技術用語解説10『茶(緑茶)飲料 (Tea (green tea) beverage )』

技術用語解説10『茶(緑茶)飲料 (Tea (green tea) beverage )』

 茶はコーヒー、ココアと並び、三大非アルコール性嗜好飲料として世界中で飲用されている。茶の浸出(抽出)液を容器等に詰め、そのまま飲用できる形態で上市されているものを指す。容器の種類により缶飲料、PETボトル飲料、紙パック飲料等に、また原料の違いにより緑茶(煎茶なども含む)飲料、ウーロン茶飲料、紅茶飲料、混合茶飲料等に分けられる。混合茶飲料とは、原料が茶の他に玄米、大麦、ハト麦、どくだみ、などの混合品であるものをいう。
 ここでは、近年注目を浴び、消費量の伸びが著しい緑茶飲料について若干解説を加えておく。緑茶缶飲料が世に出たのは昭和57年に駅弁用として売り出されたのがルーツである。ウーロン茶缶飲料の爆発的な人気に刺激されて60年に静岡県のメーカーが本格的に生産・販売を開始して以来、順調に消費量を伸ばし、平成3、4年頃からは大手飲料メーカーも加わって波に乗り、大きな市場へと発展した。この間、昭和の終わり頃に緑茶PETボトル飲料が売り出された。当初はその販売量はわずかであったが、小容量(500ml) PETボトルが出始めると、その手ごろな大きさ、使い易さ、簡便さ等が消費者ニーズにマッチして近年著しい伸びを見せており(図1.参照)、緑茶飲料の生産量はウーロン茶や紅茶飲料よりも倍以上である。緑茶飲料の基本的な製造フローを図2.に示す。

図1.茶飲料の生産量推移
図1.茶飲料の生産量推移
図2. 緑茶飲料の基本的な製造フロー図
図2. 緑茶飲料の基本的な製造フロー図

 茶葉のブレンドによる原料調整は、同一商品の品質(味、香り等)を常に一定に保つ重要な工程である。浸出工程では原料茶葉に対して数十倍の温水(イオン交換水)で抽出を行う。この時の抽出方法としては、単純浸漬(ドブ漬け)方式、充填塔(ドリップ)方式、ニーダー(kneader)方式などがある。ドブ漬けとは、籠等に入れた茶葉を温水に漬けるだけの簡単なもので、規模が小さい場合に限られる。充填塔方式は塔に充填した茶葉の上から温水をシャワー状に注いで抽出するもの。ニーダー方式は上部が開放された半円筒横型タンクに茶葉と温水を入れ、スクリューフィーダタイプ(横回転)の攪拌羽根でゆっくり攪拌しながら抽出する方式である。この装置は、大量の茶葉を穏やかに、しかも確実に攪拌するのに非常に適しており、現在はこの方式が主流となっている。どの方式においても浸出液は最終製品濃度より濃く、後で純水により希釈される。浸出液をろ過した後、酸化防止剤として微量(温水に対して100分の数%)のアスコルビン酸Na、およびpH調節剤としてこれより一桁程度少ない量の炭酸水素Naを添加する。浸出液を製品濃度まで希釈後、溶解している酸素を除くため加熱し、缶(ボトル缶など)に充填して巻締め(キャッピング)を行う。巻締め(キャッピング)は、缶上部のヘッドスペースに酸素を残さないよう、必ず窒素気流中(N2フロー)で行うPETボトル飲料においても同様である。緑茶のような中性飲料は殺菌処理が必要で、通常は121℃、7分間程度の処理を行う。このとき生じる浸出液の褐変および加熱不快臭(レトルト臭、俗にイモ臭とも呼ばれる)が、緑茶飲料では当初大きな問題であったが、アスコルビン酸Naの添加とN2フローにより、浸出液の褐変はほぼ完全に、またレトルト臭もかなり改善することができるようになった。緑茶PETボトル飲料の製法も調合工程までは缶飲料と同様である。PETボトルはレトルト殺菌できないので、調合終了後、製品濃度となった浸出液をプレートヒーターで超高温殺菌(UHT:120~130℃,、30~90秒)し、85℃ 位になったところで塩素水などにより殺菌したボトルに充填(ホットパック)するか、さました後に無菌充填を行う。無菌充填ではボトルの耐熱性は要求されないので材質は薄くて良くて材料コストは安くなるが、設備の初期投資額が高く、またライン(商品の種類)を変更する場合に再殺菌に長時間を要することがデメリットになる。
 最後に緑茶飲料の保存性であるが、これは温度によって著しく異なる。賞味期間としてはホットベンダーの温度条件(55℃)では2週間、常温(25℃)では4ケ月程度である。
 今後の課題としては、非加熱殺菌(MF膜やUV殺菌など)による品質維持と完全無菌(アセプティック)充填による賞味期限の延長がある。さらに海洋プラスチック問題など環境保護の観点からPETボトル容器(茶飲料の約90%を占めている)の環境負荷対策としてボトル缶や紙といった容器の移行など見直しが検討されると考えられる。

以上

【参考資料出典先】
一般社団法人全国清涼飲料連合会 「清涼飲料品目別生産量推移(2000年~2019年)」
http://j-sda.or.jp/images_j/stories/con05_about_jsda/k05_03_a.pdf