技術用語解説34『LCA (Life Cycle Assessment)』

技術用語解説34『LCA (Life Cycle Assessment)』

1. LCA

 LCA(Life Cycle Assessment)とは、製品の製造から廃棄までの全ライフサイクルに渡っての環境に対する負荷(エネルギー消費、資源消費、大気汚染物質排出量、水質汚濁物質排出量等)を積算することによって環境に対するインパクト(影響)を評価しようとする手法である。最近の脱炭素、環境対策への取り組みを考える時、LCAを考慮した見直しを迫られている。

 目的は、次の3つである。
(1) 製品が環境に与えるインパクトに関する情報を消費者に対して提供することによって、商品選択に影響を与え、結果として環境負荷の小さな社会の実現を目指すこと
(2) 企業が自社製品の環境負荷をライフサイクルで評価することによって製品の改善を行うこと
(3) 政府などが、技術システムや、対象物の優先順位付けのために用いること などである。

2. LCAの手法

 LCAのフレームについては、まだ国際的標準として確立したものはないが、現在ISOで議論されているフレームを用いて解説する(図1)。LCAは、目的設定、インベントリ分析、影響分析、解釈の4つのステップに分けられる。

図1. LCAのフレーム
図1. LCAのフレーム

(1) 目的設定
 目的設定では、適用対象、研究の深さ、主題を設定する。このとき目標となるグループ(消費者、製造者、政府等)と関係者(研究主体、依頼者等)を明記することが必要である。
最も重要なことは、機能ユニットの定義であ。機能ユニットとは、製品が提供する本質的な機能の単位である。例えば、牛乳1リットルの消費等であ。

(2) インベントリ分析
 インベントリ分析では、客観的に計算できると考えられている指標について、ライフサイクルに渡って積算することが目標となる。
例えば、CO2、NOx、SOx、COD、BOD、各種重金属などの環境汚染物質をはじめとし、化石燃料消費、騒音、空間利用などがあげられる。

(3) 影響分析
 影響分析では、インベントリ表の結果を集約し環境プロファイル(環境影響指標の表)を作成する。具体的にはCO2、NOx、SOxから大気汚染指標や、温室効果指標などを計算する。

(4) 解釈
 解釈では、環境プロファイルの評価を行う。環境プロファイルは多次元の尺度であるから、全ての尺度での優劣が一致している場合以外は、互いに矛盾する複数の尺度を単一の尺度に変換する事が必要となる。
マルチクライテリア分析等によって多次元の尺度を単一の尺度もしくは、単二の定性的評価軸に集約する。
データの不確実さや、計算過程の不確実さ、例えば、割り付け規則の選択,重みの変更等の結論に対する影響を感度分析によって検討する。

3. LCAの歴史と現状

 LCAの研究は、1969年の飲料容器に関するMRI(Midwest Research Institute、現在Franklin Associ ates ,Ltd.)の研究に端を発している。1970年代前半には、EPA(アメリカ環境保護庁)が、REPA(Resource and Environmental Profile Analysis)をまとめた。80年代に入って、BUWAL(スイス連邦内務省環境局)が“Eco-Balance of Packaging Materials” を発表した(1984)、1985年には、ECにおいて、「飲料容器に関する政令」が発令され、加盟各国の企業は、容器に係わる資源、エネルギーの利用を監視することが義務付けられた。90年代に入ってからは、ISOにおいて、環境管理国際規格を検討するTC207(Technical Committee207)を設置し(1993)、フランスを幹事国として4、5年 をめどにLCAの規格化をも目指すことを決めた。日本はインベントリ分析(Inventory analysis)を担当し、この他OECD、UNEPもワークショップを開催しLCAに関する研究を進められてきた経緯がある。

以上