人手依存工程の自律化が現実味を帯び、保全・品質・省人化のすべてを同時に改善できる未来像が明確に描ける展示内容であった。
以上
【参考引用先】
第38回『ものづくりワールド東京(2026)』オフシャルHP: https://www.manufacturing-world.jp/hub/ja-jp.html